第十九話 阿修羅
力無く、家のなかから父親が出てきた。「武速・・・これも運命だ。その昔、須佐之男は、子孫にこんな未来を思い描いていなかったろう」
その時、木藤と東雲、白城や警官たちが到着した。
「何があった?・・・・」
1人だけふらふらと生き残った警官が居た。「大丈夫か?何があった?」
「し、少年が・・・武速君が・・・・」
急ぎ、救急車と消防車、警察の応援を要請した。
「お父さん!」
「武速は、ここに残っても殺人犯としてあなた方に逮捕される。これでよかったんです」
「何を云っている?」
「須佐が連れて行った」
「!!!??」
木藤は百面野に電話した。
「・・・・そうですか。追っても無駄です。武速は見つからない。ディレクター殺しの連続犯人もつかまらない。須佐には手を出してはいけない」
「先生、我々には為す術もない・・・と云うのかい?」
「そうです。阿修羅を追った方が良い」
「・・・・それじゃ遺族が黙っちゃいない」
「仕方のないことです」諦めるしかないのだ。神に近い存在を裁こうなど、土台無理なことだ。須佐の殺しは此処までだ。後は世間が畏怖を持って近づかなくなるだろう。残酷ではあるが、それが彼らの意図なのだ。
百面野には創造出来た。彼らは武速を育てるだろう。そして近い未来、須佐の戦士として長い時を生きる。その時を見てみたい・・・とも内心、思った。
百面野先生!小泉先生!
捜査本部の遠くから聞こえたが、耳に入っていなかっただけで質問攻めだった。
「柳田武速がやくざを多数殺した?やはりあの少年は悪なんじゃないか!」
逮捕状は発令された・・・・しかし・・・
無駄さ。人世にはもう現れない。
それより阿修羅のことを考えたい。
阿修羅の今までの調書を読み返した。成り行きとはいえ、奴は一般人に手を出していない・・・殺人は反社会のみだ。
これは意図的なのか?
阿修羅とはなんなのか?
阿修羅はインド神話、仏教以外に、ヒンズー教やゾロアスター教にも書かれていて、説話が混沌としている。
大体の話はこうだ。
阿修羅は元々は天界の神であった。阿修羅(=アスラ)は正義を司る神と、帝釈天(=インドラ)は力を司る神と云われる。
阿修羅の一族は、帝釈天が主である忉利天に住んでいた。阿修羅には舎脂という娘がおり、いずれは帝釈天に嫁がせたいと思っていた。しかし、その帝釈天は舎脂を力ずくで奪い凌辱した。それを怒った阿修羅が帝釈天に戦いを挑むことになった。
舎脂が帝釈天の正式な夫人となっていたのに、戦いを挑むうちに赦す心を失ってしまった。つまり、たとえ正義であっても、固執し続けると善心を見失い妄執の悪となる。このことから仏教では天界を追われ、人間界と餓鬼界の間に修羅界が加えられたとも云う。
「阿修羅は元々は天界の神。しかし阿修羅が棲む修羅界は天界と人間界の狭間にある。善界の1つであるのに何か異界のような扱いだ。畜生が棲んでいる世界ではあるが、一説ではこの地のように緑豊かな世界だと云う。そう、阿修羅の息子が木を植えたとある」
優しい神だ・・・・それがなぜ?荒ぶる神として現れた?
帝釈天に敗れた阿修羅は仏門に帰依した
神話では、やつらは元々善神で帝釈天とのいざこざから荒れすさぶ神になった。その後、帰依し正法を守る神になる・・・善神に戻ったのだ・・・オリオンパワーで修羅界を開き、物の怪を遣わし、この世を制覇しようとしているのでは・・・無い?
オリオンパワーを使おうとしているのは間違いない。としたら何の目的だ?それを阻止しようとしている須佐は何を懸念している?
古代、エジプト・カイロは緑豊かな土地だったと云う。なぜ?砂漠化して埋もれた?
残る星座は4つ。三つ星を囲む星だ。
「はっ?!」
残る星座は4つ・・・阿修羅は四柱・・・・
考えろ。ネックは異次元だ。異空間だ。須佐と阿修羅は共に五次元体。時間の無い世界に生きるもの。考えろ、考えろ。
聖書に残る話か?
神の怒り?ハルマゲドンー最終戦争?善と悪の終末戦争?いや、違う。
ギルガメシュ叙事詩のノアの箱舟?大嵐と洪水神話?すべての人間が粘土になった神話。ニシル山に着いたノア。
共に人間は全滅する。
考えろ。何かオカルト伝説にヒントが残っているはずだ。
大学へ戻るか?




