24話:予感
オウガとの戦いから三日くらい経った後。俺らはマヨヒガ復興に務めていた。
いやまぁ正直に言えば爺さんの家を治してただけだが。炉の半分以上が壊れて使い物にならないって感じだったしな。色々あったが誰も死ななかった事だけが幸いだ。
「ようやく炉の形になって来たな」
「全くだ。貴様の刀を作るのにだいぶ時間もかかってしまったがようやく完成させられそうだ!クハハ……。ハァ。ワシ疲れたから寝るわ」
それにしてもロ爺さん、俺らが戦ってる時に何してたんだろうな?
刀も作れないだろうしガチでヒマしてたとか?まぁいいや。強そうだけど戦う気なさそうだし。
「お姉さま~♡今日も銀孤がお姉さまの為にお食事を作らせていただきましたわ~♡」
「あぁそうか。……あれ、マオとハイネの二人は?」
「あ、お二人は炉の修理で疲れたと一足先にお休みになりましたわ」
「あっそう。まぁ結構キツい作業だったしなぁ」
ロ爺の言う通りに色々素材取って来たらもうほとんど夜、その上終わってみたら深夜。そりゃ二人は朝までグッスリ寝ますわ。……えっ俺?俺は式が上がったおかげで中々強化されたので大丈夫ですよ!疲れにくくなったんだぜ!けど寝た方が良いよ人間。
「しかし式が上がったのは嬉しいな!尻尾も三本になったし必殺技も作っちゃったもんね!」
「銀孤も嬉しいですわ~♡」
「んじゃ飯食って寝るか。ようやく俺の刀が完成しそうだから楽しみだな!」
相変わらず銀狐の飯は旨い。と言っても飯食ったらマジでやること無いのでさっさと寝ます。修業?夜中ぞ、何が出来る。
そして翌日、ロ爺さんの元に行くとだいぶ刀としてそれは出来上がっていた。
「おっ、良い感じじゃん!それもう使えるのか?」
「これは今単なる刀じゃい!何の特殊能力もないんじゃ!ここから色々な特殊能力を付与するのじゃい!」
「……それってどのくらい時間かかるの?」
「一か月?」「もう良いよその刀だけくれよ」「ならん!」
……刀はまだくれないみたいです。いや普通に刀だけ渡してくれればそれなりに使えるから俺。けどその辺は鍛冶師としての誇りが許さないんだろうな。
そんなプライド捨てちゃえ~♡とか言ってみたり。
「まぁそもそもこれは未完成じゃい、ここから更に硬度を上げ色を付けてじゃな……」
「アッハイ。分かりました。それじゃ頑張ってねウン」
「ワシ塩対応されすぎじゃない?」
ちょっと真面目に作りすぎじゃないの?良いよ俺は別にそれなりに使えてそれなりに固けりゃ。
でも職人ってそう言うプライド高いからなぁ~。無駄になぁ~。
「じゃ俺マオの所に行くから」
「じゃーな金華!刀が出来たら呼ぶわい!」
はぁ……。まだまだ刀は出来上がりそうにないな。
暇だしマオと組手でもするか。最近は滝行も完遂出来るようになって来たからな。
マオと組手する時はあの滝行の場所でやるんだ、常に足に妖力を集めて、組手を続けて妖力が無くなったら終わりの合図な。
「っしゃ来いマオ!」
「……ん」
組手の時は互いに素手、妖力強化も足だけで足技禁止。純粋な体術のみで戦うのだ。
もちろん組手なので本気でブン殴るのは禁止。必ず防御出来る速度で殴るのだ。
「……ずいぶん早くなったね。拳」
「え、そうか?別にそんな早くやってないけど?」
「……そう」
うおっ急に拳を早くするな!全く俺が反応出来たから良かったが当たったら痛いぞ!おぉっ更に早くなって来たぞ!
「あっ、あぶっ、危ッ急に速度早くするんじゃねぇコラ!」
「ん。別に。早くしてない」
「もしかしてお前拗ねてる?!」
おっおっおっすげぇ速度!防御するので手一杯なんですけど!コイツ……!
おう本気でブン殴ってやろうかこの野郎!でぇいそこだッ!!
「……!」
「あっモロ入ったゴメン」
「……。良いよ、気にしてない」
コレ絶対気にしてるよ~。だって腹に思いっきり拳入ったもん。
俺だって悶絶するわ腹は。あっ水の上から出て行った……。な、なんか気まずいなぁ。最近マオがよそよそしいんだよな、具体的に言えばオウガの奴と戦った翌日くらいから。
「お姉さま~♡……ん?半身浴でもしているんですわ?」
「え?おぉっ沈む沈む!ふんっ射出!」
水の上で考えてたら半分沈んでて草も生えん。まぁ足の裏に妖力を溜めれば浮いて……あっヤベ速度出し過ぎてあっあっあっ
◇
「痛い~……」
「お姉さま大丈夫ですわ?」
「顔から地面に着地したぁ~……」
足に妖力を込めたら若干浮いてそのまま地面に思いっきり顔から着地したわ。
銀孤曰く歯が五本くらい折れてたらしい。直してもらったけど痛いや。
「お姉さま……。大丈夫ですわ?」
「直してもらったから大丈夫だ。……クソ痛いけどな」
「そう言えば折れた歯はどうしますわ?」
「その辺に捨てとけ」「了解ですわ」
流石のこいつも折れた歯を持って帰るって事はしないだろう。……しないよな?
ハイネの家に帰るとマオが屋根の上で丸くなっていた。猫か。……猫だったわ。
「おいマオ!お前何不貞腐れてるんだ!」
「……知らない」「悪かったよ腹ぶん殴ったのはさぁ!」
「……謝るならしないで。最初から」「やっぱり不貞腐れてるよな?!」
そう言ったら無視してきやがった。機嫌悪いっすね。
どうしてそんなにつっけんどんな態度をとるんだい。俺何かマオに対してやっちまったかねぇ?
腹殴ったのは素直に俺が悪いと思うがそれ以外では全く心当たりが無い。ただ不機嫌な事だけは何となくわかります。
「うーんハイネにちょっと聞いてみるかぁ」
言うてハイネに聞いても無駄かもしれんが姉だし何か知ってると思うんだよな。
さてハイネはどこにいるんだ~っと。
「おっ、ハイネ!」
「にゃ?どうしたのにゃ金華?」
「いやちょっと聞いてくれよ」
◇
「マオの機嫌がたまに悪くなるのはよくある事だにゃ」
「ウソだろ……」
「いわゆる発情期にニャーニャー鳴くみたいなヤツだにゃ。ほっとけばいつもみたいにゴロゴロくっついてくるのにゃ」
「マジかよ」
と言うか、俺らに発情期ってあるの?妖怪って子供とか作れるの?入れ替わってからそんな感じになった事全然ないから猫系妖怪特有の的な?
「マオはいい子だから冷静に話せば分かってくれるにゃ」
「まぁそうだろうが……。にしたってちょっと俺に対してどっか距離を置いてる感じがしてさぁ」
「んー……。まぁ心当たりが無い訳じゃないのにゃ」
そんな露骨に距離を取られる原因とかあるの?
……なんか持ち出してきたな。コレ写真か?キョウトにもあったが相変わらず画質低いな……。
「これはマオがアタシの所に来た時に撮った写真だにゃ」
「写真とかあるんだな」「ロマン爺が作ったんだにゃ。携帯撮影機って奴だにゃ」
「んで?どれがマオなんだ?」
「この……コレだにゃ」
ハイネが指さした先にいたのは今のマオとはまるで比べ物にならない程貧弱な、一匹の黒猫だった。思わず頭に?マークが浮かんだね。だってそうだろ?
俺が知ってるマオは強者としてのマオだ、けど写真に映るマオはあまりに弱い。身長が低いのは今のままだが、それ以上にどこもかしこもやせ細ってて栄養不良なのがよく分かる。
「え?」
「マオは確か今から五年前くらいにここに来たんだにゃ。その時はこの写真みたいに……凄く弱かったのにゃ」
ん?ちょっと待て、確かマオの話では家族を殺されてその後ここに来て、んでその後……って事は結構すぐここに来てるって事か?
その上五年間くらいここで修行してたって事になるが……
「マオは最初の頃とっても弱くてにゃぁ……。アタシにすら負ける程だったのにゃ」
「マジかよ式は?」
「十。ここに来たばかりの金華にも負けてたのにゃ」
……って事は十式から五年かけて二十九式しか上がらなかったって事?改式はしてるようだが、にしたって……
「マオは頑張り屋だからにゃぁ」
「まぁそこは何となく分かる。実際に今は強いしな」
「だから……。多分、マオは金華にちょっと嫉妬してるんじゃにゃいかにゃ?」
うーん。嫉妬ねぇ。
俺は人間の時圧倒的強者だったからそういう気持ちはわかんねーや。
今も弱くなったとはいえ強くなってる実感があるしな。
──もしかしてそれが嫉妬の原因なのでは?
マオは散々修行して、5年もかけて二十九式になったが、俺はひと月足らずで二十式にまで上がったって言う事実。
その上なんか俺って二十式の割に結構強いからな。たまにいる式が低いのに強い奴って言う感じの奴なんだと思う。
……それが癪に障ったとか?なんかピンとこねーな。なんか中途半端にあってるみたいな……?
「そう言えばアタシの過去の話ってした事あったかにゃ?」
「うん?そういえば確かにな、そう言えばハイネはどうしてマヨヒガにいるんだ?」
「じゃあアタシの過去について教えてあげるのにゃ!」
……ちょっと聞こうとしただけなのに話が長くなりそうだなぁ……。まぁ聞くけど。
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