姫様、単騎援軍
蒸し風呂のような城内
若城主の間の隣の評定所では、若城主を囲み甲冑を着た大老を始め、南門武将、東門武将、12人の武将が蒸し暑さに耐えながら汗を拭くこともなく朝から並んでいる。庭には各武将の家来が控えており、時折報告に来る足軽達の相手をしている。
「籠城すべきである。敵の軍勢多いが刈り入れ前には必ず退却する、それまでは耐えられる、援軍も来る」
「いやいや、撃って出るべきである。あれぐらいの軍勢なら、我が騎馬隊と足軽で蹴散らせる、籠城してる間に離反者も出てくる。
既に、国境の百姓は、敵に酒を振る舞っているとの報告もある」
「南門殿は我らの誰が離反すると言われるのか、はっきり申されよう」
朝から同じ事を、この南門と東門の武将を繰り返し言い合っている。
この場に居る武将はお互い寝返りしないかとお互いに睨み合い控えてる。
厠に立つのも皆の注目を集めてる。
結論出ないのは、救援を約束した隣国の兵が来ないためである
若城主は先代の父が正室の長男である自分を廃嫡して、お気に入りの側室の子を跡継ぎに指名しようとした。
若城主は傅役の大老と共に父を領外に追放して、城主となった。
父が正室の武将を頼ろうと向かう途中、南門武将の足軽弥助に襲撃させ暗殺する。
父の側室は出家、幼き子は自害させた。
怒り狂った父の側室の父である北方の武将は、大軍を率いて、若城主の城を攻め滅ぼしに来たのである。
いくつかの支城が陥落したという報せとともに、日はどす黒く沈みかけていた。
そこへ兄様国の旗を背負った騎馬兵が単騎で城門に現れた
「兄様国の援軍だ。さっさと開けろ!お前等喉ちんこ伸ばして待ってたんだろ、来てやったんだ、はやくしろ、バカヤロ、え、単騎かって、わし1人で十分だろ? .文句がある奴 は、先に地獄へ行って待ってろ」
全く意味不明な事を言ってる、まともな奴じゃない
よく見ると女である、
都の職人が創り出した人形のような端正で上品な
顔、身体は小柄で痩せてはいないが太ってもいないその小柄な躯体からは獲物を屠る獣の如き殺気と躍動感が溢れ出してる
飛び込んできた「援軍到着」の絶叫。諸将の顔に、一瞬だけ希望が宿る。
しかし大軍がきた様子はしなかった、
南門の武将が、それで何人ほど到着したのだと門番に訊ねると、門番の足軽は震える声で答えた。
「それが……気が触れた姫様お一人が、」
期待は瞬時に、煮えたぎるような殺意へと変わった。若城主は乾いた笑いを漏らす。隣国は我らを見捨てたのだ。
「……籠城だ。外敵も隣国も信じぬ。退路など最初から無い」
門番は姫様をどうしましょうかと南門の武将に尋ねます
若城主は
「 好きにせよ。門番の足軽どもにでもくれてやれ」
非道な命に一座が凍りつく中、沈黙を守っていた家老が、ぼそりと独り言を漏らした。
「……そういえば、あちらの姫は名うてのじゃじゃ馬とか。」
その言葉を拾う者は誰もいなかった。
門番が部屋を辞して、わずか数刻後のことだった。
湿った空気を切り裂き、南門のほうから野太い悲鳴が幾重にも重なって響いた。先ほど「姫を連れてゆけ」と命じられた門番が、顔面を血に染め、這うようにして大広間へ戻ってくる。
「大変でございまする、南門の足軽たちが…」
錯乱する門番を蹴り飛ばし、南門の将が現場へ駆けつける。そこで目にしたのは、武士の常識を根底から覆す惨状だった。
足軽控えの間の地面には、二十人近い男たちが転がっていた。ある者は腕を斬られ、ある者は脚を砕かれ、湿った土の上で虫のように蠢いている。その殺戮の中心で、異様な「静止」が起きていた。
先代をうめき声も出ささせず槍一突きで暗殺した、足軽長弥助、背こそ低いが、その体躯はまるで丹念に鞣された革袋を限界まで圧縮したかのように密度が高い。ひとたび動けば、その短躯は地面を蹴って弾け飛ぶ。硬質な筋肉が織りなす瞬発力は、まさに獲物を射抜く矢の如き危うさを孕む、
足軽達を戦闘不能に陥れ、勢い弥助を狙った姫だが、僅かに躱し、一瞬態勢崩した軽武装の姫を逆さにサバ折りしており、姫は弥助の男の急所に短刀を突き刺そうとしてる。
「なんだこの柔らかさと甘い香りは、」
姫の重さが何故か心地よい弥助は不覚にも硬くした
「此奴、短刀を突き立ててるのに、一物を大きくさせてる、変態か…」
お互い動きは止まっているが周りも手が出せません。
「……待て。双方、手を引け!」
南門の将の声が、ようやく場を支配した。
将は、男たちの無惨な姿と、逆さ吊りにされながらも冷徹な眼光を失わない姫を交互に見やり、喉を鳴らした。
精鋭の足軽が、刀も抜けずに倒されていた。
姫一人に。
姫様と弥助は静かに南門の武将により離された。
やがて姫は若城主の前に通された。
姫は懐から書状を出した。
そこには短く、こうあった。
援軍として、我が妹を送る。
妹は女なれど、騎馬五千騎分は働く。
遠慮なく、こき使われたし。
広間は静まり返った。
姫はその沈黙の中央で、涼しい顔をして言った。
広間の静寂を切り裂き、姫は鼻で笑うと、若城主の瞳を真っ直ぐに見据えて言い放つ。
「籠にわしを乗せ、正面から敵本陣へ乗り込め。……真っ昼間、堂々と敵の正面を突いたそれだけで国中に鳴り響く伝説になる」
姫は一歩詰め寄り、若城主の耳元で甘く毒を含んだ声で囁く。
「敵の大将に突っ込むのは、わし一人の仕事だ。貴様はその背中で、敵将がわしの一撃に首を落とす様を見届けていればいい。籠から降りたとき、貴様は父殺しの怯えるおこちゃまから、豪胆な稀代の大将へと格上げだ」
姫は扇で若城主の顎を軽くすくい、挑戦的に微笑んだ。
「どうだ、若。我が五千騎分の武勇を借りて、この国の歴史を塗り替えてみないか? ……このまま湿った城で腐るか、わしの籠に乗って、天下にその名を轟かせるか……お前の器量を見せてみろ」




