第二百四十八話、襲撃ですのっ。
ブンブンブン
ブンブンブン
月灯りの下、二機の輸送攻撃ヘリが飛んでいる。
前席、ガンナー、後席、ドライバーのタンデム式コックピット。
バブルキャノピー。
機首の下には、可動式のチェーンガン。
小さい翼。
二重反転ローター。
大型の原動機と超電磁電動モーターによりステルス飛行が可能。
フル装備のMAを六機、移送可能な後部格納庫。
日本宙軍海兵隊所属、輸送戦闘ヘリ、”半月”である。
コオオオオ
格納庫内にヘリコプターのローターの回る音が響く。
日元が、MA、”コンゴウリキシ”を纏って座っている。
四ツ目のバイザーが跳ね上げられていた。
「櫻子……」
日元が小さくつぶやく。
日頃は、へにゃりとした穏やかな表情だ。
今は無表情で口元だけが、冷たくきゅっと締まっている。
周りの空気が彼の怒りで氷りつきそうだ
正面には、MAを纏った大河が座っていた。
日元の実家は、厳しい軍人の家系。
――ゲームを始める前に戻ったようだなあ
――優しくて、穏やかな人を怒らせると怖い。
――まあ、もしマリアがさらわれてたら、自分も激怒してたけどな
「もう少しで目的地です」
マリアが調べてきた、誘拐団のアジトの倉庫だ。
「ステルスに入ります」
二機のヘリがステルスコロイドを放出。
姿を消した。
「降下準備」
日元が言いながら立ち上がった。
背中にツルハシ。
手にはサプレッサー付きの、”P-90”ライフル。
大河は、両手に折り畳み式の大きなハルバート。
一緒に乗ってきた二ツ目の、”コンゴウリキシ”を纏う、他の海兵隊三人は、シャベルに、”P-90”ライフルである。
「電磁スタン弾の使用の許可が出た」
ガチャリ
細長いマガジンを銃の上から差し込む。
「相手は薄汚いテロリストだ」
「情け容赦するなっ」
日元が、限りなく冷たい表情で言う。
「了解っ」
海兵隊員が答えた。
「倉庫の正面玄関です」
「二番機は櫻子お嬢様を探して、”鈍竜”を届けてくれ」
二番機には、マリアージュを含めた、”黒須警護隊”の隊員が乗っている。
「分かったのでございます」
無線から返事が返ってきた。
二番機が、倉庫の裏に回るために離れて行った。
◆
一番機は正面玄関の前でホバリング。
「威嚇射撃、開始します」
バウウウウウ
機首下のチェーンガンが火を吹いた。
ステルスが解けた。
正面玄関に熱い弾丸のシャワーが降り注ぐ。
「降下っ」
左右に開いた後部カーゴの扉から、日元たちが飛び降りた。
ズシュンッ
着地。
着地後ヘリは後ろに下がる。
”コンゴウリキシ”が、正面玄関に飛び跳ねるように走った。
「…………(て、敵襲だ)」
「…………(撃て)」
英語でも中国語でもない言葉だ。
タタタタタタタタ
普通車の影に隠れた兵士が、ライフル銃を撃ってきた。
大河が近づく。
「せいっっ」
ガッ
ドオオン
巨大なハルバートで、車を吹き飛ばした。
車が宙を舞う。
プシュシュシュ
すかさず日元が、隠れていた兵士二人を、”P-90”ライフルで撃つ。
電磁スタン弾でスタンさせた。
その場にいた他の兵士も、三名の海兵隊員が倒した。
「正面玄関を制圧」
「中に入る」
玄関ホールの奥に鋼鉄製の扉。
その奥が倉庫だろう。
ガシャリ
飛び散ったガラスを踏んだ。
バキバキイ
日元のツルハシと隊員のシャベルで、扉のヒンジを壊す。
「突入する」
大河が扉を蹴り飛ばした。
扉の向こうにいた兵士ごと扉が吹き飛んでいく。
コンテナや荷物が置かれた広い倉庫だ。
「MAだっ」
古い重MAが待ち構えていた。
タタタタタタタタ
手に持ったライフルを撃ってくる。
カカカン
二三発、弾が当たるが通常弾では、MAに対して効果は薄い。
プシュシュシュ
パリパリイ
日元の銃撃。
敵MAの動きが一瞬止まった。
「どっせいっ」
大河がハルバートで吹き飛ばした。
プシュシュ
プシュシュ
海兵隊もコンテナの上や裏から兵士たちを無力化していった。
広い倉庫を半ばまで制圧する。
そのときだ。
ズドオオン
ズドオオン
倉庫の奥で音がする。
「これは……」
「巨大杭打機の発射音っ」
ゲーム内、彼女の隣でいつも聞いていた音だ。
「やった」
「櫻子に無事、”鈍竜”が届いた……んだぜえ」
日元の声が弾む。
――鈍竜は硬いっ
これで一安心だ。
「そうであるっ」
大河の声も弾んだ。
「このまま前進、合流するんだぜえ」
日元が叫ぶ。
「おうっ、である」
大河だ。
「……だぜえ?」
「……である?」
突然、口調の変わった少佐二人に、海兵隊員たちは戸惑いの色を隠せなかった。




