第33話 ある男の帰郷
男は、地方都市郊外の古びた神社を訪れていた。
ときそら病院を退院した彼は、本国に戻る前に祖父の生まれ故郷を見ておきたかったのだ。
「おや、海外の方ですか。」
神職の衣装を着た老人が話しかけてきた。
「いえ、祖父がここの生まれで。
昔々、戦前のことですが。
ふと、祖父も小さい頃、ここに立ち寄ったのかなと思って。」
「この辺りの生まれなら、この神社にも来ただろう。
初詣、祝い事、祭り、普段から境内を遊び回っていたかも知れぬ。
そなた、死の淵から生き返ったような顔をしているが。」
「そう見えますか。
私の祖父、じいちゃんが守ってくれたんです。
ある美しい女性が、そう言っていたようです。」
「美しい女性、、、それはそれは良かった。
お祖父様が、その方に助けを求めたのかも知れぬな。
きっと安堵したことだろう。」
「じいちゃんはいつも、お天道様は見ているって言ってました。」
「その通り、お天道様、お月様、お祖父様、たくさんの神様がそなたを見守っている。」
「そうなんですか。
では、到底悪い事など出来ませんね。」
「神様は人を罰するものではない。
ただ自分の行いは、自らに返ってくるだけだ。」
「それは、今回、本当に良く分かりました。
ただ、これからどう生きていくべきか、そもそもそも私に生きる資格があるのか、、。」
「若くして、それがわかったのはお祖父様のおかげ。
これからは、ひたすらに感謝し、ただ懸命に生きるしかあるまい。」
「はい。
じいちゃんは、自分の頭と心で考えて、自分が正しいと信じる行動をしろと言ってました。
それを、続けて行きます。
ちなみに、あなたは私のじいちゃんが見えますか?」
「はっはっ、見える訳なかろう。
私はただの人間だ。
ただ、何も感じない訳ではないがな。
その笑み、声、話し方、しぐさ、一つ一つから暖かなお祖父様の面影が感じられる。
天界から舞い降りた天女様なら、当然見えるだろうが。
ちなみに、お祖父様のことを教えてくれた、その美しい方はどんなお姿だったかの。
羽衣とかは?」
「いえ、フリフリのメイド服でビラを配ってました。」
「はっはっはっ、メイド服とは。
メイド服の天女様?
いや、この何でもあり、混迷の時代ならあるやも知れぬ。
うむ、、それも、、あるやも知れぬな。」




