4話:地下にいた狐
「……一旦お前元に戻ってみて?」
「……了解ですわ、お姉さま……」
今俺は地下でカビまみれの謎の妖怪と出会っています。
多分俺と同じ狐系妖怪だとは思うんだけど、全身カビにまみれてボロボロって言う……。で、俺が戻れって言ったら元の姿に戻りおったコイツ!
身長でっか。2mくらいあんぞ。そして胸もデッッッカ。うおぉっすげぇマジすげぇ。西瓜と同じくらいの大きさだうおヤッバ。
顔も良ッ。糸目なのはともかく顔もエグ良ッ。たまに美人な妖怪いるのは知ってたけどこりゃ欄外の良さだ。
「俺は……あー……。『金華』だ、お前名前は?」
「……銀狐。ですわ」
咄嗟に適当な名前を名乗っちまったけどまぁいいや、にしても銀髪の狐が銀狐って……安置っすね。俺が言えた事じゃねーけども。
「そ、そうか。お前カビまみれだけど大丈夫なのか?」
「……銀狐は、回復妖術が得意なので、生きていれば治せますわ」
「顔の半分が骨になってて眼球も片っぽ無かったのに治る訳ねーだろ普通」
その治り方は神の領域に足を突っ込んでると思うんですけども?
普通に考えて治る訳ねーじゃん今の傷が!顔の片側完全に骨まで見えてたんだからな!?
異常だ異常!まさか肉塊もこいつが作ったんじゃねーのか!?
「い、一応聞くけどこの肉塊はお前がこうしたって訳じゃないよな?」
「……その肉塊は、銀狐のお兄様の物ですわ」
「うわそんな事ある?!あっごめんついブン投げちゃった!」
「……構いませんわ、どの道……コレは何度でも再生しますので」
えぇ……?ん、よく観察してみれば確かに壊れた端から治っていってる……。だがコレを生きていると言っていいのかどうか……
そもそもこれはどういう物なの?何をどうしたらこんな事になる訳?
「オイ銀狐……。お前に何が起きたか説明してくれ」
「……分かりましたわ」
銀狐の話は若干冗長だったので掻い摘んで説明するが、まずここには元々銀狐の家族と他妖狐達(大体100人くらい)が住んでいたんだと。ちなみに銀狐の家族は両親含めて6人、銀狐は末っ子な?
でだ。ここの奴らは人間に敵対するでもなく、かと言って妖怪と戦うつもりもなく。
狩りと農産をしながら平和に暮らしてたって感じだったらしい。
ところがぎっちょん、一年程前に謎の妖怪に襲われた!
その妖怪は、妖怪と言う存在はどのくらいまで肉体を削っても生きられるのかと言う実験をする為に、村の全員をこの肉塊にしてしまったのだ!
つまりこの手のひら規格の肉塊の中に、生きるのに必要最低限の内臓と『霊魂』って言う妖力を作る臓器だけが入っている状態らしいです!
「──えっぐ」
自分で要約しながらドン引きしてるわ今。
そんな事していいんですかねぇ~?良い訳ねぇだろ殺すぞッ
ここに住んでたヤツら全員コレにしちゃったの?!倫理観どこに行ったんそいつ?!
「……銀狐も信じられませんでしたわ。本当に……」
「そりゃいきなりやって来たヤツにそんな事されたらそう思うわな……。それでお前はなんで地下でカビまみれになってたんだ?」
「……あの惨劇の中で、銀狐だけが生き残ってしまったのですわ。……ですが、銀狐には皆をどうにかする事も出来ず、それで……」
こころが折れちまった、と。
まぁそりゃそうだろうなぁ。訳の分からん奴に住民皆殺し(こんなの死んだも同然だろ)にされて、自分だけ生き残っちまったんだからさもありなん。
しかも誰も救えないときた、こりゃキツイ。
「でも結局のところ死ねなかった……と」
「……えぇ」
うーん、何とも虚しい話じゃ。家族や友達は皆この生きた肉塊にされて、自分だけ生き残ったんだもんな。
そりゃ死にたくもなりますわ。
「うーんちょっと重すぎますね」
「ですわ……」
「しかし霊魂?だっけ?って事はその霊魂を破壊すればこいつらも死ねるんじゃねーの?」
話の中に出て来た霊魂って言う物体が何かは知らんが、それを破壊すればいいんじゃね?
とまぁアホな事を言ってみたが既に試した様子。そりゃそうか。誰だってやるわな。
「確かに通常は霊魂を破壊すれば死にますわ。……ですが謎の細工によって、粉々に壊しても少しでも妖力が残っていればすぐに再生してしまうのですわ」
「じゃ妖力を使い切れば……ってそうか、霊魂がある以上勝手に元通りになるって事だな?」
「はい。……そして、一日も経てば妖力は全て回復してしまうのです」
「もうそれなんて地獄?」
つまり肉塊と化した体を無理矢理延命させる為妖力を使わさせられる→バラバラにしても翌日には妖力が自動的に回復する→もちろん妖力が回復したので再び肉体が……
「幾らなんでもエゲつなさすぎるだろ」
「……ですわ」
じゃあこの肉塊は意識のあるまま永遠に生き続けるって事じゃねーかよ……。
でも待てよ?裏を返せば妖力さえどうにかすればコイツらは死ねるって事だろ?んで今の俺は妖力を吸収する能力を持っている……。
──ワンチャンどうにか出来るんじゃねーのか?
「悪い銀狐ちょっと試して良いか?」
「何をですわ?」
「この肉塊から妖力を吸い取ってみることだ!」
鬼熊を食った時に何となく理解した妖力の流れ……。この肉塊からも感じるぞッ!
凄く細くて見えにくいが確かにそこにある!
ならこれを吸収すればいいよな?!行けるよな?!うおぉっ妖力吸収!!!
「あががっ!」
あっスッゲェキツい!なんだろう脂身食ってる時みたいな感じ!確実に翌日ロクでもねー事になるのが分かる!え!?一個だけでこの感じ?!話がホントならあと百個くらいあるよ?!
「大丈夫ですわ!?」
「だ、大丈夫だ……。それより見えたぜ?コイツの霊魂!」
妖力を全部吸ったら肉の上部分からなんか出て来た……。過剰皮脂かな?
でも妖力の流れの感じ的にコイツが話に出て来た霊魂!コイツを引き抜けば多分……。
「しかし……。本当に良いのか?コイツを引っこ抜いたら……」
「──お願いしますわ」
……良いのか。
まぁ、分かるよ。
俺だって家族がこんな肉塊のまま生きてるなんて事になったらどうにかして終わらせる方法を探すしな。
「じゃあ……終わらせるッ!」
霊魂を引っこ抜いたらいきなり肉塊がビチビチ震えてだした。あー……やっぱり食わないとダメ?完全に破壊する為には食わなきゃダメな感じ?いやだよぉコレを食うのは……。でも食うよ!やってやるよ!
「ヴェ!」
美味しくはない!苦玉を食った感覚!ただ食えない程の味じゃねぇ。さて肉塊は?
……先ほどのまで激しく動いていた肉塊が、霊魂を食った瞬間に動かなくなった。
確実に死んだのだろう、もうこの肉塊から妖力は感じられない。
その肉塊を、銀狐は恐る恐る俺から回収して……少しだけ、泣き始めた。
「……」
「──これで、良いのですわ……」
それからは流れ作業だ。何せこの肉塊達は死にたがっているのか、俺のところに勝手に来るんだからな。
それから霊魂を引き抜いては食い引き抜いては食い……。動かなくなった肉塊は銀狐がお墓に置いて行っている。律儀ねぇ。
「うぅっ今何個目コレ」
「30個ですわ。まだまだありますわよお姉さま。……少し、休憩なされますわ?」
「大丈夫、それより次の肉塊持って来い!」
何十個の霊魂を食っただろうか。これだけ食えば俺の式も上がっただろうと思い胸元を確認したけど俺の式は十九から上がらず。
まぁ良いだろう、こんなにお手軽に式が上がる訳が無いって知ってるもんね~だ。
「ウッ」
「大丈夫ですわ?!」
「……ップ、大丈夫大丈夫。まだいける」
妖力の過剰摂取で吐きかけたが問題ない、と言うか過剰摂取とかあるんだ……あるわな、そりゃ。
何はともあれ大体2時間後、残り肉塊が2個になるまで妖力を吸収した。吐きそうもう
「あ、後は!?」
「……この2つだけですわ。そしてこれが……銀狐のお父様とお母様ですわ」
「自分で持ってたのか家族の肉塊は……」
んで最後の2つの肉塊から霊魂を取り上げ……
ん。なんか右手の肉塊は抵抗してきてるぞ。モゾモゾ動きよってからに……。
ん?なんか聞こえてくるな、どれどれ妖気を纏わせて……。
『どうか、娘をよろしくお願いします』
「……あぁ、わかった」
最後のひとつ、おそらく父親だろう肉塊を処理して墓に全ての肉塊が納められた。
霊魂の食いすぎで気持ち悪いがその前に銀狐に言っておきたい事があるので吐き気を飲み込みながら話しかける。
「んでぇ?これからどーするんお前」
「銀狐は……皆と同じ墓に入りますわ」
「はぁ」
「……皆、殺されて、銀狐にはもう……」
「じゃあ俺と一緒に来いよ」
……なんだその顔は。目ェ丸くしやがってからに。
「……なぜですわ?」
「だってお前を放っておいたらそのまま死ぬじゃん?ここで。別に今死ななくてもよくね?良いじゃん俺と一緒に来れば」
ウーム我ながら無理筋過ぎる弁明だ。いやしかしコイツの場合はこのくらい滅茶苦茶な理論じゃないと確実に乗ってこないからな……
「……銀狐は」
「それによ、俺は今旅をしてんだ。俺をこんな風にしたヤツに一発蹴り入れてやらんと気が済まねーんだよ!……お前はどうだ?お前の村をこんなにした奴にムカつかないのか!?」
「──銀狐は……」
……正直俺はコイツが一緒に行きたくないと言っても引きずってでも連れていくつもりだ。何せコイツの親父殿に頼まれちまったんでな。かなり迷っている様子だが……さて、返事は?
「……お姉さま、銀狐は。……お姉さまについて行きますわ!」
「おっ、そうか!」
「──本当は、銀狐はここで皆と共に墓に入って眠るべきなのですわ。ですが、その前に……やはり皆をこんな目に合わせたお方をブン殴ってやりますわ!!!」
おぉ……。ずいぶん言葉が強いでやんすねぇ(小並感
しかし人生と言うのは目標を持たないと死にたくなりますからねぇ!最低な理由でもあった方がマシなのよん。
誰だって死んだら終わりだからな。
「よーしじゃあ俺達は今から妖怪の巣窟トウホクに向かう!後に続け銀狐!」
「はい!回復はお任せくださいお姉さま!」
かくして、元最強陰陽師はクソザコナメクジ狐っ子になってしまいました。
しかしめげないしょげないドラゲナイ、銀狐と言うデカ身長の妖狐を連れ、二人が目指すは妖怪蔓延るトウホクへ。
彼女の旅はまだまだまだまだ始まったばかり。これからどうなっていくのかは……未だ、分かりません。
次なる出会いに思いをはせて、二人の旅が始まります。
さて次章。
『1章:魔境!トウホク地方』
をどうぞよろしくお願いいたします。
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