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【完結】『魔力アレルギー』の病弱令嬢は『魔力なし』の辺境伯爵に、心も体も健やかに愛し抜かれました  作者: 藤崎まみ


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評価、ブクマ、リアクションありがとうございます。


何とかあの場を収めたヴォルフラム。


次の日の昼頃、王都に戻る兄たちを見送っていた。


ステラがシェフのバルトが作ったジビエのサンドイッチのお弁当を渡しながら別れを惜しむ。



「ステラ。父上と母上にも元気でやってることを伝えておくからな」

「はい、アルベルトお兄様は来年、結婚式ですよね。まだ出席はできないかと思います。

晴れ姿が見られないのは残念ですが、幸せをお祈りしています」

「またすぐに会いに来れるさ。…無体を強いられてないか心配が増えたし」



アルベルトは数年前から婚約者がいて、そろそろ結婚式の準備に取り掛かっているところだった。

じろりとステラの後ろに立つヴォルフラムを睨みつける目は、どこか冗談も含まれていた。


エリックがお弁当を開けて、どれが何のお肉?とステラとシェフのバルトに聞いているのを横目に、アルベルトはヴォルフラムに近づく。



「世話になったな。これからも妹を頼む」

「…ああ、任せてくれ。

ステラがベルシュタイン家でどれだけ愛されてきたか、充分理解しているつもりだ」

「…エリックがやたらステラを構うのは、ステラが臥せったきっかけの流行病が、自分が持ち込んだとずっと気にしているんだ」

「…そうか」



年の離れた末の妹が可愛くて、楽しい勉強の合間にも庭に連れ出して木登りや外遊びをしていたエリック。

一度はしゃぎ出すと、ステラに怪我をさせがちでその度に反省していたエリックだったが、あの流行病は違った。


熱を出したのがエリックが最初だっただけで、誰から感染したなんて分からないのに、家庭内感染でベルシュタイン家の全員が熱を出した。


隔離のようなことをしてはいたが、結局ステラも最後に熱を出し、一番長引いた。

高熱に意識が朦朧とするステラの姿が目について離れない。当時16歳だったエリックと17歳だったアルベルト。


何とか命の危険はなかったが、以前のような活発でお転婆だったステラの健康は失われてしまった。


原因不明の吐き気と目眩、頭痛。少し良くなったからと外に出かければ再び二、三日寝込んでしまった。

家族みんなでステラの回復を祈ってはいたが、次兄のエリックのステラへの執着心は人並みから外れたものがあった。


ステラが『魔力アレルギー』だと判明した際に『魔力ゼロ』のアイゼンベルク辺境伯爵との縁談を、エリックがいない間に父が早急にまとめたのは、見事だとさえアルベルトは思っていた。


なんやかんや理由をつけて、田舎に住むようにステラを説得していたかもしれない。

でもそれはきっとステラもエリックも一生独身で、過ごすことになる。


ステラが自分のせいでエリックが家庭を持てないことを気に病むだろうし、そんな罪悪感から来る使命感なんて、どちらも幸せになんてなれない。


ヴォルフラムがアルベルトにだけ聞こえるように小さく囁く。



「俺からしてみたら、ステラを『魔力アレルギー』にしてくれたことに感謝すらしたいがな」

「…まぁ、それは本人には言わない方がいいな」



ヴォルフラムとアルベルトは、もうサンドイッチに齧りついたエリックとそれを笑ってはしゃぐステラを同時に見た。


ヴォルフラムに握手を求めたアルベルト。

自分の力が出せる限り全力でギリギリとヴォルフラムの右手を握り締めた。



「まぁ、それとこれとは話が別で…。

ステラを泣かせてみろ、絶対に許さないからな…」

「…エリックより、お前の方がよっぽど執着してんだろ。なんでだよ」



実は同年齢のヴォルフラムとアルベルト。


ステラの体調がどうとかの前に、根っこからシスコンのアルベルトに、ヴォルフラムは冷や汗を流していた。



「道中、気をつけてお帰りください。…またたくさんお手紙書きますね」

「うん、また来年も遊びに来るよ〜」

「ステラ、元気で」



ステラは二人の兄の乗った馬車が見えなくなるまで、じっと見つめていた。



***



本格的に繁殖期が深まって、荒ぶる魔物の被害がちらほら出ていたアイゼンベルク。ヴォルフラムが討伐隊を結成し、何日も屋敷を開ける日々が2ヶ月ほど続いていた。


一人で寝る夜が続いたステラ。

ポーションを飲んでいて寝つきはいいが、明け方になると眠りが浅くなったステラは、夢見が悪く悪夢ばかり見ていた。


魔石に触れて手がただれたり、自分の魔力にすら拒絶反応が出てしまったり、…いつもは考えないようにしていたいつか来るかもしれない恐怖を感じる夢ばかりだった。



「…テラ、ステラ…!」

「ん、ヴォルフラム様…?」

「ただいま、うなされてたぞ」



まだ夜が明けていない深夜に、帰宅したヴォルフラムがステラの様子を見に来ていたようだ。


ヴォルフラムはこうして討伐が落ち着くまでは、少し仮眠し、体を休めて食事をとったらまたすぐに山に向かう生活をしていた。


ステラはぼんやりする頭で何とかヴォルフラムの名前を呼ぶが、眠くて目が上手く開けられない。



「いや、起きなくていい。このままもう一度寝よう」

「ん、…はい」



そのまま布団に入ったヴォルフラムがステラを抱き寄せたまま、目を閉じた。


朝、ハンナに言付けてくれたのか、あまり夜眠れていないステラのために遅めに起こされた頃、ヴォルフラムは既に屋敷にはいなかった。



「ステラ様、お体は大丈夫ですか?」

「うーん。なんだか体が重くて…。ん?」



ゆっくり起き上がって顔を洗おうと立ち上がったステラは、随分懐かしい吐き気をふわりと感じた。


…これって、ひょっとしたら。

もしかしたりするのだろうか。



***



兵士たちが交代しながら討伐を続けていると、ヴォルフラムに一人の兵士が報告する。



「今日の昼頃、ヨハン先生が屋敷に呼ばれていたみたいですよ。…もしかしてステラ様、体調が悪いんですか?」

「…そうか。最近上手く眠れないらしいから、そろそろ相談したのかもな。

…来たばっかで悪いが、一度屋敷に戻ってもいいか?」



周りの部下たちは、一年のうちで一番忙しい繁殖期に、ヴォルフラムが討伐よりも優先するものが、ステラだと口にしたことに驚きを隠せなかった。


そして、ヴォルフラムに一時しのぎではあるがこの場を頼まれたことが誇らしかった。

一同顔を見合わせて、ドッと盛り上がって沸き立つ。



「輿入れの日の夜中、山にすっ飛んできたヴォルフラム様が随分成長なさったな!」

「ワッハッハッハ!違ぇねぇ!嫁さんの一大事なら、そりゃあ行ってやらなきゃですよ」

「あの木偶の坊が、いやはや。ステラ様って偉大ですね」


「うるせぇ!任せた!」



腹を抱えて笑われて、頬を赤くしたヴォルフラムが馬に跨って慌てて屋敷に帰っていく姿に、なんだなんだと沸き立つアイゼンベルクの荒くれたち。


ヴォルフラムはもう外野のことは気にしていられなかった。




お読みいただきありがとうございます。


評価、ブクマ、リアクション励みになります

よろしくお願いします。



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