7話:センダイにて
「さてと、この山を越えたらそろそろセンダイが見えてくるはずなんだがなぁ」
「ひー……。ひー……。お姉さま、す、少し休憩をですわ……」
フクシマから歩く事1日、相変わらずスタミナの無い銀孤をよそに俺達はセンダイがあるミヤギに足を踏み入れた。まだまだ山の中だがな。
流石は森の都と呼ばれてるだけあり、見渡す限り一面のクソ緑である。俺の親父の故郷とは言えこの荒れ具合は凄いもんだ。
「しかし相変わらず何にもねぇなぁトウホク地方は。その昔は人がいたって言うけど本当なのか?」
これでも昔は結構人がいたようだが、妖怪との戦いに敗れほぼ全ての地域を妖怪に支配されている土地、それがトウホク。
その凶悪さはキョウトなんてメじゃない程だが、どいつもこいつもトウホクから外に出ようとしない。理由は三つ。
まず第一にトウホクの連中はイカレ野郎ばかりだ。そんな事言っていいのかって思うだろうがイカレにイカレてるのだから仕方が無い。
特に多いのが妖怪殺し、妖怪のくせに妖怪を殺す事しか頭にないって言う奴らが多い。まぁ俺も同じようなもんだが……
んで二つ目はと言うと、弱い妖怪の受け皿って言う点だ。
銀孤みたいに人間と戦う意思のない妖怪ってのは結構いる。陰陽師の俺らにとっちゃ知った事じゃないがな。
そんな弱い妖怪の避難所として作られた場所があるらしい。どこにあるかは知らないけど……
まぁ今のところ俺らが行く用はないと思うがね。
え、三つ目?赤べことニイガタにある姥捨て山。アレが実質的にトウホクから妖怪が出るのを防いでいる。
それがわざわざフクシマ経由で俺がセンダイに向かった理由だ。
……え?なんで姥捨て山がヤバいんだって?アレはマジでヤバい。あそこを通るくらいならムキムキ赤べこと殴り合った方が良いってくらい。
「お。……おい銀孤!見えたぞ、センダイだ!」
「うぅ……。ようやく休憩出来ますわ~」
センダイが見えて来たところから更に歩く事1時間、遂に俺らはセンダイに到着した。ここがセンダイであると示す巨大な城の跡地が俺の目の前にあるからな。
さぁてまずは……ここまでブッ続けで歩いて来たので休憩!
「とりあえず妖怪がいなさそうな場所で休憩するぞ銀孤」
「分かりましたわお姉さま!」
時刻は分からんがとりあえず夜。草木も眠り散らかす丑三つ時って奴だ。妖怪なら嬉しいんだろうが俺は眠い、とてつもなく眠い!ここに来るまでに寝れなかったからなぁ~。
「この辺は大丈夫そうですわお姉さま!」
「そうか……。だったら……少し寝ても……よさ……」
あぁヤバいダメだ意識が朦朧としてきた……。
けど無理だな意識を保てない。一応銀狐もいるんだ、何とかなる……
◇
「うおっ!?……今何時だ?」
ウームなんだか目覚めの悪い朝だ。対して問題はないはずなのだがなぜこんなに目覚めが悪いんだろうか。
銀狐はと言うと飯作ってるっぽい。しかし何を作ってるんだ?匂い的には肉を焼いた物だが。……肉?!
「おはようございますわお姉さま。今は朝ですわ」
「に、肉か!?」
「お姉さまが食べたがっていたので、その辺にいた野生の牛を捕まえてきましたわ!」
うっひょ~!!!久しぶりの肉だッ!!!それも焼いた肉だッ!
「もうとりあえず焼けた所からくれ!」
「了解ですわ~!」
う、旨いッ!久しぶりに食う肉がこんなに旨いなんて思わなかった!うぅっ涙が出るぅ~!まぁぶっちゃけ下味とか付いて無いから薄味だけど。
「そう言えば銀狐は食わねーの?」
「銀狐は何も食べなくとも生きていけるので大丈夫ですわ!」
「おぉっうん……。良いから食えホラ」
「もごご……」
何も食わない銀狐に無理やり肉を突っ込んで食わせつつ、ここがどの辺なのかと周囲を見渡す。目の前にある城跡地から大体の場所は割り出した。
ここはセンダイ城の跡地、ぶっちゃけ俺らが行こうとしているセンダイとはちょっと違う場所だ。
「ところでこの牛ってどこから取って来たんだ?」
「そこにあった牧場から盗……貰って来たのですわ」
「牧場?」
牛を半分くらい食ったところで銀狐にコレをどこから貰って来たのかと質問。
すると指さしていたのは牧場とか言う場所。嘘つけ人がいないんだから牧場とか無いだろ。
「え?牧場とかあんの?」
「銀狐の家でも家畜は育てていましたわ」
「はぇ~……。え?お前無断で取って来たの?!」
「……。ちゃんと取引はしてきましたわ」
そう言えば一応銀狐の家で畜産してるって言ってたな……。
にしてもそれだとホントに人間と似たような事やってるんだなぁ妖怪って。なんか親近感湧くわ。それはそうとして害獣なので倒すね……。
「とりあえず余った分は干し肉にしてセンダイに向かうぞ」
「分かりましたわお姉さま!」
◇
牛を貪り干し肉を余るほど作り、俺らは再び歩き出す。
目標はセンダイ。目的は強くなる為!
「さてそろそろセンダイに着くはずなんだが」
時にセンダイに何の妖怪がいるかだって?さぁ……。でも昔から強い妖怪がいるって聞いてたし、なんかあるんじゃない?
「ところで銀狐はこの辺に来たことあるの?」
「ありますわよ。と言っても一度だけですが……」
「なるほどね。しかし海から遠いなぁ。この妖刀捨ててぇんだけど、その辺に捨てるとまた誰か乗っ取って襲い掛かってきそうだしなぁ」
「ですわね」
太陽が俺らの真上に上るくらいの時刻にようやくセンダイに到着。
しかしセンダイにやって来たけど何にもないわ。人間は当然だが妖怪すらも全然見かけない。
一応妖力探知は出来るとはいえ、全然探知に引っかからないわ。マジでいないの?ここまで結構な日数かけて来たのに?骨折り損のくたびれ儲けとはこの事か。
「はぁ……。とは言え俺の式的にいきなり四十より上の式とは戦いたくないしなぁ」
「ムキムキ赤べこに蹴り飛ばされて死にかけてましたからねぇ」
「アレはもう別枠だろ。マトモじゃありませんよ色んな意味で」
ただまぁ、式が高い=強いって訳じゃなさそうなんだよな。
式が高いのにそんな強くない銀狐もいるし。やっぱり元の肉体が強くないと強くなれないのかなぁ。
そうこう考えながら歩いていると、ふと気が付けば目の前にはやたらと刀を持ったオッサンがいた。……人間じゃあないだろう。
「──なんだお前?」
「貴様!貴様持刀我収集!渡否殺!」
「クソッ何語だコイツ!?」
訳の分からん言語で喚くオッサンだが、どうやら俺の持ってる妖刀を狙ってる様子。背中に見えるあの刀全部妖刀か?妖刀収集家?
別に俺が使う訳でもないし渡してやってもいいんだが、明らかに敵対意識を見せてきているから交渉は不可能だな。
「お前式は?」
「我名『絡繰弁慶』也!我四十四式!貴様殺害後妖刀頂戴!」
「げっ、コイツ四十四式かよ……」
参ったなぁ、俺の二倍強いや。とは言え式の位だけが全てな余の中じゃねー!
思い知らせてやる、俺だって結構強いんだぞってところ!
「来いッ、妖刀は渡さねーよ!」
「我貴様殺害!!!」
まずは背中にある刀から~?おぉ長刀か!
……デカくない?コレ3メートル超えてない?!嘘だろそれを振り回してくるの?!
「伸縮伐採刀!」
「無駄にシャレオツな名前つけてる~!」
とは言え大振り!避け……あっぶねぇ?!
俺のちょっと前で伸びやがった!危うく胸を切られるところだったぞ!まぁ俺には切られる胸もねーんだけどなワハハ!
「クソがよ……!俺に胸が無くて良かったな!」
「お姉さま大丈夫ですわ?!」
「銀狐!妖刀を寄越せ!」
「りょ、了解ですわ!!」
投げつけられた妖刀を回収。なぁに鞘に入っている以上はどれだけ雑に扱っても大丈夫!
「コレで実質五分五分だな!」
さぁ……ブン殴ってやるよ!!!
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