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戦国不精で何が悪い〜米作りとか面倒なのでやめました〜 ―神様のチート、無意味でしたよ。人口比10対1の東北なのに、なぜか天下が見えてきたかも―  作者: 犬童好嬉


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第222話 廃寺での切腹

そして、廃寺へ踏み込もうとした六人の賊たちの耳に、白煙の向こうから凄惨な断末魔が響いてきた。童の甲高い声だった。


「ぐふぅ……なぜだぁ……! 高国様に勝利をもたらした俺が……なぜ、こんなところで死なねばならぬのだぁぁ! 俺は……まだ、死にたくないぞぉぉぉ! だが……俺の最後の死に様、とくと見さらせぇぇぇ!」


そのあまりにも切実な叫びに、六人の足が一斉に止まった。白煙の向こうから、何かが倒れるような鈍い音まで響いてくる。


「おい……今のは……」「まさか……本当に腹を切ったのではあるまいな……」


誰かが呟いたが、誰もその先を口にできない。


続いて、老人の悲痛な叫びが白煙を突き抜けた。


「敦丸ぅぅぅ! 血が……血が、こんなに出ておるではないかぁぁ! それでも自ら腹を切るとは……なんと見事な最期だ、我が孫よぉぉ!」


一度、苦しげに息を呑む音が聞こえる。


「待っておれ、敦丸! わしもすぐに後を追うぞぉぉ! 閻魔様のところで、ワシを待っておれぇぇぇ! なぜ……なぜ、わしの孫が死なねばならんのだぁぁ! この恨み……この恨みだけは、絶対に忘れぬぞぉぉぉ!」


六人のうち一人が、我に返ったように声を張り上げた。


「まずいぞ! 死なれては困る! 皆の者、一斉に踏み込むぞ!」


しかし、返事をした男たちの顔には、すでに隠しきれない動揺が浮かんでいた。


もともと彼らは、殺すつもりなどなかった。


命じられたのは、老人と童を脅し、少しばかり痛い目に遭わせること。それだけだった。脅して言うことを聞かせる。必要なら殴ることもあるかもしれない。


だが、殺すつもりなどない。


ましてや、自分たちが姿を現す前に、二人が自ら腹を切るなど、誰が想像できただろう。


「死なせるな!」「早う参れ!」「煙が……ひどすぎるぞ!」


焦った声を上げながら、六人は懐から布を取り出し、口と鼻を覆った。それでも足取りは重い。白煙の向こうには、硫黄の鼻を刺すような臭いが漂っている。


一人が躊躇した。だが、仲間に背を押されるようにして、ついに白煙の中へ踏み込む。


「行け! 童と老人を探せ!」


六人は煙をかき分けながら、廃寺の奥へとなだれ込んだ。そして、その先頭にいた男が突然、その場で凍りついた。


背後から続いて入ってきた男たちも、前方に広がる光景を目にした途端、次々と足を止める。


誰も、一歩も動けなかった。


薄暗い廃寺の中には、そこら中にどす赤い鮮血が飛び散っていた。柱にも、床にも、壁にも。


そして、その中央には、小さな童が倒れている。


「……な……」


誰かの口から、かすれた声が漏れた。


貴丸の腹から突き出た刀身が、背中側へと抜けている。腹の下には大量の血が広がり、その小さな身体が、まだ生きている証のようにびくびくと痙攣していた。


次の瞬間、貴丸の口から、ごぼっと血が吹き出した。


男達が震える声を上げた。


「お、おい……まだ……息があるのか……?」「……まだ、生きておるのか……?」


助けなければならない。そう思った。だが、誰も貴丸に近づくことができない。


そして、貴丸のすぐ傍には、さらに目を疑う光景があった。


元伯が立っていた。


元伯もまた、自ら腹へ刀を突き立てていた。着物は腹から流れ出た血で真っ赤に染まり、足元にも血が滴り落ちている。口元からも血が伝い、顎からぽたり、ぽたりと床へ落ちた。


それでも元伯は倒れていない。


刀を腹に突き刺したまま、両腕を広げて仁王立ちしている。まるで、その身を盾にして、倒れた貴丸を守っているかのようだった。


「……何だ、これは……」


六人のうち一人が、掠れた声で呟く。


「なぜ……こんなことになっておる……」


別の男が、思わず後ずさった。


元伯は血走った目で倒れた貴丸を見下ろしていたが、やがてゆっくりと顔を上げ、六人の賊へ視線を向けた。


誰かが息を呑む。腹を貫かれた老人が、倒れない。いや、倒れることができないのか。それでも元伯は、目だけをぎらりと光らせ、六人を睨みつけていた。


やがて、腹の底から絞り出すような低い声が響く。


「これが……高国様の味方に対する所業か……」


その声に、六人の男たちは一斉に後ずさった。


「ぐふっ……!」


元伯は血を吐いた。口元からこぼれた血が顎を伝い、それでもなお、元伯は倒れない。


「我は……忘れぬぞ……必ず……閻魔大王様に、このことをお伝え申す……」


その声を聞いた一人が、反射的にさらに一歩後ろへ下がった。


血に濡れた顔で、元伯が六人を睨む。


「お前らの顔も……しかと忘れぬぞ……! 必ずお前らは……ワシと一緒に……地獄へ引き摺り込んでやるゆえな……!」


「ち、違う! 違うのだ! 我らは、ただ脅かせと命じられただけだ! 殺せなどとは言われておらぬ!」


六人のうち一人が、ついに耐えきれず叫んだ。


「そうだ! 殺すつもりなど毛頭なかった!」「かようなことになるとは……! 我らはまだ、二人に手を掛けてもおらぬ!」


声が次々に上がる。誰もが必死だった。


まるで元伯に向かって言い訳をしているというより、自分自身に言い聞かせているようだった。


「俺は……何もしておらぬ……」


一人の男が、血まみれの貴丸を見ながら呟く。だが、その言葉とは裏腹に、足は震えている。


自分たちはまだ、二人に指一本触れていない。それなのに、目の前には腹を貫かれて瀕死になっている童がいる。


その童を守るように立ち、自らも腹を切った老人が、血まみれの顔でこちらを睨みつけている。


そして、その老人は自分たちを地獄へ引き摺り込むとまで言っている。


一人が震える声で仲間を見る。


「おい……いかがするのだ……」

「助けねばならぬぞ!」

「助けられるものなら、とっくにそうしておる!」

「では、なぜ突っ立っておる!」

「黙れ!」


仲間同士の声が荒くなる。しかし、誰一人として貴丸に近づこうとはしない。


そのとき、一人の男が突然口元を押さえた。


「うっ……」


仲間が振り返る。男の顔からは完全に血の気が引き、目は見開かれていた。額には脂汗が浮かび、その視線は床に広がった血へと落ちる。次の瞬間、男は堪えきれずに身体を折った。


「駄目だ……お、おえっ……! うっ……げぇっ!」


吐瀉物が地面へ撒き散らされる。


「おい! 何をしておる!」


「うるせぇ……!」


吐いた男は涙目のまま怒鳴り返した。


「見ろよ、あれを……! あれを見て、平気でいられるものか!」


その声に、他の男たちも言葉を失う。誰もが見ていた。見たくないのに、目を逸らせなかった。


目の前には死にかけている童と、腹を切ったまま仁王立ちし、自分たちを睨みつける老人がいる。六人の誰も、こんな光景を想像していなかった。


そのとき、廃寺の外から鋭い声が響いた。


「お役人様! こちらでございます! 賊が中に! これだけ大勢で囲めば、一網打尽にできますぞ!」


六人の顔から、一斉に血の気が引いた。


「なにっ!?」「まずい!」「役人が参ったぞ!」「逃げるぞ!」「どこから抜ける!?」


一瞬前まで動けなかった六人が、今度は一斉に周囲を見回した。


すると、廃寺の脇の壁が大きく崩れ、外へ通じる隙間が開いているのが目に入る。


「そこだ! 早う参れ!」


一人が叫ぶと、六人は我先にと駆け出した。血まみれの老人も、瀕死の童も、もう見ていられなかった。


六人は崩れた壁の隙間へ殺到し、一人、二人と外へ飛び出していく。


誰も振り返ろうとはしなかった。ただ、最後尾を走っていた男だけが、壁を抜ける直前にほんの一瞬だけ後ろを振り返った。


白煙の向こうには、血まみれで倒れている童がいた。


そして、その前には、腹に刀を突き立てたまま、今なお仁王立ちしている老人がいる。


老人は、逃げていく自分たちを睨みつけていた。その目に宿った深い恨みが、男の脳裏に焼きつく。


――あの老人は、死んでも自分たちを追ってくる。


そんな馬鹿げた考えが、一瞬だけ頭をよぎった。


男は青ざめ、二度と振り返ることなく、仲間たちの後を追って闇の中へ走り去っていった。

廃寺での切腹。。

アルプスの女の子をどこで出そうかと思ったのですが、、、

内容が崩れるので、我慢しましたっ!! 私って偉い!

アルムおんじは最後まで本名がわからず。。でしたよね?

女の子の父はトービアスでしたっけ?

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