12話:出会った狐(マオ視点
あの子を見つけたのは、ボクが絡繰弁慶を破壊していた時だった。
多分奴らに追われてきたのだろう、ひとまず助ける事にした。絡繰弁慶も壊したかったし。
「あー……大丈夫か?」
さっきまで自分が追われていたというのに、ボクを心配するなんて珍しい。
大抵の妖怪はボクがこうするとクモの子を散らすかのように逃げていくのに。
「俺は金華。んでこっちが銀狐だ」
助けた二人は妖狐だった。尻尾が大きくてモフモフしている。
それにしても妖狐は珍しい。ボク妖狐は初めて見た。ずいぶんモフモフだ。
「ん、二人はなんでここに来たの?」
「ん?あぁ色々あってな……」
……詳しい事は分からないけど、何かから逃げてきたみたいだ。わざわざトウホクまで来るんだから当然だけど。
じゃあボクらの家に案内してあげた方が良いかな。金髪の子の方はまだまだ弱いし、銀髪の方はもっと弱いから。
「じゃあついてきて」
「あぁ」
先に行ってても良かったけど、一緒に行く事にした。
一応金華はそれなりに出来るみたいだけど、銀狐って方は全然弱い。けど弱いだけなのかそれとも別の何かか分からない。
「銀狐!お前なぁ!またへばってるのか!」
「お姉さま~……。銀狐は疲れましたわ……」
まぁ、銀狐は妖力強化をしていないから弱いだけかも。
でも金華も妖力強化してるけど、かなり無駄が多い。ほとんどの妖力を垂れ流してる状態だ。あれじゃあすぐに疲れちゃう。
「今日はここで寝ようか」
「悪いな。……俺も眠いしな」
「……眠いんだ?」
やっぱり変だね。ボクら妖怪は基本的に寝る事はない。妖力がものすごく減った時には寝るけど。
だから、二人は多分妖力の消費がとても激しいんだろう。ボクなら一週間くらい寝なくても大丈夫だし。
まぁ……とりあえず寝てる間は守っておこう。金華が起きてる間は大丈夫だろう。それなりに強いから。
「……夜って長いなぁ」
朝、二人が目を覚ましたので早速マヨヒガへ向かう。
けど、この感じだとマヨヒガに着くまでは二日くらいかかるかも。
「うーんいい朝だ」
「じゃあ行こうか」
「あぁ。……飯食うか?」
「いらない」
歩き続けてしばらくするとまた銀狐が疲れている様子。やっぱり妖力が少ないだけだった。それは良いけど金華も金華でだいぶ辛そう。
そりゃそんな妖力の使い方をしてたらそうなる。ボクだってそんな事をすればそうなる。
「お姉さまぁ~おぶってくださいまし~」
「お前……。まぁいいや、ホレおぶってやるよ」
……この感じだと更に時間がかかるかも。
◇
結局無駄に時間をかけて帰ってきた。お姉ちゃんに怒られてちょっとしょんぼり。
でも困ってそうだったしいいや。弱い妖怪には優しくって言うし。
まぁ来て早々お酒飲んでべろんべろんに酔っぱらったのはどうかと思うけど。
「にゃ!そう言えばお肉が無いのにゃ」
「ん。じゃあ明日狩りに行ってくるよ」
マヨヒガには今99の妖怪がいる。弱強はあるけどまぁ良い妖怪ばかりだ。
だから当然だけど食料が足りない時がある。
そういう時はボクみたいに戦える妖怪が動物を狩りに行くんだ。
「……金華も連れて行こうかな」
金華は多分それなりに戦えると思う。あの趣味の悪い刀はともかくとして、妖力の総量自体は悪くないし。
でもぐっすり眠っているから朝まで待とうかな。
「じゃあお休みだにゃマオ~」
「……ん。お休み姉さん」
ボクのお姉ちゃんは妖術を使ってマヨヒガを守ってるから、基本的に夜は寝てる。最近は勝手に出て行ったから特に眠そう。
その間は無防備って事だけど、だからボクがいる。
「……まだいるのか、絡繰弁慶共」
ギシギシと気持ちの悪い音を立てて歯車を軋ませる絡繰弁慶の集団。
一体どれだけがこのトウホクの地にいるのか、ボクにはわからない。それでも一つ言えることはある。
「来い。……全部ボクが壊してやる」
人間の作った物なんか、この世に一つも残したくない。
◇
「狩りねぇ。俺結構慣れてるぜ!」
金華を誘ってみたら手伝ってくれると言ってくれた。武器を持たせないのもアレだから物置に置いてあった鉈を渡しておいた。
「じゃあ行くよ」
「あぁ!」
そして狩りを初めて大体30分、もうヘトヘトと言った様子の金華。
でもそれも当然かも。だって一切妖力の放出を止める事無く戦ってたもんね。常に全力疾走してたみたいな感じ。
「ハーっ……!ハーっ!」
だからこうなるの。息もあがって完全に戦力外。
……でも、逆に言えば30分は妖力を放出する事が出来るんだよね。それって凄いよ。
ボクでもこれだけの放出をし続けてたら1時間が限界だもん。
「お前……!これだけやっても悠々としてるもんだなぁ……!」
「ボクは慣れてるからね」
「なんだそりゃ。妖力の使い方とかあるのかよ……?」
「あるよ。……ボクが教えてあげようか?」
「そうか……。それなら教えてくれると助かる……」
……なんだろう。ちょっとだけ楽しいかも。
他の妖怪に何かを教えるの。
狩猟を終えてとりあえず滝行をさせてみる事にした。
滝行って何かって言うと……妖力を装甲のように身に纏って滝を防ぐって言う妖術修行の中でも基礎中の基礎みたいな物。
ボクの父さんもコレをやると良いってよく言ってた。だからヒマになったらよくやるんだ、頭も冷えるし……
それで、妖力に関しては何も知らない金華に妖力の使い方を多少教えてから滝に突っ込ませる。
「はぎゃぎ!!!」
流石に最初の数回は滝に飲まれて流されていたけど、次第に放出の仕方を理解して来たのか数秒なら滝の下にいれるようになった。その間に滝行用の服を持ってきてあげたよ。
このくらいは序の口なので良いとして、長い時間出来るようになるまで一緒に滝行を続ける。
「なぁなんかコツとかねーのか?」
「……こう、ドン!ってしてバーってする感じ……?」
「分からん」
……説明が下手だと、たまにハイネ姉さんにもそう言われる。
「それじゃあ応用編見せてあげる」
とりあえず一分くらい滝に耐えられるようになったので、妖力操作の応用編を見せておくことにした。
足の裏に妖力を溜め、反発させる事で水の上に立ちその状態で滝を割る。
一見すると簡単に見えるかもしれないけど上と下で妖力の強さを切り替えないと溺れるか滝に押し流される。
コレが出来るか出来ないかで妖力操作の才能は簡単にわかる。ハッキリ言ってボクは才能が低い方だ。
コレが出来るまで5年かかったから。
ちなみにお姉ちゃんは大体10年くらいかかったんだって。まぁその辺はハイネ姉さんは妖術使いだからやる気がないって言う問題はあるけど……。
「じゃあちょっとボク姉さんの所に行ってくるから、それ続けててね」
「あぁおーっ沈む!沈むッ!」
あんな感じならボクよりも時間がかかりそうかな。
「にゃ、もう大丈夫だにゃ!」
「ん。疲れた」
家に帰って香炉に妖力を注ぐ。コレをしておくとハイネ姉さんが寝ててボクがいない時でも幻影妖術を発動する事が出来るんだ。
長い間いなかったせいで妖力がすっからかんになってたけど、これなら三日くらいは持つかな。
「ところで金華はどこに行ったのかにゃ?」
「え。……あ、滝行をさせ続けてたんだった」
色々とやっているうちにすっかり夜になってしまった。
金華には悪い事しちゃったな……。仮に短い時間だったとしてもアレはそう簡単に出来る事じゃない。それをやれって命令しておいて放置って。
「え?お姉さまはまだ帰ってませんわよ!」
「ん。じゃあ迎えに行ってくるよ」
帰ってるかなって思ったけどまだやってるみたい。それにしてもこの……。なんだろう、まぁいいや2人の関係性は。銀狐が帰ってきてないって言うなら帰ってきていないんだろう。
「さてどうしてるかな……」
ひとまず滝までやって来て……。ボクは目を疑った。それが幻影とか夢かと思ったけど違う。
「よぉマオ!見ろ少しなら出来るようになったぜ水上滝行!!」
「……」
半日で出来るようになる訳が無い。妖術の天才だった父さんですら半年はかかったって言ってたんだ。だとすれば彼女は……。
《《天才を超した天才だ》》。
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