6話:フクシマ珍道中
「しかしこの辺マジで何もねーな」
フクシマにやってきた俺らだが、まぁなんと言うかなんにも無い。
そりゃそうだ、ここは完全廃棄地区。
人間が負けて妖怪にブン取られた土地なんだからな。
こんなところに人間が来たら良いカモ扱いですよ!肉を食われて内臓を引きずり出されて生きたまま脳みそジュルジュルされるんだ!
言いすぎか。
「あ、見てくださいましお姉さま!あちらに赤べこがおりますわ!」
「はぁ?あのなぁ赤べこってのは昔ここらで作られてた陶芸品であって実際にいる訳じゃあぁっホントにいるじゃん赤べこ!?」
銀狐がまた訳わからん事言ってるよと思って指さす先を見ると、そこには真っ赤な肌をしたデカい牛が。とりあえず現状は目の前の一体だけだが、それにしたってホントにいるとは思わなんだ。
「う、そう言えばハラ減って来たな……。アレって食えるか?」
「昔お父様とお兄様の二人が捕まえて来た事もありますので食べる事は出来ますわよ」
あるのかよ食った事が。だがしかし実際問題食えるなら問題ないな!流石にアレは妖怪だろうし霊魂も回収してやるぜ!
「よーしならアレを」「しかしお姉さま!あの時は二人とも『割に合わないな』とぼやくほどでしたわ!行くなら銀狐は足手まといなので隠れてますわね!」
「……。い、行ってくるわ。銀狐お前これ持ってろよ」
あれれっ、なんだか不穏な空気……。ホントに大丈夫かな?少なくとも今の俺はまだまだ十九式、銀狐の家族がどのくらい強いのか分からんけど俺より強いだろうし……
「とりあえず見た感じは普通の牛ではあるんだが……」
身体が赤いだけの牛って事は無いだろう流石に。その場合もっと問題になるんだけどさ。
まぁ草貪ってて全然敵意も無いし、ゆっくり近寄っていけば大丈夫……
「モーモー」
「動くなよ……マジで動くなよ」
「モー」バキッバキッ
「ん?」
「我が名はムキムキ赤べこ」
あの……なんかいきなりバキバキ言い出してデカくなっていくんですけど。みるみるうちに俺より大きくなってんだけど?
それだけならまだいいんだけど二足歩行し始めたんですけど?!
や、やめろよお前こっちに来るとかマジでやめろよ!し、式はいくら?!式はいくらだ!?
わぁぉ八十三だって。凄いわね。
「オイッ銀狐ーッ!なんだコイツ?!」
「それはフクシマ最強の妖怪『ムキムキ赤べこ』ですわ!!!お姉さま逃げてくださいまし!!!」
「こんなふざけた見た目のフザけた野郎がそんなヤバい存在なの!?あっしかもコイツ早い!スッゲェ早」
ギュピギュピふざけた足音から俺の全力に普通に追いついてくる速度。その速度から繰り出される蹴りなんてどれだけの威力になるか……。流石にわかるだろう。
全力で腹を防御したのにエゲつない勢いで俺は蹴り飛ばされた。
後ろにあった木々をなぎ倒し、そして銀狐の元まで吹き飛ぶ。慌てた様子で銀狐が駆け寄ってくるが、それより前に逃げた方が良いんじゃないかな?
「しっかりしてくださいましお姉さま!!!」
「ぎ、銀狐か……。なぁ俺今大丈夫か?」
「大丈夫ではありませんわ!!!逃げますわよ!!」
……うーん、今は多分痛覚低減物質ドバドバで痛みを感じてないんだろうが、多分正気になったらクソ痛いんだろうなぁ。
……ムキムキ赤べこって何?
◇
「死にかけたわホントに」
「うぅ……お姉さましっかりしてくださいまし……」
何とか逃げ切ったところで治療してもらった。
銀狐の回復妖術が強いのか分からんが、欠けた霊魂も治せるらしい。と言うか今の一撃で俺死にかけてたんだなぁ。
「霊魂ってやっぱり無くなったら死ぬの?」
「一応意識があれば再生しますわ。しかし、再生するまでに長い時間がかかってしまいますわ……」
「それってどのくらい?」「長くて一年ですわ」
ほー……。と言う事はコイツの村の場合はコレを悪用された結果肉塊のまま生きてたって感じだな。
細工の正体はコレか。多分1日で強制的に霊魂が回復するようになってたんだ。ただその再生性と引き換えに、肉塊で姿が固定されると……。
だから意識を保ったまま肉塊にする必要があったんですね(小並感
「それにしても他人も回復出来るとか凄いなお前」
「お姉さま♡銀狐を褒めてもなぁんにも出ませんわよ♡」
「……そうか」
なんかくねくねしている銀狐をよそに、先ほどのムキムキ赤べこが追ってきていないのを確認しつつ先へ。
しばらく歩くと今度は大量の赤べこがいる平野にやって来た。
「また赤べこかい!」
「フクシマは赤べこが多いですから……。仕方が無いですわ」
「だからって限度があるだろうが!どーせまたヌーッってムキムキ赤べこになるんだろ?!」
「いえお姉さま、あのムキムキ赤べこは常に一体で過ごしている孤高の赤べこですわ。あぁして群れる事はありませんわよ」
「……。そうか」
考えてみれば妖怪だらけのこの土地で一匹だけでいるヤツが弱い訳ないもんな。
じゃ群れならワンチャン行けるか?そもそも腹減ってんだよ今俺らは!特に食料も無いし!
「じゃ行ってくるわ」
「え!?行くんですわ?!」
「食料はいるだろ。どのみちまだまだ歩くんだからな……!」
ひとまず陽炎発動!やっぱり雑に使って強いよなあ陽炎は。
そしてこちらを見てない赤べこ(いきなりムキムキにならない物を指す)に乗って……妖力で強化した腕で首を手刀で切り落とすッ!!!
「うわっ固い!」
ウソだろ皮も切れんが!?何コイツ固すぎるだろマジで!
あ、ヤッベェしかも今のでバレた!あわわ闘牛遊戯みたいに大暴れし始めたぞ!!!
「うおぉすげぇ怪力だ!」
コイツの身体に腕をぶっ刺して踏ん張ってはいるが驚愕するくらい振り落とされそうなんですが!
とは言えここまで来たら俺も意地だ!このまま体内に直接狐火をブチこんでやるッ!!!
「狐火ッ『爆炎太鼓』!!!」
直接妖気をコイツの体内に流し込み!そして全身に行き渡ったところで起爆するッ!!!
「よっしゃぁ爆殺ッ!!!」
ふぅ……。妖力の感じはやっぱり掴んだぞ!赤べこも木端微塵……
「あぁっ!そう言えば食う為に倒す予定だったじゃん!これじゃ食えない!」
しょ、食用部分は……なさそうだな。あーあ全部逝ったわ……
見てくれよこの無残な姿を。
「ってぇ!完全にこいつら俺を敵視してやがる!ヤバいヤバい撤退ッ!!!!」
あーあ!これこそまさしく骨折り損のくたびれ儲けだぁ~!!(トホホ~
「今日も肉は食えずじまいかぁ」
また銀狐が持っていた携帯食料(乾燥多加でマジで美味しくない)を食う。
コレを食うくらいならその辺の草の方がマシかもしれん。正直俺らが飯を食う必要があるのか分からんが、食っておいた方が良いだろう。
「まぁまぁ、銀狐は草でも大丈夫ですわ!」
「肉を食いたいの!俺はな!!!!」
はぁ……。肉が食べたいわ。
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