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エリゼの言い分

「すまない。また弟が嫌な思いをさせて本当にすまない」

2泊目の宿屋に着き、落ち着いたところでリード様はまた頭を下げた。この姿、よく見ている気がする。気のせいじゃなく。

私は笑って手を横に振った。大人の対応、大事。

「いえ、誤解が解けたのならそれで良かったです」


「私は帰りません」

エリゼさんはナッシュさんの腕をとって隣に座っている。離せ、離しません、の言い合いは割愛させてもらう。


「帰れ、迷惑だ」

ナッシュさんは無表情ながらも迷惑そうな雰囲気を醸し出す。

「ナッシュ、お前婚約していたのか」

リード様が言いづらそうに言った。

「伯父貴からの命令だ。俺が雌に興味がないのを心配したらしい」

「叔父さんがか…」

はーっとリード様は息をつく。


「もう後3カ月後には式の予定だったんです。もう教会も予約もしていて、ドレスだって発注していたんです」

またポロポロっと涙をこぼしながらエリゼさんは訴える。

「違約金もすべて俺持ちで君に払う慰謝料も弁護士の言う上限を支払っている。他に何が不満なんだ」

「私の気持ちは納得できませんっ!」

ぎゅっとナッシュさんに腕を絡めながらエリゼさんは泣いた。


確かに式の直前でいきなり結婚はなしです。はいそうですか。では納得出来ないだろうなぁ。私はエリゼさんに同情した。

隣に座って静かに話を聞いているシュー様にもし自分がそうされたら、と思うと胸がチクチクした。


「あー…これは当人同士の問題だからな。とにかく一度2人とも王都に帰って親も交えて話し合ったらどうだ?」

リード様がもっともなことを言った。私もそうするべきだろうな、と思う。


「嫌だ、エリゼは帰れ」

ナッシュさんは頑なだ。エリゼさんはまた泣く。これだと本当に収拾つかないんですけど。


「俺達の休暇の残りももうそれ程ないから一度王都に帰るのも出来ないしな…エリゼ嬢、申し訳ないが一度家に帰られてはどうだろうか?恐らく親御さん達にも何も言ってないのではないか?弟は任された仕事もあり今のところは俺達に同行するのが一番良いと思う。落とし所が見つからない以上お互いに最善の道を行くのが良いと思うが」

リード様の言葉にも頭をふるふる振って拒絶の意思表示だ。


「あのさ、エリゼさん、ここまでされてナッシュさんとまだ結婚出来ると思ってんの」

と、突然ロニーがぶっこんできた。


「エリゼさんが姉ちゃんに勝とうが負けようが、ナッシュさんはもうエリゼさんとは結婚しないと思うよ。すがって泣いてもそればっかりはどうにもならないじゃん」

「ちょっと、ロニー…」

「甘い姉ちゃんは黙っててよ、恋愛結婚でもない家同士の婚約者が相手の心変わりで婚約解消なんだから、慰謝料までもらっといてこれ以上なにを求めるんだよ。ここで泣いてどうすんだよ。迷惑だってはっきり言われてるんだからさっさと帰れよ」

まだ続けそうなロニーの口を私は塞いだ。これ以上はダメだ。いやもう既に色々ダメだ。どうしよう。


チラッとエリゼさんの方向を見ると顔に大ショック、と書いてあった。

「わたし、わたし…は、ナッシュ様ともう結婚できないんですの?」

もう誰も何も言わない。

というかもうこの雰囲気で言えない。ロニーの口は私がまだ塞いでいるし。もごもご言ってるからまた要らないこと言いそう。


エリゼさんは立ち上がって扉を開けて駆け出した。控えていた従者がすぐに追いかけたから大丈夫だろう。


「ちょっと、ロニー」

「ああいうのは甘やかすからダメなんだ。躾は悪いことしたその場が重要なんだよ、姉ちゃん」

…まぁ確かにエリゼさんの頭には耳がついていたから獣人には違いないわね。


やれやれ、と肩を落とした。

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