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怪異撃滅クラブ  作者: 秋野てくと
RE:第四章「敗者に死を与えるマーダーミステリー『さぎり駅』」
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第一フェイズ「劇本殺」

「(……お腹、すいた)」


時間の感覚がわからない。

VRゴーグルの画面は真っ暗になっている。


ゴーグルを外すことも許されず、

椅子から立ち上がることも許されず、

玄野くろのミコネは何も見えない場所で放置されていた。


と、突然――

視界に、鮮やかな色が戻る。


赤さび色に染まった廃墟の駅。


CGで再現された『さぎり駅』が、

VRゴーグルが描画する水平視界に出現した。


駅のホームには二つの椅子があった。

いや、ミコネ自身の座る椅子を含めれば三つか。


椅子の一つにいるのは、すらっとした印象の青年。

ここに来る前に動画やSNSで見たことがある――

怪談系配信者の羽住はずみイサキだ。


椅子から立ち上がり、イサキは叫んだ。


「お、おい……。何が目的なんだよ。

 オレが何したって言うんだよぉ!」


もう一つの椅子には、濃いメイクをした少女。

ウェーブのかかった茶髪の、ギャル系の女の子だ。


「……テメェ。

 ウチにこんなことして、ただで済むと思うなよ?

 あァ!? 出て来いよ、キチガイ女!」


少女の乱暴な口調に、ミコネはドキリとする。


「(うわっ、怖い人っ!)」


ミコネが口を挟めずにいると、

三人がいる空間に甲高い声が響いた。


「あらあら。元気がよろしいことで。言っておきますけど、わたくしはボタン一つで、いつでも貴方たちの頭に電流を流すことができるんですのよ――こんな風に」


バン、と軽い音が響く。


その瞬間に、茶髪の少女が頭を抑えてうずくまった。


「ぐあああっ!!!」


まさか――電流を、流した?


「ひいい!」とイサキが怯えた声を出した。


一つ、わかったことがある。

ミコネの頭部にはVRゴーグルが装着されていて、スピーカーが耳を覆っているらしい――電流を流された少女の声や、怯えるイサキの声はスピーカーから鳴っている。


ただし、それとは別に……

スピーカーの外からも、同じ声が聞こえた。


「(つまり、現実のあたし達も、同じ部屋にいるんだッ!)」


ミコネは何もない空間に呼びかける。

犯人を探るために――。


いや、それ以上に、目の前で起きた凶行を止めるために。


「やめてッ! ひどいことをしないで。

 そんなことしたら、死んじゃうよッ!」


――犯人も、同じ部屋にいるのかもしれない、と考える。


ゴーグルに覆われて、視界の全てが見えない。

まるで目隠しをされてるみたいに。

だからこそ、ミコネは耳に集中した。


果たして、犯人と思われる声が響く――

()()から。


「ご挨拶が遅れましたわね――

 自己紹介しましょう」


上を見上げると、赤茶色に染まった不気味な空に、

黄金こがね色に輝く光の玉が現れた。


玉はゆっくりと地面に落ちると、花開く。

金色に輝く、九本の光――それは、尻尾だった。


白無垢の衣装を着た、艶やかな少女が姿を現す。

頭には狐を模した二本の耳。

雪の如くに白い肌。

背後には後光のように、九本の尻尾がうねっていた。


黄金なる狐娘――

紅が引かれた唇を吊り上げて、異形の少女は言う。



八雲やくもサギリ、と言います。

 皆様を()()()()()()()()()の世界に案内する――

 今回のゲームマスターを務める者ですわ」



八雲やくも、サギリ……!?」


サギリの姿は、まるで美少女ソーシャルゲームのSRキャラのような現実離れした姿であり――ここが現実ではない、VRの世界だということを思い知らされる。


何よりも、声の位置だ。


「(サギリの声は、頭上から地面へと位置を変えてたけど……スピーカーからしか声がしなかった。たぶん、これは立体音響みたいなシステムを利用して、位置が変わってるように見せるやつ!)」


現実にミコネがいる部屋には、サギリはいない可能性が高い。

一体、サギリの目的は――?


ミコネはサギリが口にした言葉について質問した。


「……マーダーミステリー、って?」


「本場の中国では劇本殺ジュベンシャと呼ぶ、

 トークゲームの一種ですわ。ご存じでなくて?」


サギリが言うと、横のイサキが口を挟む。


「マーダーミステリーって、マダミスのことだろ?それなら、オレも遊んだことあるよ。……人狼みたいな感じで、プレイヤーの中にいる犯人を見つけるゲームだよな」


電流で苦しんでいた少女は「ちっ」と舌打ちした。


「あァ……? じゃあ、ウチらにゲームをしろって言うのか?

 わざわざ誘拐みたいな真似まで、しておいてよォ」


八雲やくもサギリは豪奢な扇子を取り出すと、

口元に当てて「おほほほ」と嫌味に笑った。


「ええ、ええ。

 ですが、ただのマダミスではありませんわよ」


サギリが扇子を振るう――

すると、『さぎり駅』のホームが鳴動した。


現れたのは――人の、死体。



「マーダーミステリーゲーム、『さぎり駅』。

 このゲームの敗者は現実でも死を迎えるのよ。

 仮想現実バーチャル・リアリティに死というペナルティを持ち込む――

 それによって、ゲームは本物の体験となるッ!」

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