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怪異撃滅クラブ  作者: 秋野てくと
RE:第四章「敗者に死を与えるマーダーミステリー『さぎり駅』」
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第二フェイズ「ゲームの勝利条件」

突如、現れた死体にミコネは狼狽する。


「これって……ッ!?」


()()()()()のは明白だった――

頭部はざくろのように赤黒く潰れて、

様相は判別できない。

体型は中肉中背の成人男性。

髪は短く切りそろえられており、

服装は特徴のないチェックシャツ姿だ。


羽住はずみイサキと、茶髪の少女も、

それぞれミコネの視線を追って――言った。


「ず、ずいぶんとリアルな……CGモデルだね?

 は、ははは」


「趣味が悪ィ。グロゲーかよ」


それぞれの反応を確認して、狐娘サギリは宣言した。


「一度しか言いませんから、よくお聞きなさい。今、目の前にある死体――これを殺害せし者を【犯人】と定義しますわ。ゲームの勝利条件はね……貴方たちプレイヤーが【犯人】かどうか、それによって分岐しますのよ」


サギリが筆を取り出して空中に字を書く。

字は蛍光色を放ち、空間に浮かび上がった――




・【犯人】の場合

 投票フェイズで自分以外を最多票にすること


・【犯人】以外の場合

 投票フェイズで【犯人】を最多票にすること




「投票フェイズ……?」と、ミコネが首をかしげる。


羽住はずみイサキは、それに答えるように言った。


「【犯人】だと思うプレイヤーに投票する段階フェイズ、ってことかな? マダミスは、プレイヤーの中に潜んだ【犯人】を見つけるゲームだから……」


「それって、なんだか『人狼ゲーム』みたいですね。そういえば、イサキさんは「人狼みたいなゲーム」って言ってましたっけッ!」




『人狼ゲーム』――

村人の中に潜んだ人狼を探す、というゲームだ。


村人となったプレイヤーは、人狼を探すために投票を繰り返す。

投票で最多票となってしまったプレイヤーは、ゲームから取り除かれる。


人狼を全て追放したら、村人側の勝利。

逆に人狼側となったプレイヤーは投票から逃れつつ、村人の数を減らしていくことで勝利できる、というゲーム……だったはず。




「マダミスの場合は、

 人狼に相当するのが【犯人】ってこと?」


「そうだね。人狼と違うのは、()()()()()()()()()()()()ってあたりだ。とは言っても、この辺は遊ぶシナリオによって、細かいルールが違ったりもするみたいだけど……」


茶髪の少女は「面倒クセェ…」と呟き、舌打ちした。


一方、サギリは嬉しそうに笑みを浮かべる。



「『人狼ゲーム』の原型となった元祖は、『ミラーズホロウの人狼』というフランスのボードゲームですわ――神戸のクリエイター集団・グループSNEの安田均先生の著書によると、元になったゲームは1980年代にロシアで遊ばれていた『マフィア』に由来するらしいの。こちらのゲームでは村人と人狼ではなく、マフィアの中にまぎれ込んだ裏切者を探すという趣向だった……こういった「プレイヤーの中にいる正体不明の敵対者を探る」トークゲームのことを総称して『正体隠匿系ゲーム』と呼ぶのよ」



「『正体隠匿系ゲーム』……ッ!?」


ミコネは他のプレイヤー二人を見る。

互いに交わす視線――【犯人】はこの中にいるのだ。


「マダミスもまた、人狼ゲームの系譜に連なる『正体隠匿系ゲーム』の一つ。大きく違う要素は――それぞれのプレイヤーには個別のハンドアウトが存在し、ゲーム上での設定が付与されるということよ」


「ゲーム上での設定、ってことは……ゲーム中は、自分じゃない別の人になるってことなの?」


まるで、お芝居か何かみたい――と思う。


ミコネの理解は合ってるらしく、

サギリが首を縦に振った。


「普通のマダミスでは、シナリオ内で固有の名称を持つ登場人物や、「神父」や「隊長」みたいな役職の名を冠することが多いのですけど――今回はややこしくなるから、それぞれが本人の名を冠した登場人物(本人役)をやってもらいますわ」


サギリがミコネの頭上を指さす。

視線を上に向けると、そこには文字が浮かんでいた。



[玄野ミコネ]



「あっ! あたしの名前ッ!」


「貴方が持ち歩いていた学生証を拝見しましたわ。他の二人も、ほら」


サギリの言うとおり、

それぞれの頭上に名前が浮かんでいる。


ミコネは他の二人の名前を確認した。



[羽住イサキ]

[二月ハジメ]



「二月……にがつ?」


「あァ!?」と茶髪の少女――ハジメが威嚇する。


「ふたつき、だよ。二月ふたつきハジメ……!」


「ご、ごめんなさい!」


ふたつき……札付ふだつきのワル、という言葉を飲み込む。


イサキは「ところでGMっ!」と手をあげた。


聞き慣れない言葉に、

ミコネは「GMって?」と疑問を呈する。


「GMってのはゲームマスターのことさ。マダミスではプレイヤーとは別に、ゲームの進行を担当する人がいるんだよね。ほら、このサギリって奴も「ゲームマスターを担当する八雲やくもサギリです」、とかって言ってたでしょ?」


「言われてみれば、そうでしたッ!」


「で、GM。オレたちがゲーム内で自分と同名のキャラクターを担当する、ってことは――ゲーム上での設定が記されたハンドアウトが配られるんだよな? それはどこで読めるんだ?」


「今回のゲームでは、ハンドアウトはありませんわ」


「なんだって……!?」



「ここは『さぎり駅』。

 狭霧さぎりに包まれた、夢と現の境。

 ゲームの中の貴方たちは、

 ここに来るまでの()()()()()()()()()()()の」

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