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何かを早まった気がした

「明日、か」

 新しく着いた村。勇者達は魔物の討伐に出かけた。

 そして魔王はまたもお留守番だ。

 二つのベッドがある部屋の一つに腰掛けている。

 昨日は満月は異常だった。

 あれ程に体がざわめき意識を失うことなどこれまで一度も無かった。

 勇者の中の光の神の影響か?。

 確かに光の神の呪いを正常化した。それによって、魔族の殺意の衝動は無くなった。

 けれどこれはたちが悪い。

 それとも、魔王が勇者の事を好き過ぎるからこれ程の影響が出ているのだろうか。

「父様に聞いておけば良かった」

 満月の夜は、光の神を倒して以来、いつもアクセルさんと父様は部屋に閉じこもってしまう。

 だから中で何をしているのか、どうなっているのか分からない。

 ぼんやりと魔王は開かれた窓の外を見る。

 鮮やかな緑の木々が風で揺れている。

 その風はどこかで花が咲いているのだろう、甘い香りと花弁を魔王の元へと運んでくる。

「白い花弁」

 何者にも汚される事の無い白。

 けれど白い色は魔王はあまり好きではなかった。

 あまりにも穢れの無い白は、全ての想いすらも苛烈に消し去ってしまいそうだから。

 だから全てを包み込み、光すらも飲み込む闇こそが魔王の理想だった。

「ほしいな……」

 無意識の内につぶやいた言葉にはっとなる。

 満月の夜が過ぎたのに、体の芯に熱が灯っている。

 触れたい。触れられたい。一緒にいたい。ずっと。

 ころんとベッドに転がって顔を埋める。魔王の顔がほんのり赤みを帯びている。

「予想以上に、我は参ってる」

 口に出すと余計に自覚する。

 勇者が好き過ぎる。

 その行為が前は怖くて仕方が無かったのに、今はまるで自分からねだってしまいそうだった。

 けれどその反面、一度触れてしまえば止まれる自信が無い。

 明日、魔王である事がバレる。

 バレたら勇者に迷惑がかかる。

 そんな状況では魔王自身がずっと勇者とはいられないだろう。

 頭が痛かった。

 どのような状況でバレるのか、あのクリストファとやらは教えてくれなかった。

「料金は体で払ってくださいね☆」

「誰が払うか!」

 魔王は思い出して、げんなりした。あいつとは二度と関わりあいたくない。

 もう一度窓の外を見て、ため息をつく。

 温かみを帯びた風が魔王の髪を揺らし、光の中で鮮やかに輝く。

 物憂げな表情で魔王は髪をかきあげる。 

 そう、今日が勇者と確実に一緒に旅を出来る最後の日。

「ほしいな……」

 気持ちの良い風と日差しに、うとうとと睡魔が襲う。

 もう一度、ほしいな、と呟いて魔王は眠りについたのだった。


「うわー、魔王様また寝ていますね。もうこれは寝込みを襲っても良いレべルですよ、勇者様」

 安心しきった子供のような可愛らしい寝顔で魔王は眠っている。

 もう少し警戒してもいいが、この無防備さはもう犯罪に近いと勇者は思う。けれど、

「……ちょっと心が揺れたが、さすがにそれは……」

「いや、もう両想いですから」

「機会を逃すとずっと出来ませんよ!」

「むしろ魔王様も襲ってもらえるのを待っているのかもしれません」

「男なら、思い切ってするのも大切です!」

 それでも勇者は決心がつかず、魔王の髪に触れる。

 その刺激に気づいたのか、魔王が小さく目を開ける。

「勇者?」

「ああ」

 髪に触れた勇者の手に、魔王は手を延ばして触れる。

「……ほしい」

 甘く囁くように魔王が呟く。

「これはもう、襲ってくださいということですね。皆、撤収だ!」

「「「おう!」」」

 仲間が一斉に部屋から出て行く。

 そこそこ大きな音を立てていたのに、魔王はぼんやりとしたままで覚醒する気配が無い。

 ゆっくりと勇者は顔を近づけてキスをする。

「んん……んっ」

 魔王にいつものような躊躇が無い。

 それどころか自分から求めるように舌を絡めてくる。

 キスの仕方を教えたのは勇者だ。

 それを反芻するかのように、魔王の舌が触れて唾液の混ざる音がする。

 初めて心も繋がったような錯覚を勇者は覚える。

 名残惜しそうに唇を離すと、目に涙が溜まりうっすらと上気した魔王の気持ちよさそうな表情が目に入る。

 それが嬉しくて、そっと首筋にキスを落として舌でなぞる。

 小さくうめいて、魔王の体がビクンと快感に震える。

 衣類に手をかける。上着を左右に開き、肩まで露にする。

 本当に曇りの無い美しい肌だった。その中に膨らんでいる二つの桜色の突起に指で摘んだ。

 そこで初めて、魔王は正気に戻ったようだった。

「ゆ、勇者よ、いったい何を」

「……」

 焦ったように、問いかける魔王。聞くまでも無く何をされているのかは魔王も分かる。

 ただ、気づいた時にそういうことになって驚いただけで。

 勇者はそんな魔王の様子を見て、無言で魔王の開かれたシャツを閉じて手を離した。

「……謝らないから」

 微笑む勇者はそう言ってその場から去ろうとする。

 無意識のうちに、魔王は手を伸ばして勇者の服を掴んでいた。

 勇者が驚いて振り返る。

 手を伸ばした魔王自身もその事に驚いていた。

 うつむく魔王に、勇者は諭すように話しかける。

「……手を離してくれないか?」

「……」

「そうしないと俺は動けない」

「……」

「黙っていたら何も分からないぞ?」

「……ない」

 声が小さ過ぎて勇者は聞き取れない。

 待っていると、怒ったように魔王が勇者を見上げた。

「我は嫌ではない、と言っているのだ!」

 次の瞬間、魔王は強い力だ押し倒されて、キスをされる。

 まるで喰らうかのように舌が入れられ、吸われ、魔王は全てを奪われてしまうような気さえした。

 あまりの苛烈さに体が自然と逃げに走るも、腕を押さえつけられて顔の横に固定される。

「んん……んんんっ」

 貪るようなキス。こんなものは、魔王は知らない。

 唇が離れて、自分の目の前にいる勇者の顔をを魔王は見た。

 舌なめずりをする捕食者の笑み。

 魔王は何かを早まったような気がした。


 魔王城にて。

「つまりルー君は“呪いの首飾り”のせいで無力になっていると。そういうことか」

「はい、そうです」

 エンドカースの質問に、四天王の一人、エルフレアがびくびくと答える。

 魔王城の一角、魔王の間。

 本来であれば当代魔王ルーズカースが座っているはずの椅子に、彼の父であるエンドカース、そして傍には恋人で元勇者のアクセルが控えていた。

「それで何故ルー君はこの魔王城を出て行ったのかな?、一番ここが安全なのに。そうだろう、四天王の諸君」

「仰るとおりです、エンドカース様」

「私は質問をしているんだよ?。何故ルー君はここを出て行かなければならなくなったのか」

「きっと外の空気を吸いたかったのではないかと」

「……触手送りにされたいか?」

 かといって、四天王は襲おうと思っていましたなどと言えない。

 真っ青になりながら震えている四人にアクセルが助け舟を出した。

「それで、ルー君が今何処にいるのか分かっているのかい?」

「……ええ、彼は現勇者と共に行動を……」

 その瞬間、部屋の空気がすうっと下がった。

「ルー君が現勇者と行動?」

「は、はい」

 エンドカースはアクセルと顔を見合わせた。そして、

「今すぐ連れ戻して来い」

「へ、え、でも勇者が強くて……」

「連れ戻して来い」

「……はい」

 四天王は従順に頷いた。

 エンドカースはふうとため息をつく。

「現勇者は、光の神の生まれ変わりだ」

「それは、まことですか?」

「あんな奴に可愛いルー君を渡すものか!」

 四天王は、ルーズカースが勇者の事をものすごく愛しまくっている事を、空気を読んで言わなかった。

 それに、四天王も光の神は嫌いである。

 さらに、この四人はいまだにルーズカースの事を諦め切れていないので、勇者の事も嫌いである。

 そこで、アクセルが、エンドカースにとう。と

「ところで、“呪いの首飾り”の呪はどうやって解くんだ?」

「あれを作ったのは私だ。ゆえに解き方も知っている」

 あっさりとエンドカースが答える。

「……何でそんなものを作ったんだ?」

「いや、アクセルに使おうと思って……ではなく、えっと」

「エンドカース、もう一度言ってもらっても良いかな?」

「いや、あれは物理的な衝撃に弱いという欠点が……」

「エンドカース、今夜はお仕置きだな」

 にやりと笑うアクセルに、エンドカースの顔が蒼白となる。

 その珍しい光景を、面白いなー、と四天王は見ていたのだった。


 朝起きて勇者の寝顔が可愛かったので、頬をぷにぷにしていたら襲われたでござる。

 魔王は自分が悪いのは分かっている。

 けれど昨日散々やっといて、次の朝もというとどれだけ……。

 もたない。

 どう考えても体力的に、勇者のそれに付き合えない。

 どうしよう。

「は、そうか、我の力が戻った時に、この首飾りと同じものを勇者に……」

「ほう、面白い話だな」

「!、いつの間に」

「……タオルと水を取りに行っていたんだ。それより、今の発言はどういう事か説明してもらえるか?」

 魔王は毛布で自分の体を防備した。

 しかしすぐに勇者に取り上げられてしまう。

「返せ、返すのだ」

「質問に答えたら返してやる」

「うう」

 上目づかいで魔王は勇者を睨む。少しも怖くない。

 ちなみに、魔王はしわくちゃになったシャツ一枚、それも前のボタンが全開の状態である。

 白い肌には所々、勇者の付けた痕が赤く残っている。

「やっぱり質問は答えなくて良い。体に聞く」

 勇者は魔王に襲い掛かった。

 これ以上は無理だと魔王は震える。

「やめて!、許して、我はきちんと答えますのでその手を……」

 魔王は涙目になる。

 必死に勇者を押しのけようとするも魔王の力で抵抗できたためしがない。

「……勇者の嘘つき」

 エスカレートしていくその行為の中、魔王はぼそりと呟いた。

 勇者の手の動きが止まった。

「……何が嘘つきなんだ?」

「……優しくすると言った」

「……」

「……」

「……優しくしただろ?」

「あれだけ我にやっておいてどの口が言う!」

「そうか、優しくしているのが分からなかったか」

 魔王は雲行きが怪しくなった事を敏感に察知する。

 しかし、ここで引いたら駄目な気がした。

「あんなにやっておいて、我の体が持たない!」

「そうか」

「そうだ」

 勇者はふむと考えて、

「……あれで大分手加減したんだが魔王には辛かったか」

「うむ」

「ということは、さらに激しくやって慣らす必要があるということだな?」

 悪化した。

「どうしてそうなった!」

「いや、あれぐらい慣れてもらわないと俺が満足出来ない。そういうわけで今もう一回しようか」

「やめて、むり、ムリデス、ムーリ――!」

 そこでドアが開いた。

「勇者様、外に……すむません」

 クリフが尋常ではない様子でドアを開けて、中の光景を見て瞬時に理解し、申し訳なさそうにゆっくりと扉を閉めた。

「なぜ鍵を閉めていない!」

「うん、予定ではするつもりがなかったから」

 魔王はなんだか泣きたくなった。

 勇者が名残惜しそうに魔王から離れていく。

「とりあえず、今着れそうなまともな服は、魔王が初めから着ていた服だな」

 放って寄越された服は、懐かしい香りがした。

 黒を基調とした変わったデザインの上品な服。

 魔王たる者の服。

 受け取った服を見つめて、魔王はなんとなく理解する。

 たぶん、きっと、終わりなのかもしれない。

「魔王?」

 服を受け取ったまま、見詰めていた為か勇者が声をかけてくる。

「いや、何でもない」

 ふっと、勇者を見て魔王は微笑んだ。

 そんな魔王が勇者には今にも消えてしまいそうな儚き者に見えた。

 その途端勇者は魔王を抱きしめる。

「行くな」

「!」

 力をこめて、勇者は魔王を抱きしめる力を強める。

 それに、油断したと魔王は思った。

 そんな素振りを勇者に見せてしまった事に魔王は後悔する。

「逃がさない」

 駄々をこねる子供のように勇者は繰り返す。

 先ほどまでの強さもなりを潜め、幼い子供のように思える。

 魔王も勇者に腕を回して、抱きしめた。

「今日、魔王が勇者と一緒に居る事がばれると、以前クリストファに言われていた」

「……聞いていない」

 勇者の力が強くなる。

 そこまで求められていることが、魔王には嬉しかった。だから、

「そうか……二つだけ、勇者にお願いいしても良いか」

「……何がだ」

「もしも我が魔王城に戻れそうであれば、引き止めないでほしい」

「それは……」

「勇者よ、覚えているか?。昔我が、敗者は勝者のものだと言った事を」

「……覚えている」

「だから、必ず我を奪いに来てほしい。このような関係は非常に居心地が良いが、いつまで続くはずがない。我は、魔を統べる王で、お前は人の、勇者であるのだから」

「……約束する」

「大丈夫、勇者よ、お前は強い。だから、大丈夫」

 勇者は答えなかった。

 けれど、何処か物悲しそうに魔王を腕の中から離す。

 そして躊躇するように魔王の顔に手を伸ばそうとして、止める。

 その様子に魔王は胸が痛くなる。

 何か声をかけようとしても魔王はかける言葉が見つからない。

「先に行っているから」

 そのまま勇者は部屋を出て行ってしまった。

 後に部屋に残されたのは魔王のみ。

「あ、あれ」

 ポロリと、魔王の瞳から涙が零れた。

 それが収まるまで、魔王は部屋から出る事が出来なかった。


「久しぶりだね、ルー君」

「父様……」

 外に居たのは、四天王の面々と父達のエンドカース、アクセル、そして多くの高位魔族達。

 それを遠巻きに見守る村の人々。

「迎えに来たよ。こいつ等の事は心配しないくていい」

 こいつ等と言われてびくびくする四天王。

 非常によくエンドカースに飼い慣らされている。

「それにその呪いの首飾りの呪も私が解ける」

「そう……ですか」

 嬉しい事のはずだった。なのに何故、こんなに戸惑うのだろう。

 魔王はぎゅっと自分の手を握りしめた。と、

「そうそう、君が現勇者のレンヤ君かな?」

 問いかけられた勇者は、反射的に頷いた。

 魔王に、魔王の父はとてもよく似ていた。だから、少し警戒が緩んでいたのかもしれない。

「死んでもらえるかな?」

 巨大な炎がエンドカースの手に生まれ、勇者に向けて放たれようとする。

 それを守るかのように勇者の仲間達が警戒を強めた。そこで、

「父様!、やめてください!」

 庇うように一番前出たのは魔王だった。

 その背中を、勇者は懐かしい思いで見つめた。子供の時見た、あの時と同じ強さが見えた。

「……ルー君、どきなさい」

「嫌です」

「普通の勇者であればいい。けれど、その子は違う」

「知っています」

「対峙したら、前と同じようには行かないかもしれないよ?」

「……その時は、その時です」

「なら、今殺しておいた方がいいよね?」

「勇者達は、一人で外にいた我に親切にしてくれました。だから、酷い事をしないでください」

「……それとこれとは別の話だよ?」

「現在の魔王は我です。そして勇者は魔王と戦うものです。だから、現在魔王でない父様が勇者と戦うのはおかしい!」

「……仕方ないな」

 必死の魔王に心を動かされたのか、エンドカースは手の中の炎を消した。

「命拾いしたね」

 勇者に向けて、エンドカースは言い放つ。勇者は何か言い返そうとして、微笑む魔王に制止された。

「また会おう、勇者とその仲間達よ」

 その言葉を合図に、魔王達は消えてしまった。

 呆然としばらく目の前の光景を勇者達は見つめる。

 この中で一番衝撃を受けているのは勇者だろうと、勇者の仲間達は思った。

 けれど、いつまでもここに立っているわけにはいかない。

「えっと、勇者様?」

 リオの問いかけに、勇者は黙ったまま。

 そして、ぐらりと勇者の体が揺れたかと思うと、地面に倒れこんでしまったのだった。


 久しぶりの城は、魔王には他人の家のように感じられた。

 短いとはいえあの時間は本当に幸せだった。と、

「こうやって、と」

 呪いの首飾りをアクセルが引きちぎる。体の魔力が魔王の意思に従い脈動するのが分かった。

「これでもう大丈夫なはずだけど、ルー君、何かおかしい所がある?」

「いえ、大丈夫です、父様」

「そう、ならいいけど」

「我は疲れたので、少し休んでも良いですか?」

「ああ」

 そのまま、ふらふらと歩いていく息子が完全に見えなくなって。

「……アクセル、見たか?。ルー君の首にあった赤い痕」

「キスマークだったな」

「相手は誰だと思う?」

「それは……」

 二人で四天王の方を見た。

 彼らはこそこそと部屋から逃げ出す所だった。

「触手の能力を上げる魔法を手に入れたんだが、どうする?」

「お、お許しを、エンドカース様」

 悲鳴を上げる四天王の面々。

「だったら、ルー君のことで話していない事があるだろう?、私に」

「……ルーズカース様は、現勇者レンヤの事が好きです」

「やっぱりか」

 うんざりしたようにエンドカースが溜息をついた。

「よりにもよって何であいつなんだ?」

「光の神は隠すのが上手い。だからルー君も気付かなかったんじゃないか」

 アクセルが、頭が痛くなったように答えた。

 そして、アクセルもエンドカースも、光の神の気配をついぞ見つけることは出来ず、推測で探していてレンヤへと辿り着いたのだ。

 が、まさか城を留守にしている間にそういう事になっているとは思わなかった。

「それであそこまでの仲に……それもこれも、全部、四天王のお前達がルー君を外に出したのが悪い!。あの光の神がルー君に興味を持って、というか、欲しいって言ってたから、この魔王城で箱入りで育てていたのに」

「光の神の行方を追うと、勇者に行き着くか」

「もともと、人を滅ぼさなかったのも、光の神の力が分散されるようにするためだったんだ。その中で特に力が強い者、すなわち勇者にあいつが生まれ変わるってどうして私は気が付かなかったんだ!」

「いまさら嘆いても仕方が無い。だが、あいつの意識が勇者にそのまま受け継がれているわけでもなさそうじゃないか」

「……たしかにそうだな。あの性悪の神」

 恨むようにエンドカースは呻いた。

「闇の神の系列である魔物に、満月になると欲情する魔法をかけて、それに闇の神の系列が抵抗したせいで魔法が歪み、敵対した光の神に属する人を敵とみなして襲うようになった。他にも闇の神の系列に色々面倒なちょっかいを出して、本当に何がやりたいんだか」

「光と闇は惹かれあうものらしい。魔王である私が、光である勇者、アクセル、お前に惹かれたように」

「この想いは俺自身のものだ。でなければ、光の神に喧嘩を売ったりしない」

「そうだな。私のこの想いも、そんなことで片付けられたくない」

「ただ、ルー君は歴代魔王の中で最も強く、闇の神そのものである魔王の中で、最も闇の神に近いのだろう?。それで、惹かれている?。いや、今のは聞かないでくれ。たぶんあの二人は……」

「分かっている。だが、あの神は屈折している。ルー君には相応しくない。それに、一度だけ姿を現した光の神と、あのレンヤとやらはそっくりじゃないか」

 忌々しそうにエンドカースが続ける。

「あの時、ルー君はあいつに目隠しされていてその姿を見ていない。しかも、その時まで知らなかったが、ルー君に予知能力があったなんて。わが歴代魔王の中で唯一バナナの皮に引っかからない子だったのに!」

「……でも、そのおかげで表情が豊かになった」

「確かにね。情報量が多くて処理が追いつかないから表情が殆どないとは思わなかった」

「魔物を支配する力が健在だっただけ良かったじゃないか」

「あれは魔王の、魔物を創った闇の神の力だ。光の神とはいえ、そこに手出しは出来ない」

 そこで、ポツリとアクセルが、

「正直、あのレンヤを俺達で何とかできるか?」

「ルー君に酷い事する奴は許さない」

「……両想いなわけだよな。あれ」

「気に入らないから駄目。あげない。あの子は私の大切な息子だ」

「……なんいせよ、状況を見て考える方が良さそうだな」

 そんな事を父親達が話しているとは露知らず、ルーズカースは天蓋の付いた豪奢なベッドの上に転がっていた。

 手の中には千切れた呪いの首飾りがある。

 それを弄びながら、今まであった事を思い出す。

 あまりにも短い刹那の出来事。

 なのに、本当に色々あって、楽しかった。

 何よりも、勇者と一緒に居られるのが嬉しかった。

 もしも自分が倒されて、勇者と自分が父達のようになれればと思う。

 父のエンドカースは反対しそうだが。

 アクセルはエンドカースと交わる事で、人でありながら魔族と同じ時間を過ごしている。

 魔族はある一定以上の年齢で成長が止まる。今の容姿は、ルーズカースはエンドカースとそう変わりない。

 となると、延々と勇者に魔王は襲われる。確実に。 

 そう考えて、魔王は溜息をついた。

 光の神だの何だの難しい事を考えるより、ただ勇者に会って触れたい。

 もう一度手の中の首飾りをいじって、ふと思う。

「この首飾りを直して強化しておこう」

 それが何となく何かの役に立つ気がするから。

 その何となくで墓穴を掘る事に、魔王は気付いていなかった。


 声が聞こえて、勇者は目を覚ますと白い世界だった。

 周りには塵のような光の粒がふわふわと浮かんでいる。

「やあ」

 後ろから声を駆けられて振り向く。

 そこにはもう一人の自分がいた。

「初めましての方が良いかな?」

 彼は勇者の事を良く知っているようだった。

 たぶん、彼は……

「そう、君達が光の神と呼んでいる者だよ?」

 そういって彼は屈託なく笑った。





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