23:お酒
リリスがハンバーガーを五個も食べている間に俺はエイルにハンバーガーを一口食べさせていた。
俺と夫婦になったから、今までやりたかった間接キスというものをやりたかったらしくてハンバーガーをねだってきてクラクラした。
間接キスをぶっ飛ばして色々なことをしているがそこら辺はノリだな。
そしてリリスが満足してからファストフードを出て、ようやく本来の目的である食料品のコーナーに向かう。
カートに買い物かごを二つセットして俺が押しながらエイルの隣を歩く。
リリスは色々なところを見て回っているが目の届くところにはいる。
「ふふっ、まるで大きな子供ですね」
「あんな大きな子供は勘弁してほしいが、そうだな」
……なんだか子供の話題が出てきたし俺とエイルは夫婦なわけだから意識してしまう。いやこれは俺がキモいだけだな。
まだ出会ってひと月しか経っていないんだぞ? それで子供の意識とかどういうことだよ。いやそれを言うなら結婚のこともそうだな。
これからどうなっていくかは分からないけど存分に結婚生活を楽しんでおこう。
「足りないものは何だっけ」
「待ってくださいね」
俺の問いかけにエイルは手提げバッグからスマホを取り出してメモを確認している。
エイルにもスマホを渡しているのはスマホにも興味を示したから渡した。ただ俺とエイルは基本的にずっと一緒にいるから連絡手段としては使わないからこうしてメモ帳を活用している。
他にも軽い調べものがある時なんかもスマホで調べていて使いこなしている。
エイルの手元を見れば足りないものが入力されている。
だがその文字は日本語や英語ではないし、元の世界のどの言語でもない。
エイルたち異世界人が使う共通言語で入力されている。
日本語や英語で入力でいいとエイルは言っていたが覚えるまでに大変だろうだからと入力できるようにした。
ちなみに俺はこの文字が分かる。異世界転移された時に持たされた能力だ。
「では行きましょう」
「あぁ」
エイルは買い物かごに手を置いて歩き始める。
これもまたドラマで見た光景で覚えたな。まあエイルにやりたいようにやらせるし全く不都合ではない。
エイルの誘導の元、足りないものや食材などを買い物かごに入れていく。
ちなみにここには野菜や果物は置かれているが基本的にここのものはとらない。
畑になければ持っていくがほぼ畑にあるからそれで済ませられるからな。
あとはお肉とかお魚は加工されたものをここで手に入れているが、魚はゆくゆく大きな海とか湖を作って魚釣りをしたいとは思っている。
今のところ魚釣りの趣味はないが後々の楽しみとして残している。作っておけば風情にはなるからもうそろそろで作る気ではいるが。
「エイル」
「どうしましたか?」
「箱庭で何か作ってほしいものはあるか?」
今のところこのチートな箱庭にはあまり多くが存在していない。
大半を占めているのは植物。その次にショッピングモール、図書館、住居。今のところそれくらいしかこの空間にはない。
だから他の物を作り出してもいいと思っている。ここには俺だけではないからな。
「いいえ、ありません」
「そうなのか?」
教会とか、そういう信仰の場が必要かなと思ったがそうではないらしい。
「ここには私の知識では考えつかないような色々なものがあります。それに畑や、優斗だっています。だから他には何もいりません」
……うぉ、色々とくるな。リリスがいたら精液が溜まる音とか言われそうだからいなくてよかった。
「そうか。作ってほしいものがあるのなら言ってくれ」
「あっ、それなら一つだけ思いつきました」
「なんだ?」
エイルから言われるのが少し嬉しくて少し食い気味になってしまったかもしれない。
「大きなベッドです。優斗のベッドと私のベッドはどちらも一人用ですから」
「……そうだな。あぁ、用意しておく」
つまり……これから俺と一緒に寝るということだよな……?
あぁ、恥ずかしくなってきた。ていうか言った本人のエイルもこちらに顔を向けていないけど耳まで真っ赤になっているのが分かる。
これもこれで滾るものがあるな……。
「おっ、なんだかあたしの知らない間にいい雰囲気になってる」
いつの間にか視界から消えていたリリスがこちらに戻ってきた。
「……何を持っているんだ?」
手に持っている缶ビールは分かっているが、一応リリスにそう問いかける。
「これってお酒だよね?」
「あぁ、お酒だ」
欲望の化身であるサキュバスがお酒を持っているのはいい印象を持たない。性欲に従順であった方がどれほどよかったか。
ていうかお酒って……あぁ、ちゃんとご丁寧に書いているな。それを読めるようにしているんだった。
「飲んでいい?」
「……サキュバスって酔うのか?」
「さー、酔わないと思うけど」
「魔族は人間よりも強い体を持っています。ですからお酒を飲んでも大丈夫だと思います」
地元民である二人が言っているのだから信じるしかないか。
「飲みすぎるなよ」
「分かってるってー! ちょっとした味見ー」
フラグかよ。それを言って味見で済ますやつはたぶんいないぞ。
リリスは開け方が分からない様子だったから俺が手を出せば缶ビールを渡してきた。
プルタブを起こせばカシュッ! といういい音を立ててビールのにおいがしてくる。
「へー、そうやってあけるんだ。すごいねー」
「そうですよね。この缶という技術は素晴らしいです」
元の世界でもこの缶というものは色々とお世話になっていたから異世界人がそう思うのは無理はない。
缶飲料はもちろん、缶詰というものもある。すごい入れ物だな、缶は。
ただまあリリスは缶がすごいとか言っているよりも漂ってきたビールのにおいに興味津々だ。
俺が缶ビールを渡せば受け取った瞬間に缶に口をつけた。
そしてゴクゴクとビールを飲み、一度も口を離さずに缶ビールを飲み切った。
「ぷはぁ! しみるぅぅ!」
はぁ……まあこうなってしまうよな。
「これは何杯でもいけるねぇ……もう一つ」
「ダメです! これ以上は飲まないでください!」
「えー、飲ませてよぉ……」
「ダメです」
「おねがいぃ!」
「ダメです」
エイルは何度もお願いするリリスを無慈悲に却下する。いや無慈悲だったら却下しないか。
こうして止めないとリリスは酒をガバガバ飲みそうだなぁ。




