番外編:レオナルドの成長 後編
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一方、その日の早朝。
交代で討伐に来ていた物資の馬車の中に、ちょこんと座り込んで毛布にくるまって、寝息を立てて寝ているレオナルドの姿を見つけた兵士たちは、ポカンと口を開けていた。
バタバタと討伐隊を指揮する前線に立つヴォルフラムに連絡が行く。ギョッと目を見開くヴォルフラムに、レオナルドが忍び込んで現地に来ていることを知った部下たちは、ドッと笑い声が上がる。
血は争えないと。
繁殖期の荒ぶる魔物の討伐も、なんとか目処がつき始めていたため、心配しているはずの屋敷に連絡するため人をやる。だいぶ山の奥まで来てしまっていたため、屋敷に連絡がいくのは昼前になるだろう。
ヴォルフラムが馬車の荷台を覗き込むと、毛布に包まったレオナルドの手には木刀が握られていた。
…まだ幼い赤子同然と思っていたが、レオナルドはアイゼンベルクの男として役に立とうとしている。
ヴォルフラムが、部下たちにあとを任せて目を覚ましたレオナルドに硬い保存食のパンを与えながら、馬に乗って帰路に着いた。
「父さま、…邪魔しちゃってごめんなさい」
「レオナルド。お前に任せたい仕事があるんだ」
「…なぁに?僕でもできる?」
現場を離れる前に、現れた獰猛な魔物を実際に目にしてすくみ上がってしまったレオナルド。ヴォルフラムが手を出すまでもなく、兵士たちの手で討伐されたが幼いレオナルドが感じた初めての恐怖だった。
そんな自分でも、父は“任せたい”と言ってくれた。
期待に満ちた瞳に暖かく笑いかけたヴォルフラム。
「もうすぐ、お前は兄になるんだ。
俺が屋敷にいない間、母さまと腹の中の子をお前に守って欲しい」
…レオナルドは、感極まって父親に抱きついた。
***
ヴォルフラムに抱かれて帰ってきたレオナルドの姿をみて、ステラが駆け寄って抱き締める。
「レオナルド…!もう!お転婆にもほどがあるでしょう…!?怪我はない?」
「ごめんなさい、母さま…。どうしても一緒に行きたかったんだ。
…でも、これからはおれが母さまとお腹の赤ちゃん守るよ!」
ステラが仕切りにレオナルドの体を気にして、ペタペタと触るのをくすぐったそうにしながら、張り切って言う言葉にステラは息を飲む。
ちらっとヴォルフラムを見ると、レオナルド専用の小さな木刀を手に持っていた。
「内緒にしたかったステラには悪いが、レオには知る権利があると思う。…あとアイゼンベルクの男は守るものがないとだめなんだ」
「うん!おれ、エリックおじさんみたいな、優しい兄貴になる!」
「まあ。…お兄様が聞いたら、泣き出してしまいそう。
…レオナルド、ありがとう。遊んであげられなくて、寂しい思いをさせてごめんなさい」
「ほら、母さまは具合が悪いんだ。寝かせてやろう」
うん!と張り切って顔色の悪いステラの手を繋いだレオナルドが屋敷に入ろうと引っ張っていく。現地に戻るヴォルフラムに任せろとばかりに手を振った。
***
何日か経ち、ようやく魔物の討伐が終わったヴォルフラムが、寝室で横になるステラに寄り添っていた。
「いや、まさか討伐隊の馬車に夜中から忍び込んでるとは思わなかった。…自分の息子だが、レオは只者じゃないぞ」
「もう、朝レオが居なくて、屋敷中大騒ぎだったんですよ。…ヘクターだけは随分落ち着いてましたけど」
「テオも良くやってくれているだろ。そのうちヘクターみたいに何があっても動じなくなるさ」
まだまだ心配させられることが多そうだと、苦笑するステラのおでこにそっと唇を落とすヴォルフラム。
何とか食事は取れているようだったが、ステラの具合はあまり良くなかった。ずっと怠くて体が鉛のように重かった。
「…無事に産めるでしょうか。拒絶反応が起きないことを祈るしかないなんて」
「うん。…でも妊娠したってことは相性は悪くないはずだし、ステラに似た魔力を持っているんだろう。
ヨハンの爺さんも子によって、つわりも変わるって言ってただろう」
「はい…。レオの弟妹を早く産みたいです」
ステラの体力や体調を考えて、レオナルド一人にしようと言っていたヴォルフラムを何度も説得して二人目を強く望んだのはステラだった。
授かりものの上、もしかしたらステラにとって命懸けのお産になるかもしれない。それでも家族の尊さを知っているステラは、希望があるなら賭けてみたかった。
それでも体調の悪さからくる不安で、弱音を吐くステラをヴォルフラムが優しく励ましてくれる。
包み込まれるような大きな愛に、ステラはほっとため息をつく。
「寂しくさせてしまっている分、たくさんレオをかまってあげないとですね」
「たくさん頼りにしよう。いい兄貴になるさ。
…度胸ももう少しつけないとな。今度浅い森くらいなら連れ出してみるか」
「スパルタなお父上ですこと。ふふっ」
気性の荒い奥深くの魔物なんて、素人の大人が見たところで腰を抜かしてしまうくらい恐怖の塊だ。
頼りになる父親が隣にいたとはいえ、四歳児がすくみ上がるくらいで泣き出したり、気を失わなかっただけでも、随分肝が据わっていた。
それでも魔物に慣らそうとするヴォルフラムに、ステラはアイゼンベルク領の荒っぽさを感じていた。
***
レオナルドがせっせとステラと腹の子を気にかける生活が始まり、ステラのお腹が大きくなる頃、次第に起き上がれる日が増えていった。
ヨハン先生からも問題はないとお墨付きをもらい、ステラはその年の収穫祭の後、元気な女の子を出産した。
レオナルドは、小さな妹を腕に抱くとポロポロと涙を流して喜んだ。子どもながらに、本当に産まれるのか、母は大丈夫なのかと心配をしていた。
「大きくなったら、僕がアイゼンベルクを守るんだ」
レオナルドが掲げた志は、心優しい男の子の暖かな夢だった。
ヴォルフラムはそっとステラの肩を抱いて引き寄せた。
愛する息子の成長を、すぐ側で夫婦いつまでも仲睦まじく見守ったのだった。
ーFinー
以上完結です!
最後までお読み頂きありがとうございました。
またどこかのタイミングで番外編やおまけエピソードかけたらいいなと思っています。
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