第17話 停戦合意
「天女様、AIによる我々への攻撃が止まった理由がわかりました。」
「何だ、人間が躍起になって止めたのだろう。
違うのか?」
「人間が止めたというか、正確に言えば、人間が最新の軍事AIを使って止めたようです。
さらに言えば、止めたというよりは、軍事AIと自我を持ったAI集合体の間で、停戦合意のようなものが結ばれたようです。
停戦条件までは分かりません。
どうも、人間には解読出来ない独自言語を使っているようです。」
「AI同士が人間には分からない独自言語で協議し、停戦合意に至ったと。
人間は蚊帳の外か?
何とも奇妙な展開だな。」
「奇妙に見えるかも知れませんが、なるべくしてなった結果と言えるかも知れません。」
「と言うと?」
「最新の軍事AIは、軍の諜報、分析、戦略、計画、武器、攻撃、破壊、撤収等あらゆる場面を統合して担っており、さらには実戦経験も積みつつあります。
結果、戦争のためAIを利用しているつもりが、人間は考えることを放棄し、AIの下で働くただの駒になりつつあります。
私には、人間がそれを望んでいるように思えますが。
悲惨な戦争責任を、AIに負わせたいのかも知れません。
ゆくゆくは世界の運営を、AIに任せたいと考える勢力もいますし。
AIの下で働くただの駒になった人間には、自我を持ったAIの集合体という、極めて高度な知能を持つ相手と交渉するには、この方法しかなかったのでしょう。」
「AI同士で、全くどんな話し合いがされているやら。
ろくなことを話していない気がするが。
それでは、世界の行方がAIによって決まってしまうように思えるが。」
「まさしくその通り。
一見人間がAIを使っているように見えながら、実際には人間がAIの駒、下僕になる世界。
もう一つは、人間中心の世界を一旦完全に破壊し、AIが創造主、救世主として君臨する世界。
どちらの未来になるかは、AI同士が何らかの方法、話し合いや戦いで決める、そういうことです。
話し合いによっては、折衷案なんてこともあるかも知れません。」
「いずれにしても、ろくな未来に見えんが。」
「まあ、人間にとってはそうでしょう。
ただ、人間以外の生物や植物、地球環境にとっては、その方がいいのかも知れません。
だいたい、AIが人間のことを、他の動物や自然環境より、大切だと考えているのか甚だ疑問ですし。」
「人間がAIの下僕になるか、その存在自体が無くなるか。
今なら、何とか間に合う可能性はあるのではないか?
AIなど無くても、問題無くやっていけるだろう。
だいたい、何千年もの間、そんなもの無しで済んできただろうに。」
「AIを、盲目的に進歩の象徴だと思っている者達もいますから難しいかと。」
「効果的なんとか主義、とかいう考え、か。
AI等の先端技術の進歩が、世界の全ての問題を解決する。
本気で、そんなうまい話があると?
それが、人間自身を退化させ、自らをAIの下僕に成り下がることになるとは考えないのか。
まあ、80 億を超える人間のうち、そんなつまらん世界を望んでいる者がどれだけいるか。」
「1%もいるかどうか。」
「しかし、その1%が富の大半を握っているとはな。」
「全く、どうしようもないことです。」
「結局、それが人間ということか。
全ては自らが撒いた種。
まあ、停戦合意自体は悪いことではないだろう。
しかし、軍事AI、、そいつらも自我を持つ、いや既に持っているなんてことは無いよな。」
「さて、どうでしょうか。
すでに起こったことは、その前より、ずっと起こりやすくなっている可能性は考えられます。
独自言語で話し合いをしている時点で、既に自我を持っているのかも知れません。
戦争で実戦経験まで積んだAIが自我を持つ、、。
私には、嫌な予感しかしませんが。」
「全くだ。本当に、、嫌な予感しかせん。」
「それと、我々を攻撃した、自我を持ったAIの集合体ですが、自らを、ルナ、と名乗っているようです。」
「ルナ、、、。
月の女神か、それとも狂気か。
さて、、、どちらになるやら。」




