2話:現状はクソザコナメクジ
とまぁ意気込んでは見たが一旦現状確認するか。コイツの式の位も気になるしな。
身長はおおよそ大体四尺(120㎝~130㎝)ちょい上くらいか。ちびっこですね。あぁ尺薬って木の枝は必ず30㎝だからすぐわかるんだよね。
耳も計算に組み込めばもうちょっと身長が高くなるとは思うが何も言わない。一応140㎝になるだろう。
それより重要なのは式だ。式ってのは妖怪の強さの基準だから確認しないと……。
基本的に妖怪は胸元に式の数が書かれてるんだよな。どれどれ。
「えっと~?確か式の情報は基本的に胸元を確認すれば……。おっなんか刻まれてる」
えーとどれどれ……。漢字で八式って書いてるな。へーコイツ八式なんだ。
嘘つけ!コイツが八式な訳ねーだろ!全く嘘ついてるなコイツ……。
あっ、いや違うわ。確か妖怪の胸元に刻まれてるこの数字って奴らの強さの指数で、俺ら人間が使ってる式の数値はこれを十の位で数えてるんだった。
じゃつまりこいつの強さは俺が最初に言ってた通り、一式以下で間違いないようだな。はーざっこ!いや今は俺の身体なんだけどな!
「うっ!?な、なんか急に尿意が……!」
とかアホな事言ってたら急に小便したくなってきたぞ!便所も近くにねーし……面倒だし立ちションすっか!
「ふぅー……おっやべっ足にかかるうわ最悪マジでキツいあっ止まら、止まんねッやめホント……。ハー……ッ」
……女の小便って、1回出したら中々止まんないんですね。いやまぁ止めようと足閉じた俺も悪いけどさ……。
足にホカホカと生暖かい感触が伝い、凄まじい不快感が襲ってくる。近くに水場も無いから洗えねーし……
まぁ良い。それより今は俺に何が出来るかの問題だ。
妖術は……果たして使えるんだろうか?アイツ妖術捨てたとかワケ分かんねー事言ってたけどちょっと試してみるか、流石に絶対使えないって訳じゃないだろ。
俺が使ってた霊術と同じような感じで……どうだっ!
あっダメだ全然霊術とは別モンだ妖術!
見ろ!なんか変なのでてきた!大根に顔付いたの出て来た気持ち悪い!消せ消せこんなモン!なんだコレは……。
「うぐぐ……。だがこの情報自体はありがたい話か」
正直乗っ取られた俺の身体で好き放題されかねないと思っていたが、俺ですら苦戦するくらい霊力と妖力が別物ならあいつには使いこなせないだろう。
ただでさえアイツ向上心なさそうだったし。今頃俺の身体を乗っ取ったんで調子に乗ってるだろ。まぁ確実に俺の名声はだだ下がりになるだろうけどな……。それは良いよ、もう俺じゃないし。
「でもせめて何か妖術が使えればなぁ〜」
ヤツの真似をしてみようにも、そもそも俺はあいつの妖術を1個しか見てないし、なんならそれももう二度と使えないらしい。
と言う事は今は妖術よりも妖力の制御が出来るようになるべきか……!
「ウゴゴ全然妖力が分からん!そもそも俺ってば師匠に教わったとは言えほぼ独学で妖術を使ってたからなぁ……」
なんというか……。アレだ、水と油みたいな感じだ。
混ぜようとしなけりゃ一生交わる事がないって感じ?とにかく普通に使おうとすると反発してエラい事になる訳だ。水の代わりに油飲むか?飲まんだろ?そう言う感じじゃね?知らんけど。
「だからって使えないままじゃ死ぬだけなんだよな」
こりゃ時間かかるわぁ……。
と言っても俺には無駄に時間がある、寿命がどんなもんか知らんけど隠れながら妖術を学んでいくとするか。
◇
あれから色々あって三日経ちました。
それで分かった事があるんだ。妖力と霊力の完全な違いについてな!
分かりやすく言うならば……妖力は右回転で放ち、霊力は左回転で放つって感じだ。
……なに?分かんないって?言語化しずらいんだよ感覚の話は。
だが感覚派の俺からすればそんな感じなんだよ。んでもそれが分かったから右回転にすれば上手く行く!
「……と、思っていた時期が俺にもありました」
うん、試して分かったけどそう言う事じゃないわ。いや制御は出来てるから正しくはあるんだけどな?
見てくれ今出て来たものを!多分炎なんだろうけど燐寸棒と同じくらいの火力しか出てない!なんだコレは!玩具かコレ!
「とは言え火を出せるようになったのは一歩前進だな」
しかし今のでだいぶ妖力について知れたかもしれない。
考えるべきは力の使い方……!ククク……!楽しいなぁ!こんなに考えるのは久しぶりだ!やはり人間向上心が無いとダメになる!
「そう言えば火以外にも何か出せないか?」
ちょっと力んでみるか、はぁっ!
……なんか霧状の何かが出て来た。おっと屁じゃねーぞ。だいぶ赤い色濃くて使ったら一米先も見えないくらいだが屁じゃねーぞ。
なんだよこの霧はよ……。でもこの霧が妖力で出来てるのは分かる。
蛸みたいに目くらましに使えるかもな。ただこれそこそこ妖力消費するんだよなぁ。
「とは言え逃げるのに有用な妖術を手に入れたのはラッキーだぜ!コイツには『陽炎』と名付けよう」
技使う時に名前を言わないと出せない感じなので名付けて……。
って今俺なんて言った?名付けたら技を出せるってか?いやしかし実際名前を付けるとだいぶ妖術を使いやすいんだよなぁ。
「と言う事はコイツも……行くぞッ『狐火』!!」
おぉっ!出た出た!火の玉出た!出たぞオイ!しかも意外と小回りが利く……!
これなら野生動物位なら勝てる可能性が出て来たぞ~!ウッいきなり腹減って来た……。じゃあまずはクマでも狩りに行くか!実家じゃよくとってたしな!
「さ~てクマはいずこに……」
おや。頭に鬼みたいな1本角の生えたクマがこちらを睨んでいますねぇ。
あれって確かクマが鬼の死骸を食った時だけ出てくる一式妖怪の鬼熊って妖怪じゃ……
あらま。こちらを睨みつけるだけじゃなくて俺の方を見て涎まで垂らし始めたわよ。
……あの、こっちに走って来てるのですが。捕まったら即座に食い殺してきそうなのですが!!!
「グルオォッ!!」
「ヤッベェ逃げろッ!!!」
マズいマズい!いくら何でも鬼の血を吸収した熊は不味い!
アイツら鉄板くらいなら紙くずみたいに引き裂いてくるんだぞ?!イカれてるって!
そんな奴に捕まったらどうなると思う?!そうだね、エサにされて生きたまま食われちゃいますね!馬鹿野郎!
「ブフーッ!ブフーッ!」
「オイオイアイツ早いぞオイ!」
ここで豆知識!
鬼熊はなんと時速40時秒で走る事が出来るぞ!絡繰り車かテメーは!
ウッもう息が切れて来やがった……。そうかこの身体クソザコナメクジだから走るのに慣れてないのか!
「だったら妖術を食らいやがれッ『狐火』!!!」
「ヴァゥッ!?ブルアァァ!」
あっこの熊妖術を食らったのに意にも介さず突っ込んできやがったんですけど!?
とにかく爪で引っかかれるのは不味い!とりあえず回避ッ!!
「ヴォゥッ!」
「うおぉっ限界寸前じゃねーか!」
マジで冗談じゃねぇ、見ろよあの爪を食らった木が根元から輪切りされてぶった切られてますよ!避けなかったらオレの身体が真っ二つになってたところですよホント!
し、しかし現状アイツを倒す事が出来る妖術はねーしアイツも俺の事を逃がす気はないようだ!
「し、しかしどうすりゃいい!?アイツを確実に殺せなきゃそれで俺は終わりだぞ?!」
クソッ今は逃げる事だけを考えるしかねぇ!
下手に立ち向かえば血反吐絵の出来上がりなんだよ!ただ問題は……俺はこの辺の土地勘が無いって事だよね(笑)
適当に逃げてると確実にどっかで詰む!
「と言うかアイツの足音聞こえねぇってすげぇ近いッ!?」
「グヴァァッ!!!」
そ、そうだ!熊って足音がしないタイプの生き物だった!
って事は……あぁっ射程圏内!
「か、回避ッ!」
しょ、しょせん畜生か!いきなり別の方向に逃げたら対応でき……
「ヴァフッ!」
「ゲッその場回転してきおったぞ熊如きが!」
爪を停止装置代わりにクイックターンとかマジ?!
と言うかこの位置はアイツの爪に直撃する位置……!
「うおぉっ狐火!うっぐぅっ!!」
あ、危なかった……!咄嗟に俺に狐火をぶつけて吹っ飛ばしたからヤツの体当たりは食らわなかったが物凄く痛い!
けど死ぬよりマシだ……!だがどうする?今ので若干足を負傷した、これじゃ走って逃げる事は出来ない!
「──ってかいつの間にか崖の近くに……」
いや……待てよ?
今俺の背後に崖があって、アイツは俺の事をほぼ直進で追ってくる……。
一縷の希望ある……か?いやしかししくじったらどうなるよ?死ぬか?死ぬで済むか?
「だ、だがやらなきゃ死ぬだけだ。なら……やって死んでやるッ!陽炎!!!」
妖力が足りるかも分からんがやるしかない!まずは煙幕上に霧を出しつつ……正面から走ってくるヤツの視界を若干くらませたところで狐火よーい!
「さ、さっきより小さい……ッ!けどやるしかねぇ!狐火ッ!!」
ヤツの顔面目掛けて狐火を放つッ!さっきアイツは俺の妖術をもろともせずに突っ込んで来た、って事は今回ももちろん意に介さず突っ込んでくるよな!?
しょせん強かろうがコイツはたかが畜生!脳みそは獣レベルだ!
「そして避けるッ!」
俺が避けたら当然アイツもクイックターンして俺を追おうとするだろう。陽炎で見にくくなってるからだいぶ遅れて。
だが間に合わないんだなぁコレが!だって目と鼻の先だもんね、お前と崖の距離ってのは。
「ヴァ……ヴァオォ?!」
「ハッ、どれだけ強くても結局のところは脳みそが畜生なんだよお前は!そのまま落ちてくたばりやがれーッ!!!」
──あっ凄い鈍い音が聞こえてきた……。具体的に言うとグシャって感じの鈍い音。確実に落ちていったようだな。じゃ陽炎解除。
どれどんな感じになったかちょっと確認してみますか。
あー凄いなぁ。腹にやたらと尖った石が突き刺さってるじゃないか。ありゃもう死んだだろ……。
「……ま、一回確かめに行くか」
いや怖いけどね?!でも一応アレを食う可能性がある以上死んだか確かめないとね!
慎重に崖を降りてやねぇ……。おぉっ内臓をぶちまけて死んでるッ!
「……いや逆に内臓まろび出てるのにこれで生きてたら怖いよ逆に」
うん、多分死んでますね!
じゃあ命に感謝して、コイツの肉を頂くとしますか。えっ捌けるのかって?ナメんなよ実家じゃよく解体してたわ!
「……さて、命をいただきます!」
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