第十話 異形
「玄関先で結構です。お父さんですか?息子さんの武速君はご在宅でしょうか?」「息子が、また何かやりましたか?」「いえ・・・とにかく家には居りますか?」「あいつ、また何かやったんでしょう?ええ!刑事さん」
「話を聞きたいんです」「・・・・居ません。家には近づかないんですよ」
「柳田さん、武速君のことは聞いています」「ヤクザと何か、しでかしたんでしょう?」「いえ、その連中から追われているんですが・・・」「追われて?」「組のお金を持ち逃げしたと・・・」「ば、ばかが!」
「もし連絡があったら此処に・・・」
そう云って木藤と白城は家を出た。
「ヤクザの組を出入りしていた不良少年か・・・」「白城、武速と云う子が、関与しているのかな?巻き込まれた可能性もあるんじゃないか?」「何に?・・・ん?あれは?」「どうした?」「あの電柱の後ろ・・・」「少年?武速か?!白城、連れて来い!」
少年は逃げようとした。
「君、ちょっと待ってくれるか?」白城が追うと足早に逃げ出し、落ちていた石飛礫を投げてきた。「な、何しやがんだ!く、くそ!」白城はそれでも追いかけてやっと捕まえた。「武速君か?」「・・・・・」「よーし、何も話したくないか。ちょっと来なさい」木藤の待つ車まで連れて行った。
「ヤクザじゃない。警察の者だ。武速君か?」木藤が聞いた。「・・・・・」「何も答えたくないか?じゃあ、車に乗りなさい」
すると少年の目が光った。「ん?」バキ・・・バキ・・・ゴウン!「あ!伏せろ!」コンクリートの電信柱が車に向かって倒れてきた。ドドー-ーーン!車が大破した。「な、何が起きた?!」少年は逃げようとしたが「まて!」白城が取り押さえた。
柳田が家から飛び出てきた。「武速!」「やはり、この少年が武速か」近所の市民が何事か?と大勢出てきた。「警察です。危険ですから家の中に居てください」と木藤が叫んだ。皆。家の中に戻った。
「木藤さん、あれ?・・・」白城が指を指す方向を見ると「何?!」仏像のような青銅色の体、腕が6本、顔が3面の異形な者がこちらに向かってきた。ギギ、ギギ・・・と唸り声をあげながら。
「な、何だ?!あれは!」2本の手には剣を振り上げている。「白城!撃て!」2人は銃を乱射した。が、怯みはするが、当たっても倒れない。柳田父は腰を抜かしている。「あわ、あわわわ・・・」その異形の者はピョンと10mほど飛んで大破した車上に舞い降りた。
ズダン!
木藤と白城を見据えて再び剣を振りかざした。「ギギ、ギギ」「野郎!」
「邪魔ヲスルカ?ウヌハ?!」
「邪魔ヲスルカ?ウヌハ?!」
左の顔は女、右の顔は男。その顔が睨みつけてドスの効いた男女の声で叫んだ。正面の顔は無表情だ。
「しゃ、しゃべった!」
剣を振り上げたので銃を乱射した。ガガーーーン。ガガーーーン。
異形の者は宙返りをすると武速の腕を掴んだ。
「あ!」白城は武速を惹きつけたが1本の手で払いのけられた。武速は異形の者に掴まれて屋根へと飛んだ。物凄い跳躍力だ。そして屋根伝いに逃げた。
「なんだと!」「武速がさらわれた!応援を呼べ!」
車の無線はまだ生きていた。「木藤だ!本郷4丁目付近!第三者に容疑者をさらわれた!屋根伝いに逃げた!西だ!」
数台のパトカーが追った。
「木藤刑事!」パトカーが1台現場に到着した。「大丈夫ですか?!」「大丈夫だ。銃弾を持っているか?弾がなくなった」「予備はありません」「なら、銃を貸せ!」「そ、そんな!」「白城、お前も借りろ。ついでに車も借りる」「え、ええ?!」
木藤と白城はパトカーに乗り込んだ。「白城、お前が運転しろ」木藤はパトカーの無線で他のパトカーに叫んだ。「本庁の木藤だ!屋根伝いに容疑者を抱えて逃げている。異形の者だ!人間じゃない!注意しろ」
連絡を受けた他のパトカーは「何を云っているんだ?木藤刑事は?」「ん?あれは?・・・」道にその者は居た。「あれだ!」「何?!なんだ?あれは?」「ば、化け物だ!」「901、見つけた。春日町2丁目!」無線を全車に入れた。パトカーの配置はipadに明記される。数十台ばかりが近くに居る。
その異形の者は腰から剣を抜くとまっしぐらにパトカーに突っ込んできた。「撃て!」「あれでは撃てない。少年を抱えている!」
すると異形の者は掌を差し出すとそこから空気の球のようなものを発射した。音はしない。見る見る大きくなりパトカーを飲み込んだ。「うう!息が出来ない!」そのままビルの壁にすっ飛んだ。グワッシャーーーン!・・と、音もしない。そこへ他のパトカーが数台やってきて取り囲んだ。
「何だ?これは!」全員、車から出て銃を構えた。「パトカーの警官はどうだ?見て来い」警官が2人様子を見た。「大丈夫です。大怪我ですが」
異形の者は戸惑っていた。「ギギ、ギギ」
すると1人の黒服の男がパトカーから降りてきた。
「此処で何をしているんだ?阿修羅?」「!!!!ギギ、ギギ?」
その男は背から刀を出した。その刀は波打ち、男の目が緑色になった。




