19話:知略暴力その他諸々(三人称視点
「……ウソだろ?」
金華の一回戦を終え、ガンマは唖然としていた。
それもそのはず、一応今戦っていた見角という妖怪はそれなりに強い。だと言うのにほぼワンパンで殺されたのだ。絶句するしかないだろう。
「アレが本当に十九式だと……?おいどう思うオウ…」
オウガがわざわざ連れて来た時点でただ物では無いと分かっていたが、それでもオウガに詳細を聞こうとして、ガンマは後ろを振り向いてゾッとした。
そこには血走った両の目を見開き、歯をむき出しにして笑うオウガの姿があったからだ。
「やはり……!やはり逸材!この俺に殺される価値ありッ!!!」
(……コイツの笑みを見るのは初めてだ……。こいつこんな悍ましい顔で笑うのか……)
そう思っているとガンマらの元に駆け足でやってくるオウガよりも小さい鬼妖怪が。
それはガンマが口を開くよりも早く言葉を発した。
「大変だ!地下の牢屋の二人からの連絡がとれねぇ!」
「なんだってぇ?!おい、オウガ!ちょっと行って来い!」
「分かりました」
オウガとチビ鬼の二人が地下牢に向かうと、そこにはもぬけの殻になった牢屋の姿が。慌てふためく隣にいた妖怪だが、オウガは慌てる事無くこの更に下の階……特別地下室に向かう。
「クソッ全員逃がされてる……!せっかくの人間が!」
「いや、これは陽動作戦だな。特別地下室にいる奴を取り返しに来た奴がやったんだろう」
「じゃああのマオって奴がやったんですかい?!でも腕を折っちまったんでしょう?」
「あの女ならば腕ぐらい折れていてもやるだろう。しかしこれをしてからどのくらい経ったのか……」
そして特別地下室にやって来たオウガ達。地下では数々の妖怪達が牢から出されて暴れていた。特にオウガに殴られてここにブチこまれた奴は、オウガがここに来るや否や攻撃を仕掛け始める。
「死ねよぉっオウガァ!!!」
「黙れ」
死角から襲い掛かって来た妖怪の首根っこを掴み地面に叩きつける。ここにいる妖怪達はいずれも三十式を超えているコロッセオ経験者達だが、オウガ相手ではまるで歯が立たない。
「ど、どうします!?」
「慌てるなシシバ。どのみち出口はここ一つ、この場所から入った時点で外へは出れない。奴らはここに出てくる」
「そ、それはそうですが……。「大変だシシバ!」な、なんだバンコ!」
出ようとする妖怪達を片っ端からボコボコにしまくり、出口でマオが来るのを待っていたオウガだったが後ろからやって来た別の鬼妖怪に話しかけられる。
「ガンマ様があの銀孤とか言う女を人質にしろと命じてきた!もう三回戦までやってて全滅だ!」
それは金華の強さを目にした結果、このままでは全滅させられると判断したからかすぐに銀孤を人質にするようにと命令したのである。
しかし特別地下室は大混乱の真っ只中。仮に突っ込んですれ違いになってしまえばそれこそ最悪である。
「はぁ?!特別地下室の状況知ってんのかよあのバカ?!」「知る訳ないでしょうよアイツが?!っと口が滑った」
「仕方ない……。お前らはここに残れ、俺が銀孤をここに持ってくる」
仕方が無いので銀孤を回収しに行く役目はオウガが承り、後ろにいるシシバとバンコに出口を見張るように命令する。最悪オウガ一人でも銀孤は回収出来るからだ。
「確か銀孤を捕まえていた場所は……ん?」
「ヤバ」「待て貴様ら!」
そして銀孤を回収しに行った直後、オウガはハイネを抱えて一緒に逃げるマオの姿を発見する。ここで逃がす訳にはいかないと、オウガは即座にマオを追い始めた。
「コレは銀孤がヤバいかも」「確かにそうだにゃ。けど今この状況で逃げ切れるとは思えにゃいし……」
オウガの走る速度は今はマオより遅いが、流石に銀孤とハイネを抱えて走っては確実に追いつかれるだろう。そもそもマオは銀孤がどこにいるか知らないのだ。それを探して持ち帰る……まぁ不可能。
仕方ないのでマオは一度本気でオウガを撒く事にした。本気で走れば流石にオウガも追いつく事が出来ない。
大量の曲がり角を利用し死角に逃げ込んだところで、一気に天井まで駆けあがって身を隠す。
「……どこに行った?」
「──オウガは妖力の操作ヘタみたい」「そうみたいだにゃ。じゃ今のうちに銀孤がいる所を探すのにゃ」
確実に見えない場所までオウガが行ったのを確認しつつ、二人は天井から降りて銀孤を探し始める。数分くらいしたところで呼び出されたのかオウガが入り口から出て行ったのを見たマオは、さっきまでオウガがいたエリアを探す事にした。
「あ、ハイネ様!それにマオ様も!銀孤は大丈夫ですわ!」
すると結構簡単に銀孤が見つかった。なんと入口にいたのだ。見張りはいなかったのか?とマオが聞いてみると「見張りはいませんでしたわ」と一言。
「ん、無事で何より。それより、回復妖術は?」
「申し訳ございません……。今は諸事情で使えないのですわ。半日ほど待ってくださいまし」「ん」
だがここでマオは異常な違和感を覚えた。
確かに先ほど二人ほどここにいたはずだと。名前は聞こえていなかったがオウガが誰かの名前を言っていたはずだと。
少し隣の壁を見てみた。
《《人型のシミがそこにクッキリあった》》。
それも二人分のシミが。まるで壁に潰されたのかと思う程に綺麗なシミが二つ、銀孤の真横についていた。
「……」「ど、どうしたのにゃ?マオ」
だがマオはそれに対して何も言う事は無かった。本能と言うかなんというか、聞いたら確実にロクな事にならない。
マオが元々は弱い子猫だったが故の、生存本能と言う奴。
「ん、なんでもない」「そう」
故に何も言わない。答えは沈黙なのだ。
まぁ何はともあれ、一息ついたところで上はどうなっているのかと言う話になった。特に銀孤は金華が今どうしているかかなり気になっている様子。
「時にお姉さまはどうしているのですわ?」
「えっと……。上で妖怪達と戦ってる」
「ホントですわ?!今すぐ向かわせていただきますわお姉さまーーーーーーーッ!!!!!!!」
「……なんか早くない?」「爆走だにゃ」
マオが一瞬口を滑らせた瞬間、物凄いスピードで銀孤が走っていった。もはや風を切るほどの勢い。
二人もひとまず銀孤の後ろをついて行くと、その風圧にビックリしたのか勢いよくドアを開ける存在が。
「なんだよ今の?!」
「あ」
ガンマはドアを開けて周りを確認し、マオとハイネが一緒にいる光景を目にした瞬間部屋に閉じこもろうとする。
そうはさせるかとドアを思いっきり蹴り飛ばし破壊するマオ。
「でーッなんでいやがる?!」
「助けて来たから」
「クソッしかしもう遅い!今金華とオウガの一騎打ちの最中だ!あぁなったらもう誰にも止められねーんだよ!ボケが!」
「……別にいい。でもちょうどいいや」
部屋を少し見て回り、何やら仰々しい機械を発見したマオはコレが諸悪の根源だなぁと勝手に判断して折れていない方の腕に妖力を溜め始める。
何をするのか察したのかガンマは止めようとするが、ハッキリ言って貧弱な彼に止める手立てがある訳もなく。
「お、オイ何する気だお前おいちょ、ちょっと待てほんとにそれはダメだってマジで頼むやめてお願い」
「……妖力吸収装置か。粉々に砕いてやる……!」
情けない懇願も虚しく、情け容赦一切ないマオの拳により妖力吸収装置に思いっきりヒビが入る。
そこから妖力が吹き出しどんどん漏れ出ていく妖力。
「お、俺が十年貯めた妖力が……!」
「やったにゃ!」「ん」
「こ、この野郎……どわぁッ!?なんだ今の衝撃?!」
「にゃぁ?!」「……見て、金華達が」
指を指すマオの先には、このカジノの天井に思いっきり大穴が開いた光景が広がっていた。
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