第十一話 生贄
「少年を放せ・・・」
「何ヲ云ウカ!」「何ヲ云ウカ!」左右の面が叫んだ。
「少年を抱えて私と対峙するか?」
「ギ、ギ、ギ・・・・」
「貴様、どこの阿修羅だ?人間界に何をしに来た?兵は呼ばせないぞ」
「ヤカマシイ!」「ヤカマシイ!」
すると手のひらから球の空気のようなものを発射した。
「ムン!」黒服の男は刀で両断した。
「阿修羅よ。お前はここでは人殺しは出来まい。ポイントがズレるからな」
「ギ、ギ、ギ・・・・」
「そんな状態で戦うか?!」
「ギ、ギ、ギ・・・・」
そこに木藤達が着いた。
「佐助さん!」
黒服の男は木藤を見て、会釈した。「皆さん、下がって・・・こいつは・・あの球は宇宙空間を発生させる武器です。そこに重力を加えて攻撃する」
「あ!」木藤は理解した。宇宙空間・・・獲物を空間内に収め、重力を加えて潰す。空気は無いから音がしない・・・それを一瞬で行う。「こいつだ!こいつの仕業だ」
「木藤刑事!こいつは1つの宇宙を形成している。オリオンを造って修羅界から兵を送ろうとしているんです」
「オリオンを?」
「そうです。オリオン座は異空間への出入口です。何かを置き、座を作れば繋がる」「何かを置く・・・」「この有様は生贄です。完成すれば地獄の門が開く。修羅界が開きます」
「!!!!!!!!!」
「古代エジプト人はパワーだと思った。宇宙エネルギーを使って国を治めようとしたんです。死んだ王をピラミッドパワーで生き返そうともした。しかし、それは間違いだった。途中で何か災いが起きて王をピラミッドから出して秘密裏に隠した」
「災いとは何ですか?」
「私にもわからない、答えはこいつが知ってる」
「ギ、ギ、ギ・・・・」
「木乃伊伝説を思えば、自ずと答えが見つかります」
「ギ、ギ、ギ・・・・」
「阿修羅!そうだろ?!」黒服の男は阿修羅に挑みかかった。阿修羅は、たまらず少年を離し、飛躍した。ビルの屋上へと飛び移り、逃げた。「まて!」黒服の男はそのまま追った。
木藤と白城は少年を起こした。「武速君!大丈夫か?」気を失っている。「救急車を呼べ!所轄はあの2人を追え!」
武速は救急車で運ばれた。
「あの化け物は武速に何をしようとしていた?危害を加えていない・・・」
木藤と白城は捜査本部に車で戻った。車中、思った。
神話の話では無い。現実だ。それが東京のど真ん中で起きている。「オリオン座は異空間への出入口・・・生贄を置き、座を作れば地獄の門が開く。修羅界・・・」木藤は百目野に連絡した。
「何ですって?!」百目野は声が震えていた。
「阿修羅・・・・・・・・・・・・」
「百目野先生!阿修羅とは?修羅界とは何です?!」
阿修羅
仏教の守護神。戦闘をこととする鬼。
古代インドでは生命生気の善神。サンスクリット語、 asu(息、命)に由来するが、いつの頃からか悪者とみなされるようになった。帝釈天と戦闘した神である。阿修羅は帝釈天に歯向かった悪鬼神と一般的に認識されているが、阿修羅はもともと天界の神であった。阿修羅は天界を追われて修羅界を形成したとある。阿修羅は正義を司る神といわれ、帝釈天は力を司る神といわれる。
阿修羅の一族は、帝釈天が主である忉利天に住んでいた。阿修羅には舎脂と云う娘がいて、帝釈天に嫁がせたいと思っていた。しかし、帝釈天は舎脂を力ずくで凌辱した。それを怒った阿修羅が帝釈天に戦いを挑むことになったのである。
だが、たとえ正義であっても、それに固執し続けると善心を見失い、悪となる。このことから仏教では天界を追われ人間界と餓鬼界の間に「修羅界」が加えられたと云う。
修羅道=妄執に因る、争いの世界。死後、阿修羅に生る。
六道=三善趣。天道・人間道・修羅道。修羅道は人間道の下とされる。三悪趣。畜生道・餓鬼道・地獄道。
元々、修羅道は天道にあった。また神通力を持つ魔羅身餓鬼の阿修羅と、海底地下84000由旬(古代インドの尺。1由旬=約10km、15キロkmと諸説ある)を棲処とする畜生道の阿修羅が存在するとされる。
身長は1由旬で、寿命は一昼夜が人間の100年で1000歳。その棲処は妙高山(須弥山)の北側の海底地下8万4千由旬の間に4層地に分けて棲んでいる。
○羅郷阿修羅王
○婆稚阿修羅王
○佉羅騫駄阿修羅王
○毘摩質多羅阿修羅王
「木藤刑事?木藤刑事?」木藤は電話越しに聞いて開いた口が塞がらない。
「そんな化け物が地獄の空間を開こうとしていると云うのか?!我々に何が出来る?」
「佐助さんが来たんでしょう?」
「そうだ。阿修羅を追ってどこかに消えた。所轄警官たちが追っているが」
「須佐の総力戦にならなければ良いのですが・・・東京が崩壊します」
「東京が・・・・」
「都民を避難させなければ・・・天皇陛下もです」
「出来るか!どこで始まるかもわからず。私の判断では無理だ!」
「先生、阿修羅の身長が幾つだって?」
「1由旬です」
「人間の大きさだったぞ」
「動きが取れないから小さくなったんでしょう」
「元に戻ったら?・・・」
「とんでもない大きさです」
「大きさを変幻出来るのか?」
「多分・・・・」
「捜査本部にどう報告すれば善い・・・」
「ありにままを」
「・・・・・・・・」
白城は横で震えていた。「白城、大丈夫か?」「き、木藤さん・・・」銃を持ったままだ。「銃を戻せ。落ち着け」
「これ、夢でしょ?そう云ってください」「落ち着け!現実だ。お前は刑事なんだぞ」「木藤さん。俺、疑ってたんです。例の九尾狐事件。あなたの実家の神社のことも」「わかった。もう善い」「佐助とは、阿修羅とは何ですか?」「本部に戻ってからだ。前田さんが矢面に立ってるかもだ」「警視生が?」「もう報告されているはずだ。前田さんにもわかるわけがないのに・・・詰め寄られているはずだ。我々を特殊捜査官として上に頼み込んだんだから」「警視生が・・・」「あの人が居なかったら此処に辿り着けなかったんだぞ」「そうなんですか?」「感で動けと云ってくれた。それに百目野だ。それで犠牲者が減ったかもしれない。・・・俺は武速が怪しいと睨んだんだ」「武速が?」「ああ、阿修羅と武速は何処かで繋がっている・・・」
佐助と阿修羅を見失ったと所轄から連絡が入った。
木藤は思った。「阿修羅は4人・・・生贄・・・どう本部に報告し、どう戦えば善い?・・・佐助に問おう。佐助は何処に行った?侍従に会おう」
侍従
天皇に近侍し,供奉する官。律令制で,中務省に属した官人。天皇に近侍し,補佐した。明治官制で,宮内省に置かれた。




