21 ずっと待ってる
猫の塔。
そこの主は女性である。そして迷惑なことに、静謐の塔の跡継ぎである自分を拉致してきては手伝わせるという、基本的人権を全く理解していない化け猫のような女だと、彼は思っていた。
「あっほだなぁ。よりによってプレゼントが凶器っ! ふっつうさぁ、女の子に贈るってのは、可愛い小物とかぁ、美味しいお菓子とかぁ、綺麗なアクセサリーだろぉ? ばっかだねー、あーホント、馬鹿」
そこまで罵倒されても、彼は耐えた。そうだ、この女に普通の概念など語られたくもない。
作業がひと段落ついた猫の塔は、コーヒーを飲みながらゲラゲラと笑い転げている。猫の塔にも跡継ぎはいるが、今日も全く姿を見せない。
「ちゃんと、れっきとした、可愛らしい小物でしょうが。今度は人に取り上げられないよう、どこにでもいる雀の姿をとらせましたし」
「誰がどう見ても凶器だろうがよ。暗視スコープまで装備した暗殺用小型兵器じゃないか。そんなのを喜ぶのは、後ろ暗い稼業の奴だけだっつーの。そんなのを贈られて喜ぶ女がいると思える時点で救いようのない。おっ前さぁ、ホント、キングオブ馬鹿だって、静謐の塔にも言われなかったか?」
「・・・・・・」
そこへ、ちょこまかちょこまかとやって来た子供達が、彼を取り囲んだ。
「レス、バカなのぉ?」
「R01、人を馬鹿呼ばわりするのはやめなさい」
猫の塔の影響を受けられては困る。だから彼はそう言って窘めた。しかし、そこでR02が、椅子に座っている彼の背中によじ登ろうとする。
「R02、背中に乗りたいなら床の上に座ってあげるから、椅子の上にいる時にはそんなことをするんじゃありません。落ちたら怪我するだろう」
「はーい」
彼が床に座った途端、勢いよくタックルをR03がかましてくる。
「えへへっ、私はレスのお膝の上に乗るのぉっ」
「言っておくがR03、膝の上に乗ると言うのはもっとおとなしく腰掛けるものであって、突撃してくるのは攻撃以外の何物でもない」
何だか自分の居場所はなさそうだと思い、もじもじしている最後の一人に、彼は手を差し出した。
「おいで、R04」
「・・・うん」
既に両膝の片方ずつにR01とR03が座り、背中から抱きついたR02がその首に手を回して肩から顔を出しているとあって、彼にしがみつける居場所はない。それでも彼が自分の横に座らせ、その頭を撫でてきたものだからR04は嬉しそうに笑った。
「相変わらず見事なパパだな。しかし、女へのプレゼントは全くもってなってない。なあ、そう思わないか、R達?」
「あら。だけどレスはそういうところも素敵だもん。だって小鳥なんでしょ? 私も小鳥、欲しいなぁ」
R03がおねだりするように彼を見上げて言った。
「えー。私はもっと可愛いのがいいー。大体、灯りをつけたり火を出したりしなくても、別に困らないしぃ。私は綺麗なネックレスが欲しいなぁ。この間、キャットがしていたようなの」
R01は、そんな物は使わないといったスタンスだ。それこそ先日、猫の塔がしていたような綺麗な首飾りの方がよほど嬉しい。
「何だ、あれが気に入ったのか、R01。だが、あのネックレスは私の思い出の品でな。二つとない代物だ。・・・まあ、R01にはもっと可愛らしいのが似合うだろう。そこの分かってない馬鹿にねだるといい」
「おねだり? おねだりしたらもらえるの? ねえねえ、レス。私、可愛いネックレスがいいなっ」
R01は、期待をこめて彼を見上げてくる。
「ちょっと待ちなさい、R01。R02とR04もネックレスが欲しいのか? R03は小鳥がいいんだな?」
背後からおんぶお化けのように貼りついていたR02が、
「えー。私はネックレスよりもレスとお出かけしたーい」
と、言い出す。
「あっ、ずっるーい、R02。それなら私もレスとお出かけがいいっ」
「そんなの二人ともずるいっ。なら私もお出かけがいいっ」
R03とR01が、一気にそちらへと変更する。やれやれと思いながら、彼はR04を見た。
「R04は何がいい?」
「わ、私も・・・。みんなと一緒にお出かけがいいかな」
猫の塔もそれなりに広いが、やはりずっと暮らしていると飽きる。けれども危ないからと、外にはなかなか出してもらえない。
そんなR達からみれば、彼は自分達に優しくしてくれて甘やかしてくれる大好きな存在だ。ゲラゲラと笑い転げている猫の塔だって、ここで一番偉い人だけど、何だかんだと言っても彼にはそれなりに配慮しているらしい。
と、そう教えてもらったのだが、・・・・・・配慮ってどういう意味なんだろう? 辞書に載っている言葉と現実がかなり違うような気がしてならない。きっと、もっと沢山、意味が載っている辞書には書いてあるのだろう。
「お出かけ、ねえ。・・・ちゃんと言うことをきくって約束できるか?」
その言葉に、彼女達は一気に嬉しそうな顔になる。揃って、「うんっ」と頷いた声はとても元気なものだった。
「ちょっと待て。お前なぁ、そいつらを本気で外に出す気か? 外って島の外だろうが」
「あまり人目につかない所ならいいかと。どこかの高級別荘地にでも連れて行きましょう。・・・やはりまだ無理でしょうか、猫の塔?」
「いや・・・。そうだな、データを見ていても特に異常はない。ただし装置は持っていって、常にデータはとれ。特に怪我などには注意しろ。何かあればすぐ戻って来いよ」
「分かりました」
そう言って彼は立ち上がろうとしたが、さすがに四人にのしかかられていると重い。
「R達、立ち上がれないんだが?」
「やっ。もっと遊ぶのぉっ」
R01が駄々をこねる。
だってしょうがないだろう。なかなか彼は来てくれないのだ。来てくれたなら頑張って捕まえておかなくては、また帰ってしまう。
「まあ、せっかく来たんだからちゃんと世話ぐらいしていけ。私は今から寝る。飯と風呂と遊び相手と寝かしつけはよろしくな」
猫の塔も、データに興味はあっても子育てに興味があるわけではない。普段、R達の世話はアンドロイドに任せてあるのだが、やはり人間との接触は大事だと思いつつも、自分でやる気はなかった。
だからそう言い捨てて、部屋から出て行ってしまう。
「・・・R達。遊び相手とご飯はともかく、お風呂はそろそろ自分達で入りなさい。君達は女の子なんだから」
「レスも女の子だよ?」
不思議そうにR04が言う。
「違います。R04。私は女の子じゃありません」
考えてみれば、睡眠学習で知識は植えつけてあるものの、一般常識や経験が追いついていなさすぎるのだと、そこで彼も反省する。
どうして自分が女になるのか。それはR達が、男というものをよく分かっていないからだ。
「まず、世の中には男と女がいて・・・」
いずれは雄しべと雌しべの話もしなくてはならないのだろうかと、彼はいささか気が遠くなりかけていた。
エスリーダ王国の王太子が暮らす離宮は、王城から少し離れた所にある。
「うっわぁ。とっても豪華なお城なのね。離宮っていうから、こじんまりしているのかと思ってた」
本来の王城と同じにしか見えない。
王都に入れば、向かって左側が王を始めとした人々がいる王城、右側が王太子の暮らす離宮。けれども鏡に映したかのように同じお城にしか見えない。いや、色合いは少し違っているけれども、その程度だ。
「いざとなれば、私の離宮が王城になるからな」
小窓から顔を出すようにして興味津々のレイラに、ライジードはそう説明した。
「かつて凄まじい疫病が流行ったことがある。その際、国王までもがそれに罹ってしまい、全てが混乱したのだ。疫病に罹っていない王族を慌てて避難させたが、避難先の屋敷は小さくて政務を代わりにするといったことも出来なかった。・・・その後、その際の教訓を踏まえ、国王と王子は別々の城に暮らすことになった。といっても、普段は私が王城に出勤する形になっているがね。もし、国王が同じような疫病に罹った際には、私の離宮が王城となり、そこから政務を執り行うことになる」
「へぇ」
王様は大変だなと、レイラは思った。親子でも一緒に暮らせないのか。
だけど、ある程度の年になったら一緒に住むのもストレスになりそうだから、何ごとも一概には決めつけられないのだろう。
「だけど、普段は王城がメインなんでしょ? だったら、広すぎない?」
「ああ、それはな。使わない所は閉鎖しているからいいんだ」
「・・・幽霊とか棲みついてたりして」
使わない部屋は閉鎖というが、かえって不用心ではなかろうか。私が迷い込んだらどうしてくれるのだと、そんなことを思いつつ、脅かすようにレイラは言ってみた。
「大丈夫。それなりに稼働率もいいからな」
「へ?」
「使わない時は閉鎖しているが、なかなか好評なんだ。私の住む区画には完全に出入り出来ないようにしてあるが、部屋の貸し出しなどを行っている。そちらは使う門も出入り口も別になるし、庭も完全に分けられて別々だが、金持ちが宿泊してくれるのでいい儲けになっているよ。何といっても私一人だけの為では料理人も侍女達も仕事の甲斐がなさすぎるだろう?」
「ああ。なるほど。お城に泊まることがウリなホテル、と」
「そうそう。私は独身だし、妻子がいないから皆も腕の振るい甲斐がないのさ。しかも宿泊費も安くないから国外の金持ちが滞在することが多い。そして、様々な慣習の違いなどを身につけるのにもちょうどいい。視野の狭い使用人では困るからね」
なるほどと、レイラは思った。
「で、その入ったお金は?」
「私の小遣いだよ。決まってるだろう? 私の住まいなのだから」
「・・・・・・」
なるほど、ちゃっかりしている王子様である。使用人に研修を積ませるという名目で、しかもそれで得た金は小遣いときたものだ。
「そういうのって、国庫に納めるべきじゃないの?」
「それじゃ駄目なのさ。・・・いざという時に動かせる金がないと、非常時に何も出来なくなる。自分の裁量で一瞬にして動かせる金があるから、迅速な行動がとれる。たとえば、だ。もしもレイラ、大雨で洪水が起こり、誰もが行き来出来ない状態になったとする。王城も水に浸かり、役人が出仕することも出来ない。だが、もしも私の離宮に金があり、スペースがあり、そうして国外から様々な備蓄を買う手筈がつけられるとしたら? 国王の決裁を待たずして動けるとなったら、・・・その時間のロスがないだけでどれだけの救済が出来る?」
「・・・ジード。だけどそれは、既に王様の命令に従う王子様の考え方じゃないわ。それは既に何らかの責任を持つ人の考え方よ。ううん、どこかのトップの考え方」
たしかライジードは第三王子だと、そう言っていなかっただろうか。
なのにどうして、第三王子が非常時には王宮になる離宮に暮らしているのだろう。そういうことなら、離宮に暮らすのは第一王子ではないのか。
つい、普段は子供っぽく見せかけていることを忘れて、レイラはそう呟いた。
「私がそういう考え方をするのはおかしいと、レイラは思うかい?」
そう問われて、レイラは考え込んだ。
どうなのだろう。だけど何かあった時、全てが停滞してしまうよりもいいことに思える。
「それ自体はいいことだと思う。だけど、そういうのって、第一王子様とかがすることじゃないの?」
「ああ、兄上は・・・」
そこでライジードは言いよどんだ。
「お兄さんは?」
「兄上は、綺麗な花を愛でるのにお忙しく、常に城を留守にしておられる」
「・・・ああ。お兄さん、お花が大好きなのね」
「そうそう。いつも花壇の手入れをしているんだ」
うふふ、あははと、白けた笑いがそこに漂う。
綺麗な花とは、つまりは女性の尻を追っかけるのに忙しいということか。さすがに、子供の自分にはあからさまに言えなかったのだろうと、レイラも察するしかない。
何とも言えない気持ちでレイラは視線を逸らした。
そんなレイラを、ライジードが冷静な観察する瞳で見ているとも気づかずに。
「ザイへ
お元気ですか? 私は元気です。お給料がたまったので、この荷物を出しています。前はファルードがいたから、リベラ神殿でお願いしたら出せたのですが、今はファルードがいないから仕方ありません。
さて、この箱に入っている小鳥ですが、荷物が届いたらすぐに出して、太陽に毎日当ててください。それから毎日、話しかけてあげてください。小鳥の名前はスズちゃんです。
『こんにちは。スズちゃん。僕がザイだよ』って、自己紹介もしてくださいね。
スズちゃんが太陽の光を浴びて元気になったら、首に付けてある筒の中にお手紙を入れてください。そうしたらスズちゃんは私の所にお手紙を持って帰ってきます。
一度、ザイを覚えさせたら、この小鳥はお互いにお手紙を持って飛んで行ってくれる筈なのです。凄いでしょう? 伝書鳩ならぬ伝書雀なのです。
エスリーダ王国で、美味しい飴を食べました。一緒に入れてあります。口に入れると、ふわぁって果汁が広がるような感じで甘さが広がります。パパとザイで分けてください。沢山入れてあるから、きっとみんなにも配れると思います。
あ、もう一つの手紙はパパに渡しておいてくださいね。リリエル」
「パパへ
お元気ですか? 私は元気です。
さて、ロムルスと私は、ファルードを追いかけて、エスリーダ王国のテルノスに向かいました。馬に揺られるのは一生分体験しました。二度と、あんなにも長く馬に乗ったりなんかしたくないです。
そしてテルノスで、私はエスリーダ王国の王子様に会いました。王子様の名前はライジードです。ロムルスはびしっとして落ち着いた感じの騎士様で、ファルードは綺麗で見惚れちゃうぐらいに綺麗な神官様ですが、ライジードは甘く優しい雰囲気の王子様です。
ロムルスとファルードは、急用ということで帰国してしまいました
そして私は、ライジードと一緒にエスリーダ王国の王都に来ています。お城です。広いです。きらきらしています。
そこでメイドのお仕事をすることになりました。
メイドというのは、王子様を起こして、ご飯を食べさせて、お洋服を着せて、一緒にお勉強をするのがお仕事らしいです。・・・・・・かなりそこには色々と言いたいことがあるのですが、パパに愚痴っても仕方ないから言いません。
落ち着いたら帰りますが、なかなか難しい感じです。私のことは気にせず、パパはパパの幸せを追い求めていてください。リリエル」
マイオスとザイは、何とも言い難い顔を見合わせた。
「なあ、ザイ。エスリーダ王国のお城ってどこだ?」
「・・・さあ。かなり遠いのは分かるけど」
一体、リリエルはどこまで移動し続ければ気がすむのだろう。どうして遠くへ遠くへと、こう彼女は動いていってしまうのか。
「お城のメイドか。・・・出世というのは分かるんだが、何ともなぁ」
「リリエルは可愛いから、きっとあの顔で抜擢されたんだろうけど」
「王子様のお世話だなんて・・・。きっと小さな可愛い王子様なんだろうがなぁ」
「そうだね。遊び相手も兼ねているのかな」
はあぁっと、マイオスが溜め息をつく。
若い女の子は華やかな暮らしに憧れるものだ。そりゃ、お城になど行ったら、こんな田舎の村には帰ってきたくもないだろう。
マイオスもザイも、チェンジン国の王宮なら知っている。あの王宮にいた女官達は、まさにこんな地方から出てきましたと言わんばかりの彼らに冷淡だった。彼女らの恋愛相手には、ましてや結婚相手には考えられない程の田舎者だったからだろう。
何でも、宮殿に出入りする中でも身分の高い男を射止めてこそ、なのだそうだ。
(お城だなんて・・・。大丈夫なのか、リリエル)
ザイにしてみれば、リリエルは本当に可愛い女の子だ。そりゃ、お城で侍女の服など着ていたら可愛すぎて誰もが持って帰りたくなるだろうとしか思えない。
今の彼女はファルードを幼くしたような顔なので、ザイ達が思っている容貌ではなかったが、美少女に変わりはなかった。ただ、誰もが持って帰りたくなる前に、心の狭い王子様が独占して持って帰っただけである。
「ああ、そうだ。マイオスさん。これ、リリエルから飴だって」
「ありがとな。・・・菓子よりもお前が帰って来いっつーんだ、リリエル」
うっすらと涙ぐむマイオスは、このままリリエルが戻らないのではと案じられてならないのだろう。ちょっとした街にすら、出て行った若者が戻らないことは多々ある。ましてやお城勤めなどし始めたら、どうして帰ってくるだろうか。
「やっぱり、あの時、迎えに行っとけば・・・」
「そんな無茶してマイオスさんに何かあった方が、よほどリリエルは辛いって。ピルッポの奴らが全て悪かったんだ。自分を責めないでくれよ、マイオスさん」
ザイが慰めても、やはりマイオスにとっては悔やまれてならないのだろう。
かなり落ち込んでいるようだった。
「じゃあ、俺は行くけど。・・・かなり美味しいってよ、その飴。エイリーンさんもシアラも喜ぶんじゃないかな」
「ああ、ありがとな」
軽くマイオスの肩を叩いて、ザイは家に戻った。
明日にはまたピルッポの街に行かねばならない。今日中に手紙を書き終えておいた方がいいだろう。
自宅の部屋に戻れば、窓際で日光浴している小鳥の玩具がいる。
「スズ。そろそろ日光浴は終わるのか?」
「チュンッ」
こんなにも凄い玩具が存在することに驚いたが、いくら何でも本当にエスリーダ王国まで無事に玩具が辿り着けるとは、ザイも信じていなかった。けれども、そんなお遊びに少しは付き合ってあげてもいいだろう。
だからリリエルに手紙を書く。この思いが届くことを祈って。
「リリエルへ。
本当に凄い小鳥で驚いた。元気でいるならいいけど、早く戻ってきてほしいな。
マイオスさんはエイリーンさんと結婚した。エイリーンさんも、早くリリエルを娘として抱きしめたいと待っている。
そうそう。あの日、ピルッポの奴らにリミダ村が襲われたけど、その時、彼らが誘拐されたと捜していたのがシアラだ。リリエルよりも小さな女の子だよ。そのシアラは攫われ、色々あって、親も兄姉も亡くなっている上に、引き取られた先で辛い目に遭っていたことから、マイオスさんが引き取った。
シアラは、リリエルというお姉さんがいると知り、どんな人だろうとドキドキしている。
妹が出来たんだよ、リリエル。
そのエスリーダ王国からでは、帰国もそうそう出来ないだろう。女の子一人では危険だ。
そのお城の年季というのがどうなっているのか分からないが、詳しく教えてくれたら迎えに行く。マイオスさんだって、あの日、リリエルを迎えに行かなかったばかりにと、後悔しているんだ。
皆が君を愛している。そして帰りを待っている。
どうかリリエル。それを忘れないで。ザイ」
次の日、ピルッポの街に出かける途中で、ザイは小鳥を空に放した。
小さな鳥は、パサパサと飛んでいく。
(不思議な鳥だったな。本当に飛んでいってやがる)
それでも玩具だ。きっと途中で動かなくなって、地面に落ちてしまうのだろう。
けれども空に羽ばたく姿を見ていれば、本当に辿り着くのではないかと、希望が持てる。不思議な、小鳥の姿をした人形。
(分かっている、リリエル。お前がもう、戻らないということなど)
華やかな暮らしに慣れてしまえば、人はもう戻ってこないのだ。故郷を懐かしんでも、懐かしむだけになる。ましてや、あんなに可愛いリリエルなのだ。
きっと城で働く小姓達と仲良くなり、もしくは育っていくに従って城に出入りする若者に口説かれるようになり、いずれはそいつらと恋を育むのだろう。
(あんなにも凄い玩具が手に入るような暮らしをしているんだ。リリエル。そんなもの、この田舎では決して手に入らない)
それでも、リリエル。
お前に伝えたかった。今も待っているのだと。
だから書かずにはいられなかった。お前を迎えに行くと。
皆なんかじゃない。俺は、俺こそがずっとお前だけを・・・。
どこかに墜落するであろう小鳥と共に、あの手紙もどこかで朽ち果てるだろう。分かっていても書かずにはいられない程に、俺はそう、お前に伝えたかったんだ。
今もお前だけを、と・・・。
そんなザイの感傷をぶっちぎるように、小鳥は高く舞い上がって雲を突き抜け、白く輝く雲の上で太陽の光を浴びながら、一路、エスリーダ王国へと向かっていた。
なあ、リリエル。俺はずっとお前を待ってる・・・・・・。
違う。絶対に違う。これは侍女の、そしてメイドのお仕事ではない。
レイラは確信していた。
しかし、何ということだろう。この王子様は、
「え? これは侍女のお仕事だよ? 頑張って、レイラ」
と、遠慮なく自分にそれをさせようとするのだ。
助けを求めて周囲を見渡しても、そっと視線を外される始末。
「ラ、ライジード殿下・・・。お戯れは困ります」
「やだなぁ、レイラ。殿下じゃないだろう? ちゃんとジードって呼ばなきゃ。君がつけた私の愛称じゃないか」
「・・・あはは」
深い臙脂色のメイド服は可愛くて気に入った。何故なら最初、この離宮に到着した時に、同じようなデザインで鉄紺色のそれを見ていたからだ。
このお城に仕える女性達のお仕着せは色違いで、職種によって違うのだろうとレイラは思っていた。
(まっさっか、誰が全く違うだなんて思うのよーっ)
働き始めてから知ったのだが、このお城で働く女性は皆、鉄紺色の制服だった。ただ、厨房業務、室内清掃、洗濯業務などといったそれぞれの作業分野、そしてその監督権がある者と下働きに徹する者と、そういった違いが、よく見たらそれぞれに少し異なるデザインに影響している。だが、何にしてもその紫を帯びた紺色のお仕着せは統一感があった。
しかし。
レイラは違うのだ。
上質な生地で仕立てられた、深みのある臙脂色のメイド服。けれども使われているレースですら、他の人が着ているお仕着せのレースよりも格段に繊細で、高いものだと分かる。
(きっと、誰も私のこと、メイドさんとかって思ってない。絶対に思ってない)
レイラは確信している。
何故なら、このお城で働いている誰もがレイラのことを「お嬢様」と、呼ぶのだから。
「教えてあげただろう? 侍女っていうのはね、私の傍で全てをお手伝いするお仕事なんだよ」
「・・・・・・っ! いい年をして、子供に『食べさせて』なんて言うなぁっ!!!」
ついに、レイラは爆発した。
そうだ、誰が見ていようともう関係ない。この王子様のお戯れに付き合い続けていたら自分の心が擦り切れてしまう。
毎度毎度、お茶の時間になれば王子様の口元にお菓子を運ぶだなんて作業、いつまでも続けていられるかというのだ。
「反抗期かな。じゃあ、私が食べさせてあげる。はい、レイラ。あーんして?」
「ちっがーうっ!!」
だが、休憩時間とあってソファの上でレイラを膝の上に乗せていたライジードは全く取り合わない。がるるっと唸り続けているレイラが大口を開けた隙に、さっとそれを口に入れてしまう。
噛んでしまったら、そのままもぐもぐと食べ始めるレイラだ。
「美味しい?」
「・・・うん」
お菓子はどれも美味しい。毎日毎日、色々な物が出される。はっきり言って、ここのお茶菓子をかなり楽しみにしているレイラだ。
なんと王城よりも料理人のレパートリーは凄いらしく、珍しい他国料理もかなり出てくる。おかげで、ライジードと一緒に王城についていく時も、そのお菓子を持っていって分けてあげているので、実は喜ばれているレイラだ。
「もちもちとしている食感が面白いよね。初めて食べた時には、おかしな感触だなと思ったものだったが、慣れたらこういうのもありだなと思えるようになった」
「そーお? 私、こういうの、好きだけど」
どこか東北のクルミ柚餅子を思わせる食感だ。味も少し似ているような気がする。柚餅子は様々なバージョンがあるが、レイラはクルミが好きだ。ゴマを好む人も多い。
歯にくっつくのを嫌がる人もいるらしいが、細かいことを思い出せない日本を偲ばせてくれるようで、レイラは気に入っていた。
「レイラはどんな国の食べ物でも美味しく食べられるんだな。いいことだ」
「だって美味しいんだもんっ」
褒めてもらえると、やはり嬉しい。
けれども、それを美味しく作れる人がやっぱり一番偉いのだ。ああ、ここのコックさんはなんて素敵なのだろう。たまにこっそり覗きに行くと、味見をさせてくれて、更にレイラとも楽しくお喋りしてくれる、そんな小父様達なのである。
今度、豆を煮て甘くしてから粉で練って蒸すというものにもトライしてくれると約束してくれた。うまくいけば、外郎をこれで食べられる筈なのである。
いや、普通の外郎はそこまで小豆を重視しないと、普通の人は言うだろう。だが、そういう人は、一度、鹿児島の春駒か、徳島の阿波ういろを食べてみるべきなのだ。普通の外郎が物足りなくなるぐらいに、ででんと餡子が主張している上、腹もちもいい。
いや、外郎よりも羊羹だろうと、そう思う人もいるだろう。勿論、寒天で固めた羊羹もいい。だが、あの小豆を重視した外郎は、その素朴さがいいのだ。
「レイラ? どうしたんだい?」
「え? ううん。・・・あのね、これ、きっと違う木の実を使っても美味しいんだろうなって」
「そうかもね。レイラ、動かないで。唇の端に、粉がついてる」
「え?」
ぺろっと、その舌で舐められて、レイラは冷たい目になった。
「ジードォ。口へのキスはするなと、あれ程・・・」
「キスじゃないだろ? 唇の端っこだったし」
どすのきいた声で怒りの波動を漂わせるレイラに、ライジードはしれっと言ってみせた。
(そ、そりゃ端っこだけど、ほとんど唇に近かったような・・・)
「怒らないの、レイラ。ほら、機嫌を直して? 何ならちゃんとしたキスをしてあげるから」
「せんでいいっ」
ああ、どうしてこの王子様はこうなのだろう。
一般人向けのホテルにするぐらい、このお城に部屋は有り余っているというのに、レイラの部屋はない。現在もまたライジードの部屋を一緒に使う羽目になっている。さすがに寝台は違うものを入れてくれたが、同じ寝室で寝起きしているだなんて、どういうことだ。
しかも、王城に行って初めて知ったのだが、レイラが着ている臙脂色の服は、ライジードが所有している領地の特産品の染料で染めたものらしい。
(外国への輸出品になるぐらいに高い染料を使わせるってどーゆーことっ!)
いや、分かっている。分かりたくないだけだ。
まさに侍女です。メイドなんです。そう言わんばかりのデザインで出来た服ながら、見る人が見れば、それこそ小物にしか使えないような高価な染料を惜しげもなく使った服だと分かるらしい。へたなドレスよりも高いのだと、そう教えられた時には、床に手をついて嘆きたくなったぐらいだ。
(ああ。ファルード、ロムルス。どうして私を置いてったの)
それも分かっている。どうせこの王子様の差し金なのだ。
テルノスはエスリーダ王国の一部だ。王子の意向は全てにおいて優先されたに違いない。
せめてこの場にファルードがいてくれれば。彼なら、にっこりと微笑みながらライジードを窘めてくれただろうに。いや、ジルードでもいい。ジルードならスッパーンと二つ割りにするが如き潔さで、ライジードをぐうの音も出ないようにしてくれただろう。ロムルスは、・・・駄目だ。可愛がってもらえて良かったなとか、そんな的外れなことを言い出しかねない。
「お茶も飲んだら、歯磨きをしようね。それから、少しお昼寝をするといい。目が覚めたらお勉強をみてあげる」
「・・・普通、王子様がメイドのお勉強をみることはしないと思います」
「何事も復習は大事だからね。レイラは私の復習に付き合ってるだけだよ」
ああ言えばこう言う。
レイラは本気で泣きたくなった。
(この国、こんな王子様で大丈夫なんだろーか)
その内、自分は王子に道を誤らせた妖婦などと言われてしまうのではないか。
レイラのお昼寝用には、まさにホームウェアといった感じで可愛らしいウェストのないワンピースが用意されている。そのまま眠っていても、起き上がって歩いていても大丈夫なデザインだ。
この王子様の熱意は、普通とあまりに違う方向へ向いていると思う。断言してもいい。
「ほら、眠くなったんだろう? 少し、目が閉じかけてる。歯を磨いてからちゃんと横になるといい、レイラ」
「うん」
欠伸をしながら、レイラは頷いた。
「さあ、お嬢様。歯を磨きに行きましょう。今日のお昼寝は水色の水玉模様になさいますか? それとも黄緑色のチェック模様になさいます?」
「・・・何でもいいです」
心得たように侍女達が近づいてきて、レイラを水場へと連れて行く。そして、メイド服を脱がせてから、お昼寝用のワンピースを着せてくるのだ。
(この人達、本来はジードのお世話係だと思うんだけど・・・)
普通はこんな子供がぽっと現れてライジードを独占していたらムッとするものではないのだろうか。しかも、当の王子様は昼夜を問わずレイラを傍に置いている。王城までレイラを連れて行く始末だ。
(気に入らないに決まってるよね。それでもそんな様子を全く見せないところがプロすぎて泣ける。さすがはお城で働く侍女だけはある)
こんな子供を傍に置いていて、ライジードにしても陰口を叩かれないわけがない。
それでもライジードは優しい。レイラを傍から離さないのは、その安全の為だ。何があろうと、ライジードはレイラを守る気でいる。
(スズちゃん。早く戻ってこないかな)
だけどあの小鳥が戻って来れば、レイラも安全だ。ライジードは、このお城でいきなり死んだ人が出たからと警戒しているが、レイラは知っている。
あの薄い刃で急所を切り裂いたかのような傷。ライジードは、レイラに見せないよう、すぐに目を覆ってきたけれど、レイラはばっちり見てしまった。
この城の人達は何らかの仲間割れがあったのだろうとみて、調べているようだ。
ましてや死んでいたのがライジードの部屋周辺とあっては。
(やっと襲ってくる人もいなくなったから、スズちゃんをザイの所に送ったんだけど)
妖婦どころか、レイラが来てからそんな特異な殺人が起きているというので、死神と呼ばれていたりするかもしれない。ちゃんとレイラにはアリバイがあるけれど。
それもそれでちょっと悲しいと思いながら、レイラは自分のお昼寝用長椅子に行ってぽてっと寝転んだ。既にレイラ用の可愛い上掛けが用意されている。
「おやすみ、レイラ」
「おやすみなさい、ジード」
ねえ。それでもライジード。あなたは守ろうとしてくれているんだろうけど。
(私があなたを守るのよ、ジード。スズちゃんは私だけじゃなくあなたも守るわ。だって、あの子には私がメインマスターとして登録されているけど、ユーザーとして他にも登録できるようになっていたもの)
だからライジードを真っ先に登録した。そしてあの小鳥はザイも登録したことだろう。
そう、自分はいつだって優先できる。彼らとそれ以外との間に差をつけられるのだ。
ライジードが殺されたり危害を与えられたりするぐらいなら、幾らでも暗殺者を処分するように命じられる。
あの時、凶器を手に持ってライジードを襲うべくスタンバイしていた人を見かけ、小鳥に命じたことを後悔などしていない。・・・いきなり廊下で人が死んでいるのを見つけた人は、怖い思いをしただろうけど。
(もっと早く分かっていたなら、ファルードとロムルスも登録しておいたのに)
そう思いながら、レイラは目を閉じた。
ああ、どんどんお腹の贅肉が・・・・・・クゥ。
エスリーダ王国。
その王城には国王と、王太子以外の王族が暮らしている。
「何とも、これはどうしたものかな」
国王が苦笑すれば、宰相も戸惑いがちにレンダーへと視線を流す。レンダーは下を向きながら、第三王子に心の中で苦情を申し立てていた。
「レンダー。お前がライジード様と戻って来て以来だ。何も聞いていない筈がないだろう」
「・・・申し訳ございません。何も聞いておりません」
隠しているわけではない。本当に聞いていないのだ。
レンダーだって、ライジードが何かを考えているというのであれば是非聞きたかった。
なのに、あの王子が自分に命じたのは、紫色の髪をした可愛い女の子の衣装を先に仕立てておけとか、その子が喜びそうな可愛い家具を用意させておけとか、子供が喜びそうなお菓子作りのレパートリーを増やさせておけとか、国の守りを薄くすることなく動かせる兵力はどれくらいかを早急に調べさせろとか、ライジードの直轄領に早馬を飛ばせとか、すぐに動かせる金が幾らで、残しておかねばならぬ金が幾らかを試算しろとか、そういうことばかりだったのだ。
(聞いてない。こんなこと、聞いてない。ライジード様、あなた、本気でどうしちゃったんです)
今まで少し年上の令嬢とばかりいい雰囲気になっていた癖に、いきなりの年下趣味への変更路線にも驚いたが、そこまでは血迷ったものと思って、いずれは冷めるだろうと、テルノス領で頷き合った。
そこまではいい。いや、良くはないが、諦めるしかない。
だが、まさかあのライジードが・・・。
「離宮で殺されていた、最後の者の調べが先程届いた。やはり彼女も、きちんと身元が保証されていた筈なのに、実はそうではなかったという共通点が見つかったそうだ。そう、彼らは身元を偽って入りこんでいた。それも巧妙に。時には実在する人物とすり替わってまで」
宰相が、確認するようにゆっくりと言う。
下を向いているレンダーの頬も引き攣るというものである。
「これはこっそりと使用人達の素性をとことん調べたか、もしくはこちらの知らぬ護衛をつけたとしか思えない。なのに、そんな形跡が全く残っていない。いくら何でもそこまで素性を洗い直したなら、その聞きこみや調査の跡が残っていない筈もないのに。しかも離宮に、そんな私的な護衛がついている様子は全くないとのこと」
そんなこと知るかと、心の底からレンダーは言いたい。
自分だって無関係なのだ。何も聞かされていないのだ。それでどんなことを言えるというのだ。
「あの、宰相閣下。何度も申し上げておりますが、私は本当に何も聞いておりません。それはもう、ライジード様にお尋ねになるのが一番確実かと存じます」
「何度も言っているが、ライジード殿下は『私は何も知りません。いきなり私の部屋で人が殺されていたのですから。本当に恐ろしいことです』の一点張りだ。殿下が誤魔化すのであれば、レンダー、お前から聞くしかない」
あの嘘つき王子のおかげで、自分はとんだ大迷惑だ。
何が恐ろしいことです、だ。本当に恐ろしいと思っている人間は、殺人があった部屋で、平気で暮らすようなことはしない。そりゃ、あの部屋が一番、警備上でも安全だからよそには移れないという事情があるにしても。
レンダーとしては、毎回、新しい事実が分かる度にこうして責められるのだ。いいかげんにしてもらいたいと思う。
分かっていることがあるなら、王子が話せばいいのだ。そうすれば皆が納得する。
「おかげで、あの可愛らしい子供のことも、誰もが何も言えぬ有り様だ。どんな裏があるのかと皆が警戒しておる」
国王がクックと、どうしても漏れる笑いと共に嘆いてみせる。いや、それも形だけだろう。
そう、国王は誇らしくてならないのだ。自分の息子が。
宰相とレンダーにもそれは分かっていた。
テルノス領に行き、本来はリベラ神国の神官をその目で見てくるという社会見学だけしてくる筈だった若き王子。
だが、何ということだろう。
よりによってライジードは、あくまで子供達の友情に見せかけて、本来は次の宰相になるかもしれない、しかももしかしたら帝国の皇帝になることもあり得るかもしれない存在、ロムルスと内々に手を結んでしまった。
更に養子ということが判明したとはいえ、ファルードはそれでも次の大神官と目された若きイディラートのたった一人の息子である。
そもそも並み居る人々を押しのけて、若いイディラートがそこまで抜擢され続けていたのは、異例のことだったという。しかも何か失脚したわけでもないのに、ルーセット神殿配属となった。しかもルーセット神殿はイディラートが取り仕切るようになったからなのか、今ではリベラ女神の恩寵深き土地とまで呼ばれているとか。こうなると本当に次の大神官はあり得る話だ。そして結婚していないイディラートがわざわざ養子に迎えた美貌の少年は、その身分を明らかにしないままで帝国のハイアレティ公爵家嫡子のロムルス、ギネス伯爵家令嬢のジルドレアと強固な友情を結んでいたという。
こうなると、それを見越してイディラートはファルードをリーング地方に行かせていたとしか思えないではないか。となれば、既にリベラ神国は動いている筈だ。
あまりにも大きな決断を、たかが十六才の少年三人がしてみせた。そう、若き友情という名のもとに。
「レイラお嬢様のことは、・・・お早く戻して差し上げねばと思っているのですが、未だライジード様にはレイラ様をお可愛がりになるお気持ちが薄れることなくおいででして。どうぞ陛下からも、再度ライジード様をお叱りくださいますようお願い申し上げます」
レンダーも、そこもまた頭が痛い。
ファルードには辺境伯夫人が気に入ってなどと、適当な嘘をついて誤魔化したものの、いずれファルードの実家がどこなのかは知らないが、あまりにも帰りが遅いと、ファルードから問い合わせが入ることだろう。
その時、何と答えればいいのか。
ファルード本人は、
「私は平民でございますから」
などと謙遜していたが、
(だっれっがっ、次の大神官予定者の一人息子が本気で平民になれると思ってんだっ)
である。
イディラートが大神官になろうものなら、それこそ養父がリベラ神国の頂点に立つのである。養子とはいえ、その一人息子であるファルードは王子にも等しい立場になるではないか。
そんな人間の実妹を、どうしてそこらの使用人扱いできるというのか。いや、イディラートが大神官にならないでいてくれるならいいのだ。しかし、あの国のことは本気で他国の人間には分からない。
リベラ女神を崇めるあの国は、独自のルールで動いている。
レンダーは、国王ばかりか、レンダーの母である正妃にも、そして宰相にも、果ては離宮の女官長にも、レイラを手放すようライジードを諌めてくれと頼んでいるが、その労力は無駄に終わり続けていた。
「だがなぁ。なかなか美しい子供ではないか。兄もまたそっくりな顔をしていると言うなら、さぞ眼福だったことだろうに」
「は。それはそうでございますが。・・・ファルード様とレイラ様が一緒に踊っていた時など、会場の隅っこでありながら、皆が踊るのを止めて見入っていたぐらいでございます」
「おやおや。陛下も、ご自身が見に行きたかったと言わんばかりでございますな」
国王の言葉にレンダーが首肯してみせると、宰相も苦笑する。
「ああ。あれ程に荒んだ目になっていたライジードが、あんなにも吹っ切って帰ってきたのだ。しかも生き生きとして自領へ指示を飛ばし、既に帝国へ向かわせる兵力を国境近くまで向かわせておる。・・・あれ程一気に羽化するのだから、子供の成長だけは括目して見ずにはいられない。しかも、だ」
国王は面白そうな顔になってレンダーを見遣った。
「あの子供にしても、今となればその三ヶ国の若き世代とそれぞれにあそこまで深く繋がっておる。ヘタな大使よりも遥かに優秀だろうよ。ましてや、ライジードがあんな衣装を着せているとなればな」
深く美しい臙脂色を出す、あの染料はとても貴重な物だ。だから様々な国で貴族や王族の持つ小物や衣装の布を染めるのに使われている。それをあんなにもふんだんに使った侍女服を着ているレイラは、宮廷中の注目の的だ。
他国から来た人間ですら、「あれがエスリーダ・レッドですか」と、興味深く眺めていく。可愛らしい子供が着ていることもあって、見事な宣伝塔だ。
これがエスリーダの王女であれば、王太子お気に入りの姉妹として嫁入り先も考慮されることになったのだろう。また、貴族令嬢であれば、やはり王太子の妃候補として注目されたに違いない。
なのに、レイラはエスリーダ王国とは無縁の存在だ。
しかも王族どころか貴族でもないというので、誰もが馬鹿にしたくなる存在ではあるが、今回の王子の大きな成果に繋がったファルードの実妹ときた。
どう転ぶか分からぬ存在だけに、誰もが手を出せないのだ。
取るに足りぬ存在なのか、それとも大きな意味を持つ存在なのか。
そんな王城の人々の困惑をあざ笑うかのように、ライジード王子は彼女を溺愛してみせる。
「全くでございますな。あんな人々を惑わすようなやり方、どうやって学んでいらしたのか。あれ程に挑発されても、あのお嬢さんの実家はこの国になく、おかげで圧力もかけられぬときたものです。かなり歯噛みしている貴族が多いようで」
「であろうな。かと言って、リベラ神国に何らかの思惑を匂わせようにも、兄である少年は養子という。ならば大神殿の誰に何を言ったところで、全く影響しないどころか、何か言おうものなら馬鹿にされるだけのこと。養子など実子と違っていつでも破棄できる関係なのだから」
宰相の言葉に国王も頷く。
だから、実家を使ってレイラに圧力をかけることすら出来ないのだ。
しかしレンダーは知っている。あの王子がそんな深謀遠慮の結果、レイラを可愛がっているわけではないということを。
あれはストレートにレイラを気に入っているだけだ。
デモンストレーションでも何でもなく。本気で。真剣に。
(ああ、今までの殿下が殿下すぎて、陛下も宰相閣下も、本気で殿下があのお嬢さんに溺れているだなんて信じておられないのだ。どうすればいいのだろう・・・)
そこまで信用のある第三王子が悩ましい。いいや、自分だって出来ることなら離れたところでそんな呑気な台詞を吐いてみたかった。
そんな注目されているお嬢様は、メイドさんとは名ばかりの、離宮の人間全てがライジードの守護天使と言わんばかりに可愛がっている最中だ。
何と言っても、今までいつの間にか部屋に仕掛けられていた罠や、時折やってきていた刺客。それらは護衛兵や、様々な使用人を監視している女官により阻止されたことも多いが、どうしても漏れがあった。
なのにレイラが来てから、そんな暗殺者が次々と不可解な死を遂げている。
離宮の侍従長など、レイラを案じたファルードがリベラ神国の手練れをこっそりとつけているのではないかと、そう疑っているらしい。忍び込める人間などいなかった筈の場所で、暗殺者達は殺されていたのだから。そんな不思議な技を持っていると言うのなら、あの神国ぐらいではないのか、と。
そう、その手練れがレイラを守ることが、結果としてライジードを守っているのではないかと、彼らは疑っている。
おかげで今や、レイラは離宮におけるリベラ女神の子ども神といった様相を呈しているではないか。
(いや、落ち着いてよく考えてくれ。そんな手練れがいたら、ファルード殿はフェイ・ゲオランドの名を使う必要はなかっただろうが)
レンダーはもう、しっちゃかめっちゃかになっているこの状況が、心の底から嫌だ。
どうしてそんな暗殺者達が殺されているのか分からないが、ライジードのあれは、ただの色ボケだ。それも年端もいかないお子様に対する・・・。
ああ。なのにどうして。
あの王子様は、それすらあの甘いマスクのおかげで、誰からも責められないのだろう。
これがむくつけき青年が同じことをやったら、変態と呼ばれるだけなのに。男の自分から見れば、ライジードは紛れもない変態だ。
な・の・に。
見かけがお砂糖のように甘いライジードが、レイラに綺麗な服を着せて可愛がっていても、
「なんて微笑ましいんでしょう」「ああしていると可愛らしいですわね」
である。同じことをライジードの兄がやった日には、
「あんな小さい子供を。なんてことでしょう」「恥知らずですわね」
と、一気に陰口が叩かれることだろうに。
女という生き物はどうして顔で判断するのだろうか。
レンダーは溜め息をついた。
肝心の王子様は休日とあって、今日は離宮でお過ごしの筈である。
(どうせ、あのお嬢さんとまたウフッ、テヘッとかやりながら、花園でダンスでもしてるんだろうよ)
その予想は少し外れていて、すやすやとお昼寝中のレイラの為に、ライジードは目覚めたら楽しめるようにと、庭師に相談しながら香り高い花を選んで摘んでいた。付き従っている侍女達も、自室に飾ればいいよと分けてもらって嬉しそうである。
レイラが来てから、ライジードはレイラのついでに侍女達にもそういう優しさを振りまく回数が増えた。子供というのはそれだけで、「可愛い」と言ってもらえる存在なので、彼女を連れ歩いているだけで令嬢避けにもなってレイラさまさまなライジードだ。機嫌も良くなるというものである。
庭師もやりがいがあるのか、最近、離宮の庭園は一層見事になったと評判がいい。
(花瓶にも活けておいてあげるが、その花を顔に近づけてあげれば、甘い香りでレイラも目覚めることができるだろう。あの子は、お花畑にいるみたーいとか、そんなことを言って喜ぶからな)
そんな、聞いたら誰もが胸焼けを起こして砂を吐きそうになることを、本気で考えながら。そして本当に実行する為、ライジード王子は花を摘むのだ。
リベラ神国ルーセット神殿。
若き神官長イディラートを頂点とする、地方の大神殿である。
焦げ茶色の巻き毛も艶めく長髪を腰まで垂らしたまま、イディラートは中庭の木の枝に腰掛けていた。
それを見れば帰ってきたのだと、そう思える。常に変わらぬその在り方が、人々の心を落ち着かせる。
だからファルードは、旅装も解かずにイディラートの元へと直行したのだ。
「ただ今戻りました、イディラート様。この度は何の相談もせず勝手に出奔いたしましたこと、それにもかかわらず私への多大なご配慮をいただきましたこと、心よりお礼申し上げます」
視線だけで帰還を喜んでくれていると分かる緑の瞳に勇気づけられ、ファルードはその前まで行って、片膝をついて挨拶をした。
「よく帰った、ファルード。大神殿にも連れて行かれたのだろう? で、どうであった?」
「・・・・・・笑い者にされました」
「であろうな」
テルノスからルーセットに直行するつもりだったファルードだが、リベラ神国内に入った途端、大神殿からの伝言が寄越され、連れて行かれたのだ。
「あ、あの・・・! 私は、急いでイディラート様に・・・っ」
「大丈夫ですよ。ちゃんと分かっていますから。さあ、皆様がお待ちです」
下級神官であるファルードは、中級神官に対して反論できる権限を全く持たなかった。
そして大神殿に着けば、懐かしい顔の面々に取り囲まれ、
「おいおい、ファルード。お前、色仕掛けで乗り切ってたって? お盛んだったそうじゃないか」
と、ウケケッと肩をバンバン叩かれたりとか、
「ふふふふふ。あんなにも薬の使用を嫌がっていたあなたが、成長したものですね」
と、意味ありげに含み笑いをされたりとか、
「なっさけねえなぁ。あそこで頑張るのなら、最初っから自分の指導神官も誑しこみゃあ良かっただけだろうがよ」
と、しっかりレルネーゼのことがバレていたりとか、
「いやいや。よく頑張っていたそうですね。ちゃんと皆に優しさを忘れずに対応できたのは素晴らしいことですよ」
と、その優しさが全てを知っていることを物語っていたりとか、どこまで自分のプライベートが公開されているのかという状況に、ファルードは撃沈させられた。
自分がイディラートに保護された時から知っている年長者、しかも自分の恩師にもあたるような立場の人達に、誰にも知られていないつもりでいたことが知られているという事実がどれ程の羞恥を呼び起こすものか、それは分かる人にしか分からないに違いない。
おかげで、帝国のロムルスに対する協力もスムーズにお願いできてしまったのだが、何ともこうなってみると・・・。
「イディラート様。今回のこれは、・・・どこから大神殿の方々の掌の上で、私は踊らされていたのでしょう?」
「ふふ、・・・さてな」
面白そうに意味ありげな微笑を浮かべている養父だが、考えてみればこの人が知らない筈がなかったのかもしれない。
いや、大神殿に逐一の連絡がされていたというのであれば・・・・・・。
「イディラート様」
「何だ?」
ファルードは深く頭を下げた。
「ありがとうございました」
返事はなかった。けれども、そういうことなのだろう。
ああ、そうだ。出会った時から、この人が自分を常に助けてくれていたのだと、ファルードは思う。
あの日、攫われた先で出会った時からマイペースだった不思議な青年。
けれども彼が、全てを自分に与えてくれたのだ。
「ファルード」
「はい」
「・・・今回の旅は、お前にとって良いものだったか?」
ファルードは、すぐに是と答えようとして、それでもちゃんと考えてから答えようと頭の中で振り返る。
あの夜、一人、抜け出そうとして、レイラに捕まった。
レイラとの旅と、再会した母と、父の墓と。
ロムルスとの出会いと、帝国軍での従者生活。
ジルードやローズ、様々な人々との関係。
テルノスへの道行、フィーリエの打算、第二軍の思惑。
そうしてテルノス辺境伯、そしてライジードと出会った。
「うまく、言えませんが」
少し唇を舐めるようにして、ファルードは言葉を絞り出した。
「多分、行かなくても神官としては問題なく暮らせていたのだろうと思います。私が無断で抜け出したことは、決して良いことではありませんでした。それについての処罰は受けます。ですが」
そうだ。それでも自分は・・・。
ファルードは顔を上げ、イディラートの緑の瞳をまっすぐに見た。
「後悔はしておりません。それこそ不思議な運命の巡りあわせがあったのだと、・・・いえ、自惚れだと言われたらそれまでですが、自分はそう感じております」
少し瞼を上げたかと思うと、イディラートが嬉しそうに破顔した。
「そうか。・・・良かったな、ファルード」
「・・・はいっ」
ああ、そうだ。
やはり彼は知っていたのだ。ファルードの旅を。
ファルードが送っていた手紙とは別に、きっと全てを。
歩み寄ってきたイディラートの腕が、ファルードの体を包む。
「よく帰った、我が息子よ」
「・・・・・・嬉しいですが、反論させていただくのでしたら、誰がどう見てもせいぜい兄ではないかと思うのです。イディラート様」
イディラートと自分は、親子を名乗るには厳しすぎる年の近さだ。
それでもファルードはイディラートの胸に顔を埋め、自分の腕を彼の背中に伸ばす。
この中庭なら他の人に見られないと知っていたから。
ファルードは、自分がイディラートの息子であることはまだ皆にバレていないと、そう思い込んでいた。
メイドの朝は早い。
まず、
「起きてくださいませ、お嬢様」
と、声を掛けられて、眠い目を擦りながら起きれば、隣の部屋に連れて行かれ、
「今日はこちらのリボンを結びましょう」
とか、
「今日はこんなスカートにしてみましょうか」
などと言われて、洋服が着せられる。
自分でやると言いたいところだが、寝ぼけている間に、さっさと着付けられてしまう。彼女達の手際はプロだ。しかも髪も綺麗にセットされてしまう。
顔を洗って歯磨きをする頃には、目も冴えてきているが、それからレイラのお仕事が始まるのだ。
「さ、お嬢様。これがお目覚めの紅茶でございます」
「後はよろしくお願いいたします」
「はあ。・・・ここまでしてもらったなら、皆さんに起こしてもらった方が早いのではないかと思うのですが」
そんなレイラの反論は、常になかったことにされる。
二人分の紅茶がセットされた車輪付きの台をレイラは押して寝室に戻る。そうして、まだ寝ている王子様を起こすのだ。
「起きてっ。ジード、起きてっ」
「うーん。あと少し。レイラも一緒に、ね?」
「いやぁーんっ」
ばたばた暴れても、ライジードは全く気にしない。
自分の寝台にレイラを引き摺りこんで二度寝しようとするものだから、いつもレイラは頑張って手足を振り回して抵抗する羽目になるのだ。
「寝ちゃ駄目っ、ジードったらぁっ!」
「・・・しょうがないなぁ。じゃあ、おはようのキス」
「ちっがーうっ」
絶対に違う。侍女のお仕事におはようのキスはない筈だ。
レイラはそう信じているが、気にせず頬にライジードはキスしてくる。その内、事故を装って唇にしかねないとレイラは踏んでいた。いや、どさくさに紛れて唇に掠らせてくるのだ、この王子様は。いつもいつも。
「ああ、暴れちゃ駄目だよ、レイラ。ほら、せっかくの紅茶が零れちゃうだろう?」
なのに、諸悪の根源である王子様はそんなことをぬけぬけと言い、腕の中にいるレイラに、台の上にある紅茶のカップを渡してくる。
(あんたが普通に起きてくれればいいだけだっつーのっ)
それでも、こうして一緒に紅茶を飲むひとときは好きだ。
少し肌蹴た夜着から覗く、ライジードの鎖骨はかなり色っぽい。あと少ししたら、かなり男としての色気も出てくるだろう。
そう思えば、レイラもそんな彼の腕の中で紅茶のカップを両手で持ちながら飲む時間を堪能できる。
そうしてお目覚めの紅茶タイムが終わったら、用意されている洋服に着替えるのをレイラが手伝うことになっている。
(てか、どう考えても手伝いなんて必要ない。いや、手伝う方が邪魔になってる)
だが、この王子様と離宮の仲間達は、揃ってレイラに、
「え? それこそお仕事だろう?」
「それは侍女の大事なお仕事でございますよ、お嬢様」
などと、そう主張するのだ。
全員対一人。多数決的に負けるのはレイラ一人だ。そう、いつもいつも。
だから寝台の上で、ライジードの服のボタンを一つ一つレイラは外していく。
「ふふふ。段々、レイラも男の服を脱がせるのが上手になったね」
「・・・っ!!! いかがわしい言い方をするなぁっ!!」
あまりにもライジードが恥ずかしい言い方をするので、泣いて飛び出した日には皆が慰めてくれたけど、あまりにも方向性が違い過ぎた。
「大丈夫ですわ。お嬢様があまりにお上手すぎたのです」
「そうです。お嬢様はいつだってナンバーワンですわ。だから王子様もメロメロなのです」
「ええ。恥ずかしがらなくても、ちゃんとその内に殿方の裸にも慣れますわ。ね、お嬢様」
「・・・・・・」
誰がそんな慰め方で浮上できると思うのだろう。
今となっては、ライジードを怒鳴りつけながら淡々と仕事をこなした方が、まだ自分のダメージが少ないと学んでしまったレイラだ。
(ああ。誰か、この離宮におけるメイドさんの待遇を、まっとうなものにしてください)
やはりここは直訴だろうか? 国王にお願いすればどうにかなるのか?
寝台の上で、男の上に跨りながら服を脱がせる自分。
(くうぅっ。泣けるっ。どうして嫁入り前の私が・・・っ)
以前、急用とかでこの寝室まで朝から入ってきたレンダーが、それを目撃して以来、かなりレイラに対して優しくなった。
そう、彼には分かっているのだろう。それら全てがレイラの意思ではなく、ライジードがさせていることだと。
「絶対、違う。これ、絶対にメイドさんのお仕事じゃない」
「そんなことないよ。女官長だって、レイラのお仕事だって言ってただろう? ちゃんと年長者の言うことは信じなくちゃ」
信じられない年長者の筆頭が目の前にいるんですが?
「もう、お嫁に行けない」
ザイとも頬や額のキス止まりだというのに、どうして自分は既にこんなにもライジードの裸に馴染んでいるのだろう。
「大丈夫。もう、ここでお嫁さんになればいいから」
「・・・・・・・・・」
このエスリーダ王国は、帝国程ではないけれど、かなりの大国らしい。
お妃様なんて、王族もしくは高位貴族出身が当たり前だとか。
(私、平民なんですけど)
とりあえず、王城の庭で遊んでいた時に、偉そうな男の人に話しかけられて、
「欲しい物はあるかな、可愛いお嬢さん?」
と、尋ねられて、正直に答えてしまった自分は悪くないだろう。
「離宮用セクシュアル・ハラスメント相談窓口の設置を」
と。
面食らったかのようなその男性は、次の瞬間、大爆笑していた。
その男性の頭には、なかなか素晴らしい冠が輝いていたけれど。
そしてその顔は、ライジードにどこか似ていたけれど。
呼びに来た侍従が、陛下と呼んでいたけれど。
なのに、何故なのだろう。
未だに、エスリーダ王国のお城に、セクハラ相談窓口は設置されていない。
ねえ、陛下。私はずっとそれを待ってる・・・・・・。




