第二百四十九話、抱擁ですわっ。
ゴツッ
櫻子の身長は175センチくらい。
鈍竜を纏うと180センチを超えた。
部屋から出ようとして、入口に頭をぶつける。
ゴリッ
横幅も足りず両肩が入口に当たった。
「よいしょですわ」
腰をかがめて、体を斜めにして部屋から出た。
「…………(なんだ)」
「…………(でかいぞ)」
「…………(入口をふさがれた)」
「…………(う、撃て)」
英語でも中国語でもない言葉だ。
タタタタタタタタ
迷彩服を着た兵士たちが、ライフルを撃ち始めた。
「ひゃああ」
カカカカカカン
鈍竜の表面で火花を散らすも、黒い塗料すら剥げていない。
「た、盾を」
入口をさらにふさぐように、左手の盾を前に出した。
「お嬢様達を保護」
「撃って出るのでございます」
無線からマリアージュの声が聞こえる。
バックカメラの映像を空間表示。
5人の軽MAをきた人がいた。
MA、”不知火”を纏った黒須警護隊の隊員である。
女性の隊員がお嬢様達に話しかけていた。
「櫻子お嬢様、一歩前に出るのでございます」
マリアージュが、腰の後ろに横向きにつけたニ本の短刀を、両手で抜きながら言った。
「は、はいですわっ」
ズシュシュン
一歩出ることにより入口に隙間が出来る。
「逝く、のでございます」
タンッ
金髪のポニーテールを後に残し、小柄な影が疾走した。
「紀伊国屋流抜刀術、隠し技二式、房中術、”飛び、駒廻し”っ」
マリアージュが縮地、敵の目の前で回転斬撃。
次の敵に縮地、回転斬撃。
兵士を一人ずつ確実に倒していく。
「ヨイデハナイカ、ヨイデハナイカ」
通常の、”駒廻し”は無差別の回転攻撃だが、二式はより確実な攻撃が可能だ。
栞子は、まだこの域には達していない。
「…………(このお、こうだ)」
一人の兵士が肩にロケットランチャーを担ぐ。
RPGだ。
シュパアアア
兵士が発射。
煙を出しながら飛んだ。
「わ、私っ、ですわっ」
「きゃあああ」
ドカアアン
盾に当たって爆発。
爆発煙が晴れた。
「…………(む、無傷)」
盾の表面に黒いすすがついていた。
タンッ
「ア~レ~」
兵士がマリアージュに斬られる。
ズシュン
「…………(くそう、下がれ)」
古い重MAが出てきた。
手には、対MA用の対物ライフル。
鈍竜の塗装くらいは落とせるはずだ。
ガチャリ
櫻子を狙う。
「させないのでございます」
「グヘヘ、ホウラ、チップヲ、ヤラウ」
「紀伊国屋家隠匿奥義、個人用、八式改、”飛び、成金爆円殺”っ」
マリアージュが重MAの胸元に、札束をいやらしい手つきでねじ込んだ。
ドカアアアアアン
重MAが吹き飛んだ。
「ふうう、あらかた片付いたのでございます」
周りに兵士は全て倒したようだ。
「マリアッ」
「大河、ここよっ」
正面から突入した海兵隊組と合流したのである。
◆
ウ~~~
ピーポーピーポー
赤いパトライト。
倉庫の正面玄関は、軍警と警察のパトカーで一杯だ。
テロリスト、”亡国戦線”の下部組織、”エビ茶色の誘拐団”のメンバーが逮捕されて移送車に乗せられていく。
その中で、MAを脱いだ日元が立っていた。
ぴったりとしたMA用のインナースーツにフライトジャケットを羽織る。
「櫻子っっ」
櫻子だ。
シックな制服の上に、毛布を肩から掛けている。
他のお嬢様達と一緒に出てきた。
「モヒカン様っっ」
日元が櫻子に走り寄る。
ガッフアア
「無事で……よかった……」
日元が櫻子を痛いくらいに抱き締めた。
「は、ははは、はいですわああ」
櫻子の全身が櫻色に染まる。
ゆっくりと日元の背中に腕を回した。
抱擁する二人を、マリアージュと大河があたたかく見守っている。
大丈夫だ。
櫻子は、スカートとローファーを履いているのだから。




