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50  道中の余暇


「それにしても和真って変わった武器で戦うのね」

馬車に並走して街道を走っていると窓からエリザベートさんが話しかけて来た。


「元々は俺の国の魚を捕る道具ですよ。俺は平民だから戦う術が無いですからね。毎日のように魚を捕って生活してるからこの道具を使い慣れてて…… 戦闘でも役に立ってよかったです」


「普通に考えて 小さな魚を捕る道具では人間をを一撃で倒す事には無理があると思うんだけど?」


「先にある錘の当たり所と力加減でどうにかなったんじゃないですか?」

「和真がそう言うならそれはまあ置いておくとして 

私も一度その見た事の無い道具で魚を捕ってみたいわ。遠くに居る魚を狙えるんだから川に入らなくても良いんでしょ?」

「それはそうですけど…… 」


「ここ数日間ずっと馬車に乗っているだけで王都に着いてしまったら領地にいる時ほど自由には出歩け無くなるでしょうし、屋敷から出る事は殆んど無いと思うのよね。今のうちに楽しんでおきたいわ」


「ただ馬車に乗っているだけで無くて 魔物に遭遇したり賊に襲われたりして結構楽しめてるんじゃないですか?」

「まさか⁉ 流石にあんな事は楽しいだなんて思えないわよ!」


「冗談ですよ ーーー そうですね残りの道中で何処か良さ気な川が在って危険が無さそうだったら休憩するついでに ちょっとだけ試してみるのは良いかもしれませんね」

「本当に? やったぁ!」


「但しザックさんの許可が貰えたらですけどね」

「そこは和真の頼み方次第ね。頑張って!」

「えっ⁈ 俺が許可取りするんですか?」

「そうよ。私の付き人ですもの」

「・・・」


という事があって 今、景色の良い川の辺でエリザベートさんにルアー釣りの手解きをしている。エサ釣りは…… ご令嬢方には無理があるだろう。


「良いですか、此処に人差し指をこう引っ掛けてからこの金具を上げる… 竿を振りかぶってルアーが飛び出す瞬間指を外して…

糸が繰り出さなくなったら金具を元の位置に倒して竿を引き上げながらこのレバーを回して・・・」

見本を見せながら実演するがそんな簡単にうまい具合にルアー竿が振れる訳は無いだろう。

『ロディ、ラインの繰り出しとかタイミングに合わせて調節してあげて。どうせこの休憩時間だけで上手く行く訳ないんだから』

『 ”任せて” だって』


そしてエリザベートさんが見よう見まねで初キャストする。

まあ最初はポイントに狙って投げるなんて事は無理だから投げ込む場所は指示していない。


ニコニコしながら

「 ーーー こうね?」とロッドを振った。

大きな岩のすぐ下の深みに見事にルアーが落ちた。


「そうそう。緩急付けて竿を上下しながら糸を巻き取って… 」

「 ! 和真、なんか急に ”ガツン!” てなって竿が重いんだけどっっーーー 」

「えっ、ゆっくり糸を巻き取って… 慌てないで」


『さすがロディ、エリザベートさんの投げ方でも狙いすましたところに持ってけるんだ』

『ロディは何もしてないんですって』

『まさかぁ~、 冗談だよね?』

『本当だって…… ロディが冗談を言った事なんて無いでしょ』


 ・・・


その後もエリザベートさんは上機嫌で釣りを続け

ビギナーズラックと言えるのか? 短い休憩時間に岩マスとカワメ合わせて五匹の釣果なんて・・・

俺の幼少期からの釣りに掛けた時間を返せ~~~


「アイテムボックスに入れてタウンハウスまで持って行きましょう」

「ふふふ、お父様とお母様喜んでくださるかしら?」

「きっとビックリなさいますよ」

「ありがとう和真、とっても楽しかったわ」


初対面の時はどうなる事かと思ったけれど この道中で本来のエリザベートさんの事を知る事が出来たのかもしれない。まだほんの一面だけだけど・・・


もうすぐ目的地に着くらしいけれど こんなに色々経験した旅は初めてだ。異世界なんて来た事が無かったから当たり前だけど……

そういえば春休みに入ってすぐにこの世界に飛ばされて来たんだ。

休みが明ければ一応、受験生になっているんだな。


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