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51 王都到着


異世界に来て初めての人族との旅は俺の知る日本での穏やかな旅行とは縁遠いものだった。魔物との遭遇は此処へ来てすぐに体験したけれど まさか人間相手に武器を使った戦闘になるなんて 現代日本の旅では考えられない出来事だ。

この世界に自分の身一つだけで来ていたら 最初に遭遇したワイバーンっぽい何かに空から襲われて既にリタイアしていただろう……


一緒に転移して来たチャリには感謝しかないな。リリィの魔法も今となっては無くてはならないけれど、なんと言っても転移して間もない頃のチャリの存在は大きい。

厳密に言うと精霊がこの世界に迷い込んだママチャリとスマホをすぐに見初めて宿ってくれたお陰だ。


この世界で初めて遭遇したのがジルを始めとする子供達だったのもラッキーだ。いきなり大人と遭遇していたら この世界の事を何も知らない俺は色々と勘繰られ 異世界から来たという事を誤魔化す事も出来ずにぼろを出しまくって 今頃どうなっていたか分からない。疑う事を知らない純粋無垢で物知りなジル達にも感謝しかないな。


その後知り合ったロベルトさんも… まだ信用しきった訳では無いけれど、これからもこの世界で生きていく上では必要不可欠な付き合いになるだろう。自分で稼いで生きていくには大人との付き合いも必然だ。そう考えるとこの国のメカニズムなど何も知らない今の俺が頼れるのは彼以外にはいない。


旅をするうちにエリザベートさんとも少なからず気心も知れたのか 出会った頃の様ないがみ合いも無くなった。

俺が精霊たちに出会って助けられてきた様に せっかくこの世界で知り合ったエリザベートさんが窮地に立たされているのなら出来るだけ力になってあげたいな… 位には思う様になってきた。


そんな思いに耽りながらチャリを漕ぎ ついにこの旅の目的地である王都の市街地に入った。この世界に来てから今まで魔の森に接した辺境の領地に居た所為か 王都に近付くに従って今まで目にして来た景色との違いに驚かされたが 一歩踏み入れた王都の市街地は流石この国の中心地、綺麗に整備された街並みや所々に配置された憩いの場である公園などの景色がテレビで見たヨーロッパの観光地の風景の様にも見える。


馬車に並走しているとチャリに乗った俺に気付いた人々がひそひそと囁き合っているのが目に入った。余りに多くの人に注目されている様でちょっと恥ずかしい……

田舎にいる時は驚いた顔をされる事はあったけれど あからさまに指を指される事は無かった。まあ田舎と違って人がそれなりに多い分、色々違った反応をされるのも解らないでも無い。


大通りを行き交う人々の様子を観察している間に閑静な貴族の邸宅街にあるウェストン伯爵家のタウンハウスに到着した様だ。

領地にある領主館程は敷地や建物は広くはないものの 立派な佇まいである事に変わりない。馬車に付いて門を入っていくと数人の使用人がチャリに乗った俺を見て目を丸くして一瞬固まったが 玄関前に馬車が停まると屋敷の使用人が馬車の扉を開けてお嬢様を出迎えた。


俺はチャリを馬車の後ろに停めて暫くその様子を見ていた。エリザベートさんが馬車から降りると壮年の執事らしい人が一礼してから声を掛けた。

「いらっしゃいませ。エリザベートお嬢様。長旅お疲れさまでした。無事にご到着されまして何よりです」

「無事にって… 大げさね。お父様とお母様はいらっしゃるかしら」

「はい。首を長くしてご到着をお待ちしております。このまま直接お会いになられますか?」

「ええ。久しぶりだから早くお会いして少しお話ししたいわ。それから晩餐までは自室でゆっくりしたいわ。執務室に伺えばいいかしら?」


「それが… 先んじてロベルト様よりお手紙が届いておりまして… お連れの和真様とご一緒に応接室にてお会いになるそうです」

「和真と一緒に? 分かったわ。和真、到着早々で悪いけれど一緒についてきて頂戴」

「はい。チャリは何処に停めればよろしいですか?」

「いつものようにエントランスに置いて頂戴。セバス、案内してあげて」

「こちらの方が和真様ですか… 承知いたしました。和真様、お初にお目にかかります。ご案内いたしますのでこちらにどうぞ」


執事さんに案内され 先に歩き出したエリザベートさんに続いてエントランスに入った。領主館程では無いけれど広いエントランスの指示された場所にチャリを止めてセバスさんに付いて歩き出した。

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