第6章:小道に響く静かな調べ
土曜日の朝、空は厚い灰色の雲に覆われ、まるで自然さえもこれから起こる出来事を目撃するのを拒んでいるかのようだった。父と母は明け方から出かけてしまい、あの木造の家は完全にあかりの支配下に置かれていた。
「江戸くん、長靴を履いて。小さな懐中電灯も忘れないでね」あかりが命じた。
その声はもはや平坦ではなく、無理に作り合わされた快活さに満ちていた。それは、聞く者すべてに恐怖を感じさせる類の明るさだった。彼女は色あせた青いジャケットを着ていた。その大きなポケットの中で、彼女の指先は一晩中倉庫の石で研ぎ澄まされ、鈍く光る折りたたみナイフの刃をなぞり続けていた。
二人は外へと歩き出した。佐久の街はまだ静まり返っている。家の門を通り過ぎる時、あかりはふと立ち止まり、後ろを振り返った。彼女は、間もなく自分の権利を主張しようとする勝者のような眼差しでその家を見つめた。
「どうしたの、お姉ちゃん?」江戸が尋ねた。声が少し震えている。姉の歩き方がどこかおかしいことに気づいたのだ。あまりにも背筋が伸びすぎていて、あまりにも落ち着き払っている。
「ただ、鍵がかかっているか確かめただけだよ、江戸。君のプレゼントを誰かに盗まれたくないでしょ?」あかりは微笑んだ。その笑みはあまりにも広く、白く、しかし不安を募らせる江戸の目には鋭い牙のように映った。
森へと続く道すがら、あかりは弟の精神をじわじわと追い詰め始めた。
「ねえ、江戸くん? あの森には『声なき谷』と呼ばれる場所があるの。そこで叫んでも、声は外には漏れない。すべて土に飲み込まれてしまうんだって」あかりは真っ直ぐ前を見つめたまま言った。
江戸はあかりの服の裾をぎゅっと掴んだ。「ぼく……あそこには行きたくないよ、お姉ちゃん。もう帰ろう。プレゼントなんていらないから」
あかりは唐突に足を止めた。彼女は振り返ると、子供とは思えない不自然な力で江戸の肩を掴んだ。鋭い爪が江戸の服越しに食い込む。
「帰る?」あかりは喉の奥から乾いた笑い声を漏らした。「これだけ準備をしたのに? お父さんとお母さんが私たちを二人きりにしてくれたのに? だめだよ、江戸くん。プレゼントはもう待っているの。もし今、逃げ出したりしたら、お母さんは泣き虫な君にひどく怒るでしょうね。お母さんをがっかりさせたいの?」
母の名前を出されると、江戸は黙り込んだ。両親の怒りに対する恐怖は、生存本能よりもまだ強かった。あかりはその弱点を完璧に把握していた。彼女は再び江戸の手を引き、うっそうとした森の奥へと引きずり込んでいった。
奥へ進むにつれ、日の光は消え去り、代わりに松の木の影が巨大な手のようにうねりながら行く手を阻んだ。あかりは、母がいつも江戸に歌ってあげていた子守唄を口ずさみ始めた。しかし、その歌詞は不協和音のような低い音程で書き換えられていた。
「ねんね、ねんねよ、可愛い坊や……冷たい土の下で……明かりも消えて、抱っこもなくて……静寂だけがお友達……」
「お姉ちゃん、そんな歌やめてよ! 怖いよ!」江戸の泣き声が弾けた。
あかりは、根っこが牙のように突き出した大きな樹の前で立ち止まった。彼女は江戸の前にしゃがみ込み、荒れた親指で弟の涙を拭った。その瞳は空虚だが、強烈な光を宿していた。
「泣かないで、いい子ね。この森では、涙は飢えたモノたちを呼び寄せるだけだよ」あかりは囁いた。彼女は顔を江戸の耳元に寄せた。その吐息は氷のように冷たい。「知ってる? 本当はお父さんもお母さんも、君のことを愛してなんていないの。ただ自慢できる『お人形』が好きなだけ。そしてもうすぐ……君は永遠に、お人形になるんだよ」
あかりは再び立ち上がった。彼女の影が江戸の小さな体を完全に飲み込む。ポケットの中で、折りたたみナイフはすでに半分開かれ、最後の幕が上がるのを待っていた。
「さあ、あと少し。君のプレゼントは、あの茂みの向こうにあるわ」




