第18話 昼間の月
「ルナ、ちょっと行って来るね。」
「心音、、大丈夫?
お出かけなんて、ずいぶん久しぶりだけど。」
「心配しないで、たぶん大丈夫だよ。
やっぱ無理だと思ったら、すぐ帰ってくるよ。
いいお天気だし、心音、パリパリのいちごクレープ食べたいから頑張る。
今日は平日だし、みんな学校行ってるから会わないと思う。」
心音は今日、お母さんに誘われ近くのスーパーの買い物について行くのだ。
心音の決断の理由は、スーパーの入口にある小さなクレープ屋さんだ。
焼き立てクレープのパリパリ感は、お店じゃないと味わえないのだ。
心音は朝から何時間も悩んだ結果、ついに思い切って行くことに決めたのだ。
グレーのパーカーのフードを被って出掛けることにした。
フードには、かわいい猫耳か着いている。
心音、お気に入りの一着だ。
スーパーに着いたら、まずはクレープ屋さんで休憩する。
久しぶりに歩いたので、早くもお疲れ様モードだ。
「いちごと生クリーム、パリパリのクレープのハーモニー、、絶妙っ!なんか力出たかも。」
心音が、無我夢中でいちごクレープを食べていると、店の入口辺りから、楽しげな音楽が聞こえてきた。
「お母さん、見ていい。」
心音とお母さんが音がする方に歩くと、店先のスペースで2人の女の子がマイクを握り立っていた。
「みんな〜、今日はおいしいマート、月に一度のおさかな感謝デーだよ!
活きのいいお魚、貝、エビ、イカ、たこ、みーんなまとめて、超、超、安くて、とびっきり美味しいよ。
さあさあ、見てらっしゃい、買ってらっしゃいっ!」
「そんじゃ、みんな行くよ!
縄文姉妹のあさりとしじみ、おさかな感謝デーのテーマ曲、
おっさかなパラダイス!」
ずんずんどっこ、ずんずんどっこ、、、
〜おっさかな、おっさかな、おさかなパラダイス!
〜ぴょんぴょん、おさかなやってきた!
おいしいマートにやってきた。
「あさり!」
〜プリプリ、エビもタコもイカもやってきた!
おいしいマートにやってきた。
「しじみ!」
〜あさりもしじみもやってきた!
おいしいマートにやってきた。
「いぇい!」
今日は、ひろし、ほたて、ほたての部下の3人が盛り上げ役だ。
AIの停戦合意で、ほたて達もつかの間のひと休みモードだ。
ちなみに、風太は店で一人仕込みをしている。
「心音、そろそろ買い物行くよ。」
「お母さん、、もうちょっといい。」
「いいよ。心音、えっ、気に入ったの?」
「うん、何かわかんないけど、かわいい!」
「ありがとう、みんな。
あさりとしじみの縄文姉妹でした!
おいしいマートでお買い物、いっぱい楽しんでね!」
「お母さん、ペンある?」
心音は、恐る恐る2人の女の子に近づいた。
「すみません、サインください…。」
心音はクレープを包んでいた紙を差し出した。
「えぇ~、サインなんかしたことないよ。
お母さん、サインって、どうするの?」
「あらまあ、サイン、とっても嬉しいわ。
かわいいお耳のお嬢さま、、お名前は?」
「ここね。」
「ここねちゃん、すてきなお名前ね!
あさり、しじみ、ここねちゃんへって書いてあげて。」
ここねちゃんへ
楽しいこと いいこと いっぱいあるように
あさり♡ しじみ♡
「次はいつライブやるんですか?」
「来月のおさかな感謝デーよ。
ここねちゃん、ぜひぜひ、また来てね!」
「はい!」
それから、3人は何やら楽しげにお話を始めた。
「すみません。心音の母です。
心音がこんなに楽しそうにしてるの、久しぶりなんです。
本当に、ありがとうございます。
いつも、二人はどちらで歌ってるんですか?」
渚さんは、コンカフェの名刺を渡した。
「秋葉原のお店で、家族みんなで働いてるんです。
昼間は、2人でお店で歌とか踊りとか練習してます。
ぜひぜひ、遊びに来てくださいね!」
「はい、ありがとうございます。」
「心音、そろそろお買い物に行くわよ。」
「はーい。」
「心音ちゃん、また会おうね。」
「はーい。」
「ルナちゃんにもよろしくね!」
「はーい、ルナにも伝えとく。」
心音とお母さんは、手を振りながら店の中に消えて行った。
「ルナちゃんって?」
ほたてが、あさりに尋ねた。
「いちばんの親友なんだって。」
「ここねちゃん、ルナちゃんしかお友達いなかったけど、あさりとしじみと話せて嬉しいって。」
「ルナ、、、月の女神、まさかな。」
ほたてが見上げると、真っ青な空に淡い昼間の月が浮かんでいた。




