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第十五話 須佐之男と櫛名田

なんと云う行動の速さ!


「あのう・・・通してもよろしいんですか?」看護婦が聞いた。

百目野、木藤、柳田父は唾を飲んだ。

「構いません」


御免・・・と云って武角が病室に入って来た。

その容姿は異質な感がした。

「須佐武角と申す」

3人はお辞儀をした。「あ、あなたが武角さん?」

「ん?あなた方は、どこかでお見受けしたかな?」武角はうっすら覚えているらしい。

「私は刑事の木藤と云います。ここの百目野先生とは東北の鬼の件で・・・」

「ああ・・・百目野先生とは?」

「私は阿鼻大の准教授です」

「阿鼻大の准教授・・・」

「柳田副学長が在籍しておりました」

「柳田先生をご存知か・・・」

「いえ、時代が違いますが、著書であなた方を知りました」

武角はニコッとした。

「百目野先生、鬼退治の時にそこに居たと云ったが・・・」

「はい、私は柳田副学長の学問の後を追っています」


「そこの方は柳田副学長の御子孫とベットに寝ているのが息子さんです」

「武速君とお父さん」


「あなた、本当に須佐武角?」父親が聞いた。

「いかにも」

「あなたが何をしに来たか?わかってます。武速を連れに来たんでしょう?」

「・・・・・」

「一人息子だが、先代から、いやもっと前から聞かされて来ました。うちの家系から須佐者が出ると」

「・・・・・」

「覚悟はしておりました。私かと思ったが違った。何10年もあなたを待ちました。武速がそうなら本人に任せます」

「お父さん・・・」

その目は慈悲に満ちていた。


百目野と木藤は驚いていた。武角の柔らかさにだ。残虐性と人の情けを持ち合わせた漢。それが須佐武角なのだと。これが須佐一族を数千年、率いて来た漢なのだ。


「なんなんだよ。連れて行くって?」武速は何が何だかわからない。


「あまり刺激しないでくださいよ。」私たちはこれで・・・」担当医と看護婦は病室を出た。ここから先は他人に聞かれたくない。


「武速君、私は須佐武角と云う」

「父さんが云ってた人?忍者の頭領?」

「忍者か?ははは。まあ、そうだね。実は須佐之男様も来ている」


「な、なんだって?!!!!」百目野と木藤は面食らった。すると空間から須佐之男が現れた。少年だ。そして女性も共なっていた。

「あ・・・あ・・・」

「武速君だね。僕は須佐之男。彼女は母の櫛名田くしなだだ。君を迎えに来た」

「な、何を勝手に!僕はどこにも行かない!」

「武速、それが柳田家の運命なんだ」父親が云った。

「父さん!僕は何者?彼らは何?嫌だ!僕はここに居る!」


「あなたが百目野先生?柳田先生の後継者の?」須佐之男が百目野を見遣った。

「い、いや、後継者ってほどでも」

「柳田先生は亡くなったのか・・・」

80年も前じゃないか、まるで昨日のように・・・時間の経過が人世とは違うんだな・・・百目野はそう考えた。


「今すぐじゃない。考えて欲しいんだ」そう須佐之男が諭した。


「須佐之男さん」百目野は聞いた。

「なに?」

「気になっていたんですが、何故あなたは少年の姿なのですか?それに櫛名田比売は妻では?」

須佐之男はニコッとして答えた。

「それは戦国時代の話です。八岐大蛇が出たと云うことで成敗を陰陽師や、そこの武角の須佐たち、そして源氏の生き残り武将たちが参戦したんです」

「柳田先生の八岐大蛇退治に載っていますね」

「武将の中に父子で参戦していた者がいました。僕はその子を大層可愛がっていた。・・・しかし父子共に戦死してしまいました。僕が気づいた時、子供はまだ息があった・・・が死を待つばかり・・・そこで僕は自分の魂を彼に与えたのです」

「え?それじゃ、その姿は?」

「そう、その小さな武将の姿です。こんな姿で櫛名田比売と夫婦と云えますか?それからは母子としたのです」

「何と云う・・・・」


そう云うと須佐之男と櫛名田は消えた。

何でも答えてくれる・・・隠さないんだ。話すけど公表はするな、オフレコだ・・と云うことだろう。

「さて、私も退散する。佐助を助けに行く」武角は帰ろうと振り返った。しかし、一度また振り返って云った。

「百目野先生」

「はい」

「出雲部落を見に来ませんか?」

「ええ?!!」思わぬ言葉に卒倒した。

「メモも写真も構いませんよ」

震えた。

「い、行きます!是非、行かせてください」

「この戦いが終わったらですがね。・・・・ん?・・・・・・・」

「どうしました?武角さん」

「匂う・・・・・奴の匂いだ。近くにいる」

「奴?」


その時、窓一杯に顔が現れた。2柱目の阿修羅が出現した。

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