23話オウガ・終
ガンマが手渡してきた霊魂。それは今までと違い明らかに巨大で、リンゴサイズの大きさがあった。そして凄まじいオーラを感じ取れる。
だが、これを食えばオウガの霊魂は二度と戻らない。
「良いのか?……食えばお前はもう回復しない、死ぬって事だぞ?」
「──構わん。どのみち……俺は、こうなる事を望んでいた」
「《《あの日》》、《《俺の妹をこの手で食い殺したあの時から》》」
その言葉を聞いて、ようやくオウガに関してずーっと持ってた違和感の正体が分かった。
コイツは……
「お前、《《元は人間だっただろ》》」
「……あぁ」
「え?!コイツ元人間なの?!」
「あぁ。コイツの角は一本だろ?鬼って妖怪は基本的に二本角なんだ。一本角の鬼は全て《《鬼の血を吸収し妖怪化した存在》》。すなわちこいつは初めから人間だったんだ」
この前壮絶な殺し合いをした鬼熊と一緒だ。あんな感じで鬼の血を自らの意志で摂取すると鬼になるんだ。あ、鬼になろうとしなけりゃ血を浴びても大丈夫ですよ。
「そ、そうなのか……。けど俺そんな話オウガから聞いてないが?」
「そりゃ言わねーだろ元人間だって……。普通よ」
妖怪だらけの場所で元人間って誰が言うか。俺だって言わんわ。
「俺の過去は……言わなくていいよな?」
「あぁ。どのみち聞いたところで、だ」
「あぁ。……そうだな。早く食え、それが勝者の……特権だ」
まぁこれ以上の問答は良いさ。霊魂を食って糧にする。それがここに来た理由だろ。
それ以外の事は考えるな。こいつの過去に何があろうがコイツは人を食ったんだ。
赦す事は出来ない。
「じゃあな。……オウガ」
まずは一口齧る。バギンと言う音がしたがひとまず歯は無事だ。
味はまぁ……なんだろう、激辛味?一応食えないってレベルじゃないけどスゲー辛い。まぁ不味く無けりゃそれでいい。一気に食うぞ!!
「ふぅ……。ご馳走様でした!」
「……そうか。それで、どう」「ウオォッなんだケツから何かが出てくるゥ……!?」
ん?!あれっ更に尻尾が生えてる!コレで三尾じゃね俺!?
式を確認!オッ増えてる!二十式に増えてる!今まで全然増えてなかったのにいきなり増えてるぞ?!
「そうか。……改式したのか」
「えっ何?何それ初めて聞いたけど?」
「その辺は俺が教えてやるよ。妖怪ってのはどこまでも式を上げられる訳じゃねぇ。結局のところどっかで壁にぶち当たる。……オウガも、四十九式から全く上がらなかった」
「あぁだから俺の式は十九で止まったのか」
「そうだ。そして改式を遂げるには二つ。ひたすら人などを食いまくり式を上げるか、自らよりも圧倒的に格上の霊魂を食うかだ」
……オウガの式は四十九式、二倍以上の差がある。そりゃ当然改式もするだろうな。とは言え俺って結構霊魂食ってきたはずなんだけどなぁ~?どれだけ食べればいいんだよ。
「……良いな」
「そうか?じゃ最後に尻尾モフモフさせてやろうか?」
「いらん。……ただ、顔を見せてくれ」
「あ?なんでだよ……」
どいつもこいつもそんなに見たいかねぇ俺の顔。そもそもコレ他人の顔なんだよ、誰かに似てるってんならそれは俺の元ボディの奴に言えよ。
「……似ている。俺の妹に……」
「そんなか~?そもそも他人のツラだしなぁコレ。俺も妖怪化した感じだぞ?」
「そうか?……いや、仮にそうだとしても……お前の顔はお前の物だ。生き方によって顔と言う物は変わる……。この、俺のように」
……そう言うモンかねぇ。己が顔は己が決めるって的な?にしたってそうなるモンかね普通。
「ソイツの顔は元々ガキみたいな顔だったよ。……今は修羅みたいな顔してるが」
「そうなのか?……そうなのかもな」
それなら好意的に受け取っておこう。否定する事でも無いしな。
「お姉さま~!尻尾が増えてますますお綺麗ですわ~♡」
「あっ銀孤!そうだ早く治してくれ流石に痛いんだよ右腕!」
「ゴメンですわお姉さま……。実は今回復妖術が使えないんですわ」
「嘘だろ」「半日程……」「猶更嘘だろ?」
うーむそう言う事もあるか。まぁ仕方ない、この両腕は戒めとしてしばらく痛んでおくか。銀孤だよりで無茶な戦い方をしたのは俺だしな。しかし回復妖術ってどういう技術なんだ?一応式を上げてみたけど全然使えない。
「しかしまぁお前って結構凄かったんだな」
「ぬ?もしや銀孤をお褒めになってるんですわ?」
「まぁ褒めてるよ……。でぇい頭を撫でるな!」
隙あらばコイツホンマ……。まぁ良い!今はもう一旦無視する!
だってそう言う状況じゃないもんね今!ここに集まって来た妖怪全員がこっちに向かってきてるもんね!
「オイマオ!やる事はやった、逃げるぞ!」
「ん。姉さん逃げるよ」「了解だにゃ!」
「ガンマ!お前も早く逃げた方が良いぞ!」
「……俺はコイツによ、色々賭けてたんだ。つまりは一蓮托生って奴だわな。だから一緒に死ぬさ」
「……お前」
「それによ、まだ話足りねーしな!わかったらさっさと行けよ」
……アレはもうテコでも動かないだろう。ガンマと言う妖怪はオウガと共に死ぬことを選んだんだ。
なら俺はそれを止める事は出来ない。……そう言うもんだからな。
◆オウガside
「……良いのか?俺と一緒に……死んで」
「ん?あぁどのみち妖力吸収機を壊された時点で終わりだしな」
あの金華と言う少女に負け、腕も両方無くして倒れ伏す俺に対し客たちは襲い掛かってきていた。
中には昔俺が思い切りブン殴った奴もいる、報復……。つまりは因果応報だな。
俺が今まで殺してきた妖怪と、見て見ぬふりをしてきた人間の数を数えれば当然の事だ。何も問う事はない。
「ギャハハ絶望的に殺してやるぜオウガァ!」「今までお前はどれだけ俺らを嬲って来たか思い知らせてやるよ~!」「手負いとは言え四十九式……。食い殺せばどれだけ強くなるかなぁ?!」
まぁ、ゲス共に食われて死ぬと言うのは少し腹が立つ所だがな。
「全く……。俺が目からレーザービームでも出せれば良かったんだけどな!そうすればこいつら一網打尽だぜ!」
「……。貴様が弱いことなど知っている」「ハハ、そうだな」
思えば、彼と俺が出会ったのもこの辺だったか。
あの時の俺は……
鬼に妖怪化させられて《《妹を食い殺し》》、《《仇を意識のないまま殺し》》呆然としていた時だった。
『よっ!お前強そうだな、名前は?』
『……』
『おいおい、俺が名前を聞いてるんだぜ~?!ちゃんと教えてくれよ!』
『……ない』『へ?』
『俺には、名前も、生きる意味も、生きる価値も、全て……無い』
俺には、何もなかった。あの時ガンマに出会うまでは何も。
意識のないまま妹を殺し、意識の無いままその仇である鬼を殺し。
何もなくなった俺に、ガンマは名前と目標と……。価値をくれたんだ。
『じゃ俺と一緒に来いよ!』
『……なぜだ』
『何もないならよ、俺の目標の為に一緒に戦ってくれよ!その為なら名前も目標もくれてやる!』
『……それも、良いのかもしれない』
そしてガンマについて行った。その後は色々な事があった。妖力を吸収する機械を作り、俺は何体との妖怪とも戦った。もちろん妖怪だけじゃない、人間も……この手で殺した。
中には俺のような兄妹もいた。だが容赦なく、俺は殺してきた。
それを繰り返し十数年。俺の前に俺と似たような存在が現れた。
一目見て、俺と同じ……。元人間だと理解した。
そして同時に、殺されるのならばコイツが良いと願ってしまった。
『そうだな、名前か……。じゃ鬼だから鬼の牙って書いて鬼牙って名前はどうだ?!』『安直すぎないか?』『良いだろ別にその辺は』
ガンマに名を与えられ、意味を与えられ……。俺はここまで強くなった。
それもこれも、全ては……今日この日、あの金華と言う少女に霊魂を渡して死ぬためにな。
「お、おらぁ!来るなら来いよ俺が相手になってやる!」
「止めておけガンマ……。お前じゃ死ぬだけだ」「い、いやだけどお前なぁ」
「だから俺が最期に暴れる。……ついてきてくれるよな?」
「──もちろんだ!よーしハデに暴れて散ってやろうぜ!行くぞーッオウガァ!」
俺は仲間に恵まれた。最期に良い妖怪と出会った。後は何を望もうか……。
「へっ半身砕けて両腕使えねーザコに負ける訳ねーだろ!バカが!」「最初に殺した奴がアレを食うって事で!」「早く死ね!」
「ハハハ……。ハハハ!楽しいなぁ楽しいなぁ!やはり命を懸けて殺し合うのは楽しいなッ!!!」
ならば最後に、ド派手に暴れてこの命を終わらせるとしよう!
あの少女に捧ぐ鎮魂歌としてなぁ!!!
「さぁ来いッゴミ共!お前らに食わせてやるほど……この私の命は安くないぞッ!!!」
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