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転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。  作者: 二十口山椒


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28:魔神病

 銀髪の女性を今は使っていないエイルのベッドで寝かし、俺たちはリビングで話し合うことにした。


「とりあえず、魔神病っていうのはなんだ? 不治の病で感染症ということしか聞いていない」


 2人は知っている様子だったからまずは聞く。


「あたしは魔神病には詳しくないからエイルよろしく」

「はい。魔神病は人間がかかりやすいものですから私の方が詳しいです」

「魔族はかからないのか?」

「かかるよ。ていうか魔神病の軽いバージョンが魔族だからね」

「は?」


 どういうことだ。


「魔族とは人間が軽度の魔神病にかかり、変質した種族のことです。そのため魔神病には少なからず耐性はあるわけです」

「えっ、そうなのか!?」


 そんな進化に関係するすごいものだったのか! ていうかそれならリリスは知っていろよ。


「ですが魔神病を患った者が近くにいた場合は魔族であろうと感染します。一説には魔神病を極限まで希釈して進化しようとした種族が魔族とも言われています。魔神病を患えば魔力があがりますから」

「……一体魔神病っていうのは何なんだ」

「それは分かりません。しかも魔神病の元は大地から溢れてきます。その大地は太古の昔より人が住めない大地になっているほどに世界の生物にとって危険なものです」

「魔族はその近くにいたからそれに適応するしかなかったっていうのを聞いたことがある」


 まじでヤバいものなのは分かった。でもそういうのを聞いていると少しだけ歴史を感じてワクワクするが口には出さない。


「それでは魔神病の説明をします」

「あぁ、頼む」

「魔神病にかかった者はもれなく治ることはありません」

「治る可能性はないのか? 魔族は軽度とは言え克服して進化しているんだよな」

「可能性はゼロに近いです。魔族は人間の中でも魔神病の耐性があったことで進化に耐えることができました。耐性があったとしても本格的な魔神病にかかればその進化もできず、形を変えていきます」

「形を?」

「魔神病はすべての生物をもれなく魔物へと変質させる病気です。魔神病に極端に弱ければドロドロになり、魔神病に少しでも強ければ人型のままキメラのような形になります」


 ……まじでヤバい病気だな。思っていた以上だ。


「しかも魔神病によって魔物になれば増えることを目的とします。誰かを食べるのではなく魔神病を広めることを重点に置き動きます。隠れ、逃げ、集団行動をするなど知能がある生物がなるほど魔神病はひどく広まります」

「……それの対処法は?」

「広範囲魔法にて遠くから確実に消す。それが今の人類ができる最大の対処法です。生物に入り込んだ魔神病は人が死ねば同様に死ぬことになっていますから」

「とんでもない病原体だな。アストレアは領地全体に広がっているって言っていたから、かなりまずい状況なのか」


 俺の言葉にエイルもリリスも驚いた顔をした。


「それは本当ですか!?」

「……ここにいてよかったぁ」

「アストレアはそう言っていたな。そんなにまずいか」

「……そこまで魔神病が広まっているのなら、人類が滅亡する可能性が出てきました」

「え……でもそこをすべて消せばいいだけじゃないのか?」

「数人規模なら十分な火力で消せます。ですが領地全体では魔神病が少しでも残ってしまう可能性があります。しかも魔神病にかかり魔物になった者たちは少しでも残っていれば足りないものを補うように合体し始めます。そうなれば魔王と呼ばれる個体が誕生してしまいます」


 それはまあ……うん? もしかして、俺たちが異世界に呼ばれた理由ってこれなのか? 世界を救うっていうのはそういう……? 分からんけど。


「アストレアのお願いは魔神病を治す薬が欲しいと。人類が滅亡する前に薬を生み出さないといけないってわけか」

「そのお願いを聞くつもり? ここにいるのなら関係なくない?」


 確かにリリスの言う通りだ。でもその世界はエイルとリリスの故郷なんだ。


 2人の故郷を消すわけにはいかないよな。帰りたい時が来るかもしれないんだから。


「関係なくてもやるよ。もしかしたらいいことがあるかもしれないしな」

「ふーん、そっか」

「さすがは優斗です。私もお手伝いします」


 魔神病に対して薬を作ることになったわけだが、このチートな箱庭でできないことはない。


 まあその領地をすべて消し去ることの方が簡単ではあるし今ある武器をちょっと投入しただけで終わる話だ。


 だけどアストレアのお願いは薬を作ってほしいということだから薬を作ることにした。


 そのためにはまず薬をどう作るかを考えないといけない。


 ここでポンっと薬を出すことは簡単だ。アストレアが救いたい領地に薬が回り切るまで薬を出していればいいだけの話だからな。


 だが、エイルやリリスの話ではその魔神病は太古の昔より続く不治の病というか根本的に解決ができないモンスターのようなものだ。


 だからそれに対処できるような薬をここじゃなくても作れるようになればいいんじゃないかと思っている。


 この問題を解決できるのならやるに越したことはない。さっきエイルにかっこのいいところを見せるためにあんなことを言ったのだからそうした方がもっとかっこいいだろう。


 となれば、薬が生える木を作る、わけにはいかないよな。


 薬を作る方法を明確にして、薬の材料の量産体制が向こうの世界でできたのなら文句はないだろう。


 ……だが待て。その作り方というのはどうやって分かるんだ? あっ、作り方が書かれた資料を出せばいいのか。


 とりあえずは薬を出してみる。


 手のひらには虹色な液体が入った小さな瓶がポンっと出てきた。


「それが薬ですか?」

「これがそうなんだ」


 エイルとリリスは俺が持っている瓶を興味津々に見ている。


「あぁ、そうみたいだ。俺が作り出した薬だから間違いはないとは思うが……」


 俺が出したとしても俺自身はよく分かっていない。よく分かっていないから俺以外はこれが本当に薬かどうかも確認するしか効果が分からない。


 俺は説明なんかできないからな。


 だからそれが証明されるように視界の中に入れていた結界に封印されている魔神病の元凶を近くに持ってくる。


「今からこの薬が効くのか検証する。危険はないけど不安なら離れておいてくれ」

「いいえ、ここにいます」

「どうせ優斗がなったらどうしようもないからねー」


 2人に一応忠告するが大丈夫な様子であったため俺は検証を開始する。


 結界に封じられている病原体から少しだけ病原体を分離させる。もちろん結界に入った状態だ。


 そしてその結界はこの手に持つ薬だけを通すという設定を作り、結界の上から薬を一滴垂らした。


 一滴の薬は結界をすり抜け、病原体に当たる。


「おっ」


 魔神病は見る見るうちに霧散したことで結界の中には何もなくなった。


「ちゃんと効くな」

「さすがです、優斗」


 これで後は量産体制を生み出せば終わりか。


 ……あれだな、薬を無限に湧き出す瓶でも出せば終わりそうだ。


 ここで量産するための材料を植えて、みたいなことをする前にその瓶があれば済むことではないか?


 ていうか薬が実る木を生やせば……いや、そうか。それをめぐる戦いになってしまうのか。


 人類滅亡の可能性があるのならそれこそ戦争が起きかねない。


 銀髪の女性がそれをうまく使えればいいが……。


「んー……」

「どうされたのですか?」

「この薬の量産体制をどうしようかと思ってな。薬を無限に湧き出す魔道具を作るか、材料から生み出して作り方を教えるか」


 本当にどうしようか。


「魔神病を切り伏せる聖剣でも作ればいいんじゃない?」


 リリスの言葉に確かにと思った。でもすぐにダメだと分かった。


「いや、それを巡って争いになるだろ」

「はい。聖剣ならなおさらアイテル聖王国からも狙われることになります」

「それもそうだね」


 結局どうやっても薬の量産体制をあげたところで争いになるのか?


「優斗が薬を無限に出すんじゃダメなのか?」

「それでもいいが、向こうで完結させるのなら向こうで完結させたいだろ」

「何よりまた魔神病が蔓延すれば優斗が頼られることになりますからね。量産体制を敷いておけば何があっても問題はないはずです」


 薬があったとしても魔神病という存在が厄介だな。


 魔神病は感染すればすべてを終わらせてしまう病気。それの薬があれば是が非でも取りに行くだろう。


 全く、アストレアという神はかなり面倒なことを言ってくれる。


 俺たちが一番楽な方法は何も考えずに大量の薬を渡すこと。アストレアがいう領地の子たちとやらは救うことができるだろう。


 だがどうせなら薬の量産体制をやった方がいいとなるだろう。


「とりあえず、大量の薬を渡すか……」


 大量の薬で領地の子たちが治ったとなればすぐに周りに知られそうだ。


「優斗がそこまで深く考えなくていいんじゃない?」


 リリスが悪魔の囁きをしてくる。そんな囁きに傾きそうになる。


 だけどそれで逃げたらエイルに示しがつかない。エイルは聖女で、俺はエイルの夫なんだから。


「いや、大丈夫だ。ちょっと頑張ってみる」


 あまりいい案とは思えないが思いついたことがあるからそれを試してみることにした。

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