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期待



 「ハルト様!」


 翌日の朝、俺がいつものように食堂の仕込みをしているとメラニー王女が急いで宿の扉を開けた。


 「メラニー王女、おはようございます。」

 

 「これはご丁寧に、おはようございますハルト様。」


 「……そんなに急いでどうかいたしましたか?」


 「父上がハルト様を呼んでいて……それと、建物が完成いたしましたので、魔物との戦いに参加されない勇者様には既に移動してもらっています。」


 ……異世界の建築は想像以上に早いんだな。何か魔法でも使ったのだろうか?それに、昨日の今日で呼び出しとは……国王は俺に、なんの用があるっていうんだ?


 俺はメラニー王女に手を引かれ、レイナルド・ガラン国王の前へとやってきた。



 「今日、貴様を呼んだのは他でもない。ハルト殿に指揮官をしてみろと命令をした件について話がある。」


 もう魔物との戦いの日程が決まったのだろうか……もう少し戦えるようになるためダンジョンに潜ろうと思っていたのだが……。


 「昨日話した内容が我が息子、ニコラに知られてしまってな。どうやらハルト殿が指揮をとることが不服らしい。」


 メラニー王女は気に入ってくれてるだけマシだが、ニコラ王子は俺のことが気に入らないのか……面倒に巻き込まれないといいんだが……。


 「ニコラはノエルに教わっていたのもあり、多少なり軍略を心得ている。そこでだ、我が国の兵士たちの要望もあり、次の戦いはニコラに全軍の指揮を任せることとなった。」


 この上なくありがたい話だが、せっかく洗浄から遠ざけたクラスメイトはどうなるのだろうか。


 「陛下。その場合、私のクラスメイト……勇者はどのような待遇を受けるのでしょうか。」


 「その件に関しては一度言ったことだ覆すつもりはない。だがハルト殿、貴様には我が近衛騎士団百人を 引き連れて、戦場に出てもらう。」


 「陛下の騎士を引き連れてですか……?」


 「そうだ。皆、優秀な兵士であり騎士だ。ハルト殿の命令を忠実にこなしてくれるだろう。」


 何千、何万を指揮するよりかは何十倍もマシだが。国王の騎士を大勢死なせることにでもなれば、俺は無能の烙印を押され、最悪の場合国外追放される可能性もある。


 「どうしたバジル。」


 左右で俺を見張るように並ぶ騎士の中から、王との謁見の前に小さなアドバイスをくれた近衛騎士団長のバジルさんが国王の前で膝を着いた。


 「陛下。お許しいただけるのであれば、王国騎士の訓練場にハルト殿を招待したいのですが。」


 「私は構わんが……ハルト殿はどうだ、王国騎士の訓練を見学する時間はあるか?」


 「……できることなら私の泊まっている宿の女主人に、帰りが遅くなると伝えたいのですが」


 「そうか……では、女主人への報告は衛兵に向かわせるとしよう。バジル、ハルト殿を案内してやれ。」


 「かしこまりました。ハルト殿こちらへどうぞ、訓練場まで案内をさせていただきます。」



 王国騎士の訓練場


 「団長お疲れ様です!」


 王国騎士の訓練場の広さは学校のグラウンドほどの大きさがあり、大勢の騎士が訓練をしている。


 そして、バジルさんを遠くから睨みつける集団がいることから、騎士の中にも派閥のようなものがあることが感じ取れる。


 「バジル団長。そいつが例の?」  


 屈強な体をした騎士が一人、俺を睨みつけながら前に立った。


 「紹介しよう。この方がハルト殿、我々近衛騎士団を指揮することになった勇者様方のご友人だ。そして、こいつが。」


 「あぁ……俺の紹介はいりませんよ団長。俺はガキに命を預けるのはごめんなんで、次の魔物の行軍を止めるための戦いには参加しないつもりですから。」


 「陛下の命令に逆らうつもりかダニエル……」


 バジルさんの表情が強ばった。


 「だいたい。俺たち近衛騎士の役割は陛下をお守りすることなんですよ?それに、俺がいなくても団長を慕ってくれる団員だけでも百人は集まるでしょ?」


 「待てダニエル!話はまだ……!」


 言いたいことを言い切ったのか、ダニエルと呼ばれていた男は、離れた場所から俺に対し、嘲笑するかのような視線を向けていた騎士たちの元へと歩いていった。


 「申し訳ありませんハルト殿。奴の名前はダニエル・ジャケ。近衛騎士団の副団長で実力も人望も申し分ないのですが、人間性に少々問題がありまして……。」


 「いえ、むしろ彼の考えの方が正しいと俺は思います。むしろ、陛下やバジルさんが俺なんかに指揮を任せようとするのが謎というか……」


 副団長の考えは正しい。自分が同じ立場でも、何処の馬の骨かも分からない子供に命を預けようとは思わない。


 「ハルト殿は自分を低く見積もっておられる。メラニー様の言っていた通りですね。」


 「低くというか……現状、何かを成し遂げた訳でもないただの子供には荷が重いというか……」


 「……いいですかハルト殿。謁見の場でのコアの説明、あれを聞いた者の中にハルト殿が全軍の指揮をとることに反対したものは誰一人いなかったのです。」


 バジルさんは俺の目を見て、力強く訴えかけた。


 「我々が思いつかないようなコアの使い方の数々。 ハルト殿には我々にはない発想力があります。我々は魔物を進行を抑えることで精一杯の現状をハルト殿の指揮で打開することができると考えているのです。」


 バジルさんの言葉は素直に嬉しいし、ありがたい。自分を信じてくれる人がいるということは、これからの計画を進める際に有利に進むだろう。


 「……コアのことを知ってから、ずっと考えていたことが一つあります。」


 「お聞かせください。」


 バジルさんは真剣な表情で俺の目を見て話を聞いてくれた。


「魔道都市ヴィッセン。ヴィッセンの魔道具士にコアを使った魔道具を作ってもらうのです。」


 魔道都市ヴィッセンは様々な分野の天才が切磋琢磨している都市。都市の代表の名前はベルノルト・ファーナー。俺たちより前に呼ばれた勇者の子孫と同等の力を持つ魔法使いで、何よりも知識を愛しているらしい。


 無傷のコアの性質と魔術都市ヴィッセンの魔道具士の力が合わされば、恐らく大抵の現代兵器は再現できてしまう。作ってもらう現代兵器はしっかり選ぶ必要があるな……。


 「ヴィッセンですか……あのベルノルト様が大人しく協力してくれるでしょうか?」


 「今のままでは無理かもしれませんね。なのでそのためにも、コアを戦場で使い実用性を証明する必要があります。」


 知識なのであれば、現代の知識を教える代わりに……という手もあるが、できる限り手札は残しておくに限る。


 「なるほど……では、ハルト殿。早速、次の魔物の進行を退ける際の作戦を我々にお聞かせください。」


  

 

 

 


 

 

 


  

 


 


 

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