第3話 光に触れる
進退極まっていた佐伯を救うかのように、
先ほど聞こえた電子音がまた聞こえた。
《紹介コードがありませんか?
AIによる簡易チェックを行います》
誘うような淡い光に対して、
「誰かに見つけてほしい」とすがるような気持ちを覚えた。
ただの照明やスキャナーの光源と思えなかった。
まるで、胸の奥の痛みを
静かに撫でてくれているような柔らかさを感じたからだ。
そのまま、扉の前で静かに待った。
佐伯は、息を吸った。胸の奥がわずかに熱くなる。
光が、佐伯の表情を静かに読み取る。
眉のわずかな揺れ。目の奥の沈み。
口元の緊張。
声の震えを解析する。呼吸の乱れを検知する。
それらが淡い波形となって
画面に浮かび上がる。
佐伯は、自分の痛みが
「数値」や「波形」として可視化されていくのを見て、
胸の奥が少しだけ軽くなるのを感じた。
誰かに言葉で説明する必要がない。
言葉にできない痛みを、
機械が静かに拾い上げていく。
《心的負荷:高
表情の強張り:強
声の震え:強
状態:要審査》
画面が静かに切り替わった。
佐伯は、胸の奥がふっと軽くなるのを感じた。
誰かに見られることが、
こんなにも救いになるとは思わなかった。
光が、さらに深く佐伯の胸の奥を照らす。
《追加解析を行います》
淡い波形が、ゆっくりと変化していく。
呼吸のリズム。
声の震え。
表情の強張り。
順番に、静かに解析されていく。
佐伯は、胸の奥が
少しずつ整っていくような感覚を覚えた。
「……俺、こんなふうになってたんだな」
自分の状態を誰かに言語化してもらうことが、
こんなにも救いになるとは思わなかった。
光が、最後の判定を示した。
《オーナー審査に移行します》
画面の文字に心拍数が上がる。
緊張しながらも、
今まで持ったことがないほどの期待感が膨らんでいく。
扉はまだ開かない。
ただ、静かに待つよう促す淡い光だけが残った。
佐伯は、
──家庭を壊した罪悪感を一瞬とはいえ忘れたことに気づかないほど──
静かに息を吸った。
──この先で、誰かが自分を見てくれる気がする。
その予感で頭の中がいっぱいになった。




