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55 何かやらかした?


俺って子供たちに何か不味い事でもしたのか? と不安になって立ち止まった。

『リリィ、なんか怖い顔して近づいて来るけど 危険は無さそう?』

『今のところ疑いの目を向けてるって感じで 危害を加える様な敵意は感じないけど… 』


警戒する程の敵意が無いのなら一応は大丈夫そうなのか? と不安に思いながらも黙ったまま近付いて来る人物から目を離さないでいるとその人物が声を掛けて来た。


「お前、この辺じゃ見ない顔だな。何の用だ? 作物を盗みに来たのか⁈」

「えっ、作物を盗りに来たんじゃなくて… 俺、あそこに居る子供達にこの場所を教えて貰って ちょっと前まで洞窟に寝泊まりしてたんですけど… 何か不味かったですか?」

「まさか、子供達が ”カズマ” って言ってるのはあんたか?」


「多分そうだと思いますけど… 」

そう答えた途端、一瞬驚いた様子を見せた男性の態度と顔つきが柔らかいものに変わった。


「そうか! あんたがカズマか! ちょっといいか? 色々と話を聞きたいから一緒に来てくれないか?」

「えっ⁈ 俺、何かやらかしましたか?」

「ああ。大変な事になっている」


えっ、大変な事って何? 心当たり無いんだけど…… まさか子供達に何かあった⁈

『リリィ、大丈夫かなぁ? 逃げた方が良さそう?』

『大丈夫みたいよ。敵意どころか歓迎されてるんじゃない?』


尤も子供達に何かあったのなら逃げてる場合じゃないか… 不安に思いながら男性について行くと見知った子供が俺に気付いて手を振ってくれた。ニコニコとした笑顔を見せて踵を返し

「ジル兄ぃ~、カズマが来たよ~ 」 と言って駆けていった。その様子を見る限りは子供達に何か不味い事態が起こっている、という事では無いみたいだ。


「おい、例のカズマが来てくれたぞ」

先に立って歩いていた男性の呼び掛けに洞窟近くに居た やはり30~40代に見える二人の男性がこちらを振り向いた。


「君がカズマか… 良く戻って来てくれた」

「あの、これはどういった状況なのですか?」


洞窟に近づいて行くと 俺が畑にしていた空き地を囲う様に柵が張り巡らされていて 今此方を振り向いた二人は囲いに設けられた出入り口の近くに立っている。


「ああ、この柵は作物を盗人から守るために… 」

説明が終わらないうちにその畑の囲いの中からジルが飛び出して来た。


「兄ちゃん、帰って来たのか⁈ 実はさ兄ちゃんの畑、大変な事になっちゃって」

「大変な事って?」

やっぱり俺が何か不味い事をやらかしたのか?


「兄ちゃんが街に行った次の日も この畑の作物が沢山収穫出来たから 食べ切れなかった分を皆で分けて家に持って帰ったんだ。

それを母ちゃんが晩御飯に料理してくれて… っていても茹でただけなんだけど ”味も付けてないのにこんなに美味い物、どうしたんだ?” って聞かれて… 

それで兄ちゃんの事と此処の話をする事になって、それからも毎日かなり沢山収穫できるから村の皆で話し合って町に売りに行く事になって…

そしたら珍しいからって町でも評判になって噂を聞いた他の村の奴らが種や苗を分けて欲しいってやって来たんだ。

でも種は無いし、切ったツルを植えても枯れちゃうし…

でもここに生えているのは 根元のツルを少し残しておけば刈っても刈っても新しいのがどんどん伸びて来て実がなるんだ。

それを狙って盗みに来る奴がいるから柵を作って見張りをするようになったんだ」

「そうなのか? そんなに収穫してもまだ枯れないでツルが伸びてるんだ… 」


ジルの説明に驚いて呟いた言葉に大人たちが聞き返してくる。

「なんだ? カズマも知らないで植えたのか?」

「俺の田舎じゃ夏の間だけの作物だったから 寒くなったら枯れちゃうんじゃないかな?」

「夏? 寒くなる?」

「えっ、 この辺りって季節とか無いんですか?」

「季節?」


そうか、日本には四季が有ったけど確か赤道に近い地域ほど程気候の変動は少ないんだったけ…


「此処って一年で暑くなったり寒くなったり気温の変化は無いんですか?」

「高い山にでも登れば寒かったりするけど カズマは山の方から来たのかい?」

「ははは、まあそんな様な所です─── 」 


俺の植えた芋やカボチャの株が残っている限り ずっとツルが伸び続けて実がなるんだろうか? 

あっちの世界では一年草だった植物も 季節の無い此処ではツル性の木みたいに何年も枯れる事が無いのか? 

いや季節は関係なくて異世界だからこんな事になっているのか?


「カズマ、これってどうやって苗を育てたり増やしたりするんだ?」


チャリに追加で種や苗を出して貰っても良いけど 変わった植物の種や苗を出せるって知られると 更に大事になりそうだ。ここは後々の事を考えて誤魔化しておいた方が得策だろう。


「俺にも良く分からないです。保存が効くから非常時の食用にしようって思って田舎から持って来た芋や野菜なんです。芋は芽が出ちゃったから試しに植えてみただけで…

カボチャもトマトも食べた後、偶々残っていた種が有ったから此処で蒔いてみたんだけど 何で実った物に種が無いのかは解らないです。考えられる原因としては ”俺の田舎とは気温とか環境が違うからじゃないかな?” って事くらいですかね。

だから俺にもいつまで枯れないで実が生り続けるか? とかは分からないです」


「持って来た野菜はもう無いのか?」

「植えた以外は子供達と食べてしまいましたし… 種も全部使っちゃったし」


「そうか… ここにあるのがいつまで収穫できるか分からないけど大事に育てないといけないな」

「ええ。そうしてください」


「で、兄ちゃんはまたこの洞窟に住む為に戻って来たんだろ?」

ジルが尋ねた言葉に 周りに居る子供たちが期待を込めた目で俺を見つめた────



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