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第2章:カポック人形の裏側にある亀裂

佐久市には小雨が降り注ぎ、鈴木家の木造住宅を薄い霧が包み込んでいた。部屋の中では、あかりが古びた通学カバンにある小さな破れを縫い合わせようとしていた。それは遠い親戚から譲り受けたお下がりだった。


突然、ドアが乱暴に開いた。江戸が笑い顔で真っ赤になりながら、まだ新品の匂いがする大きなロボットのおもちゃを持って駆け込んできた。


「お姉ちゃん!見て!お昼に野菜を食べられたから、お父さんがこれ買ってくれたんだよ!」江戸は高価なおもちゃをあかりの顔の前で振り回しながら叫んだ。


あかりの手が止まった。縫い針が指先に刺さり、一滴の鮮血がにじみ出た。彼女はそのロボットを見つめ、それから自分のボロボロのカバンに目を落とした。昨日、彼女は新しい縫い糸が欲しいとお母さんに頼んだが、節約しなければならないと言われたばかりだった。どうやら「節約」はあかりにだけ適用され、江戸のプラスチックのロボットには無縁のようだった。


「良かったね、江戸」あかりは無機質に答えた。彼女の目はもう弟を見ておらず、ロボットの首元をじっと見つめていた。そのプラスチックを捻れば、どれほど簡単に折れるだろうかと想像していた。


「お母さんが言ってたよ、僕は家の王子様なんだって!だからお姉ちゃんは僕の召使いね!」小学2年生らしい無邪気さで江戸は冗談を言ったが、その言葉があかりにとっては短刀のようであることには気づいていなかった。


あかりは何も言い返さなかった。彼女は立ち上がり、ゆっくりと窓の方へ歩いた。外では、濡れた桜の花びらがガラスに張り付いており、それはまるでぱっくりと開いた傷口のように見えた。


二つ目の引き金となる出来事は、夕食の時に起きた。江戸がロボットで遊んでいる最中、誤ってお母さんお気に入りの磁器の花瓶を落としてしまったのだ。ガシャンという鋭い音が家中に響き渡り、空気が張り詰めた。


お母さんが駆け寄ってきた。「大変、江戸!大丈夫?怪我はない?」お母さんはパニックになりながら江戸の手を確認し、粉々に砕け散った高価な花瓶のことなど微塵も気にかけていなかった。


「あかり!なぜ弟を見ていなかったんだ?!」突如、入り口に現れたお父さんが怒鳴りつけた。「お前は姉だろう!弟の安全を守るのがお前の役目だ!この役立たずめ!」


あかりは呆然と立ち尽くした。花瓶が割れた時、彼女は同じ部屋にさえいなかったのだ。しかし、この家では江戸の過ちはあかりの責任であり、あかりの努力は透明なものだった。


お母さんの抱擁の中から江戸があかりを見つめ、小さな笑みを浮かべた。憎しみの霧に包まれたあかりの目には、それが嘲笑っているように映った。


その夜、皆が寝静まった後も、あかりは眠れなかった。彼女は暗い部屋の隅に座り、小さなハサミを握りしめていた。そして、リビングに置き忘れられていた江戸のお気に入りのクマのぬいぐるみを手にとった。


ゆっくりとした、リズミカルな動きで、あかりはそのハサミをぬいぐるみの腹部に突き立てた。乱暴に引き裂くのではなく、少しずつ切り刻み、中から白い綿が内臓のように溢れ出すのを眺めていた。


あかりの周囲の空気が冷え切った。普段はどんよりとした彼女の瞳が、暗闇の中で鋭く光った。彼女はもう悲しみを感じていなかった。代わりに、支配感に満たされていた。


(あかりの心の声:『明日はこの人形。明後日は……持ち主。佐久の土がこの綿を飲み込めるなら、森の土も肉と骨を飲み込めるはず。』)


あかりは無残な姿になったぬいぐるみを、幸せな夢を見ている江戸の枕元に戻した。小学4年生には似つかわしくない薄笑いが、彼女の唇に浮かんでいた。彼女の決意は固まった。悪意はもはや単なる思考ではなく、時を待つだけの計画へと変わっていた。

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