第5章:闇の設計者
湿った裏の倉庫は、もはやあかりにとっての監獄ではなく、彼女の「司令部」へと変わっていた。点滅する裸電球の薄暗い光の下、あかりは冷たいコンクリートの床に胡坐をかいて座っていた。目の前には、自分で描き上げた素人じみた地図が広げられている。地元の人々が「静寂の谷」と呼ぶ、佐久の森の最深部へと続く設計図だ。
あかりの顔には、もう涙の跡はなかった。見開かれた瞳は瞬き一つせず、奇妙な黄色の光を反射している。彼女は庭で捕まえた一匹のバッタを手に持っていた。震える小さな指先——それは恐怖からではなく、高揚感によるものだった。彼女はゆっくりと、虫の羽を一枚、また一枚と引き抜いていった。
「静かにしてね、江戸くん」あかりはバッタに向かって囁いた。その声は、母屋で深く眠りについている弟に向けられたものだった。「痛いのは一瞬だけだよ。そうすれば、君は楽になれる。みんな、楽になれるんだから」
あかりは熟練のサイコパスのような緻密さで、罠のシナリオを組み立て始めた。江戸が暗闇をひどく怖がる一方で、おもちゃに対しては強欲であることを彼女は知っていた。
彼女は倉庫の不用品の山から、壊れた古いオルゴールを取り出した。それをピカピカになるまで磨き上げる。もし自分が「最古の桜の木の根元に、古い宝物が埋まっている」と言えば、江戸はどこへでもついてくるだろう。たとえそれが、地獄の穴の中だったとしても。
「明日、お父さんとお母さんは隣の村の親戚の葬儀に行く……」あかりは独り言を漏らした。笑みが広がったが、その目は笑っていなかった。「6時間。二人が帰ってきて、自分たちの『太陽』が消えたことに気づくまでに、私には6時間の猶予がある」
夕食時、あかりの放つ不気味さは頂点に達していた。彼女は倉庫から、非常に穏やかな——あまりにも穏やかすぎる表情で出てきた。
食卓で、母が一番小さな肉の切れ端を自分に差し出しても、彼女はもう反論しなかった。それどころか、江戸に向かって甘く微笑みかけたのだ。
「江戸くん」あかりが呼んだ。その声は、どこか不安を掻き立てる子守唄のように響いた。「明日ね、遅れちゃったけど誕生日プレゼントをあげる。でも、森にある大きな秘密の場所までついてきてもらわなきゃいけないんだ。……来る?」
ロボットで遊んでいた江戸が振り向いた。「プレゼント? このロボットよりすごいの?」
あかりは近づき、江戸の耳元に顔を数センチまで近づけて身をかがめた。湿った土と錆びた鉄の匂いが、あかりの体から漂ってくるようだった。「ずっとすごいよ。お父さんとお母さんが、永遠に君のことだけを見るようになる、そんな魔法。暗闇の中でキラキラ光っているんだよ」
「約束ね」あかりは言い、小指を差し出した。江戸の小さな小指が自分の指と絡み合った瞬間、あかりはそれを強く握りしめた。江戸の指の関節が白くなるほど、強く。
その夜、寝る前にあかりは居間の大きな鏡の前に立った。テーブルの上に置き忘れられた母の赤い口紅を手に取る。ゆっくりとした動きで、彼女は鏡に映る自分の首筋に赤い線を描いた——それは「断絶」の象徴だった。
彼女は鏡の中の自分を見つめ、静寂に向かって囁いた。
「明日、この家に残る鈴木は一人だけ。そして、その人は二度と無視されることはないわ」
部屋の温度が急激に下がった。壁に映るあかりの影は、実物よりも大きく、鋭く伸びていた。まるで彼女の背後に悪魔が立ち、明日の朝の計画のために、その手を導いているかのように。




