83 それ本当ですか、坂田さん(「帰ってきたウルトラマン」55周年)
今年は「帰ってきたウルトラマン」55周年でもあるのです。
今年は「帰ってきたウルトラマン」55周年です。
「帰ってきたウルトラマン」という作品は、ウルトラマンのシリーズに人間のリアルを取り入れた作品です。
SFものとしてのリアリティという点では、「ウルトラセブン」の特撮技術が頂点と言っていいでしょうが、ドラマとしてのリアリティ──言い換えれば人間くささ──という点で、「帰ってきたウルトラマン」は特筆すべきものがいくつもあるのです。
好みから言えば、「ウルトラマンティガ」の優等生的なGUTSの面々の物語に軍配が上がりますが、生臭い人間のいやらしさでは「帰ってきたウルトラマン」の1本筋の通った描写に勝るものはないと言えるでしょう。
「帰ってきたウルトラマン」では、責任を押しつける大人が描かれている、なんて言葉があります。
責任を追及する人々というのが描かれるというのは、この作品の特徴です。
「ウルトラマン」「セブン」では一枚岩だった防衛軍上層部が、「帰ってきたウルトラマン」ではなにかとMATに対して圧力を掛けてきます。
上層部である岸田長官が初登場するのは、5話「二大怪獣東京を襲撃」です。
この時は、グドンに対しMN爆弾を使うよう指示してきました。
この点については、高圧的ではあるものの“怪獣を確実に仕留める”ことを目的としての発言であり、特に問題はありません。
MN爆弾は、通常弾に比べて威力が高い、というだけなので。
それが通じなかったことから、スパイナーの使用に踏み切ったことが6話「決戦!怪獣対マット」の縦軸になります。
小型水爆並みの威力を持つ特殊爆弾スパイナーは、放射能について言及されず大きすぎる威力についてだけ問題とされていることから、超高性能爆薬を使用しているであろうことがわかります。
ちなみに、「スパイナー」という単語は、「セブン」28話「700キロを突っ走れ!」でダン達が運搬した“ニトログリセリンの数百倍の威力を持つ高性能火薬”の名前としても使われていたり。
こちらの設定でも、核は使っていなかったようです。
話を戻すと、岸田長官は、グドンとツインテールに首都を蹂躙されている現状を打破することを重要視しており、短期間で復興できることを念頭にスパイナーの使用を決めたことがわかります。
また、郷をはじめとするスパイナー使用に反対するMATの面々に対し、“失敗したらMATは解散”との条件を付けて作戦行動を許した点ですが。
一見すると、非情かつ無茶ぶりにも見えるんですが、よく考えてみると案外そうでもありません。
MATの懇願を受けて、長官が少し考えている描写があります。
おそらくそこには、“MATが倒せれば東京は廃墟にならずにすむ、避難の時間稼ぎにもなるし、MATが失敗してからスパイナーを使っても同じこと”という計算があったのでしょう。
MAT解散など持ち出すまでもなく、その時はMAT隊員ごとスパイナーで吹き飛ばすつもりでしょう。
非情ではありますが、どっちに転んでも損はないのです。
こういうとこ、脚本の上原正三さんの巧さだなぁと思います。
上原さんって、“子供向けだから”とかってごまかさないでハードなお話書くんですよね。
「帰ってきたウルトラマン」では、1~7話までの脚本は全部上原さんです。
あと、13~14話、16~17話も上原さんですね。
以前にも書いた、2話での坂田と郷の会話もそうです。
慢心して命令違反を犯しMATを追い出された郷は、再び坂田の元で働くべく訪ねます。
そして、坂田は、「流星2号を作りましょう」と言う郷を
「俺はもうお前と組むつもりはないんだよ。
これから5年として、お前は一体いくつになるかな?
レーサーとしては薹が立ちすぎている。
組むんなら、俺はもっと若い奴と組むね」
「それ本当ですか、坂田さん」
「鈍いな、お前も。
その気がないんなら、なんでお前をMATになんかやるか」
と、冷たく突き放すのです。
坂田には、あらかじめ加藤隊長から、郷が行くこと、反省を促してほしいことが連絡されていたものと思われます。
どうも加藤隊長は、郷にとって坂田の存在が大きいことをわかっていたようで、5話で郷に3日の謹慎を命じた時も坂田に連絡していました。
だからこそ、2話でタッコング戦が終わった後、坂田のところに
「あなたのところから戻った郷は、立派に立ち直りました。
もう、非の打ちどころのないMATの一員です」
と礼を言いに行ったのです。
坂田がどうして郷をMATに入れたのかは、描かれていません。
ですが、郷が自分のところでレーサーを目指すだけの器ではないと考えたのはあると思います。
坂田自身も、郷にはレーサー・従業員としてだけでなく、妹を任せていいくらいに人間性も気に入っており、郷がMATに馴染んだ段階で、休みの日は流星2号を作ろうと誘うのですね。
坂田のキャラは、演じた岸田森さんのお陰で“あまり愛想はないが愛情深い性格”になっています。
前述の、2話で郷を突き放すシーン。
この時、坂田は作業中だったのに事務室に戻り、机でタバコに火を着けます。
ちょっとイライラした感じで、郷が出て行くとすぐにタバコをもみ消しています。
冷たく突き放し、郷に1人で考えさせるために。郷をMATに戻らせるために。
「今一番郷に必要なことは、1人で考えることだ」と。
坂田の本音としては、そのまま自分のところに置いてレースを目指す方が都合がいいのに、郷はレースよりMATにいた方が輝くとわかっているから、そんなことをしたのです。
必要とわかっていて、でも本当はそんなこと言いたくなくて、その葛藤があのタバコに現れているのです。
自分でも言っているとおり、5年(流星号を作るのに5年掛かった)経てば郷は28歳、レーサーとしては下り坂に入ります。
それでも“郷と一緒に夢を見たい”という自分の思いを手放したくないのです。
2話で加藤隊長が郷を伴い礼に来た際、
「私の方からもお願いがあるんですが。
休暇の時で結構です、郷を貸してください。
流星2号を作りたいんです」
「坂田さん、本当ですか、それ」
「うん、俺達の夢なんだ。
大事に育てよう」
という会話があります。
変だと思いません?
休暇の日に、郷が何しようと加藤隊長には関係ありませんよね。
なのに、坂田はわざわざ「貸してください」と言っています。
この辺が、坂田なりの拘りなんだと思います。
郷の本分はMAT隊員。レースは、あくまで坂田との夢。だから、MATに影響のない範囲で。
ってことなんじゃないかと。
MATで激務をこなし、休暇もマシン作りに集中し、では、疲れちゃいますから。
それで事前に許可を取ったんだろうなぁと思うのです。
なお、2話での郷のセリフなんですが、最初突き放された時は
「それ本当ですか、坂田さん」
で、ラストは
「坂田さん、本当ですか、それ」
と、語順が逆になってるんですよ。
どこまで狙ってるのかわかりませんが、信じたくない前者と信じたい後者、いい対比だと思いませんか。
ちなみに、坂田の設定年齢は28歳だそうです。
レース中の事故で足を怪我したのは5年前ですから23歳、今の郷と同じ年でした。
でも、6話のセリフから、1944年末から1945年3月の間に3歳だったことがうかがえます。
つまり、1941年か1942年の生まれです。
「帰ってきたウルトラマン」の時代設定は明確ではありませんが放送していた時代と考えるのが自然なので、1971年でしょう。
そうすると、坂田の年齢は30歳。
この辺にも、キャラ設定がブレる「帰ってきたウルトラマン」の事情が透けて見えますねぇ。
上原さん、そういうとこいい加減だから(^^;)




