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48/62

48 交戦


今回の相手は知恵のある人間だ。こちらも魔物相手の戦い以上に頭を使った連携や戦略などが必要となるのだろう。まだザックさんには聞けてないけれど、使用する魔法や武器の種類も沢山有るんだろうな。相手の戦力や手の内が分らない以上 苦戦を覚悟しておく事がセオリーだ… たぶん。


俺のとっては生まれて初めての対人戦、さすがに探知魔法では ”敵意” と ”殺意” の区別はつかないらしい。例えば敵に明らかな殺意があったとしても俺が精神的に受け入れられる反撃の手段は なるべく相手を傷付ける事無く戦闘不能状態に持っていく事くらいだろう… 普通に考えて今の俺には無理な芸当だ。

しかし俺には頼りになる精霊が三人も付いている。ロディの宿った釣り竿で攻撃している間はロディの結界に守られるし 武器となるその釣り竿も攻撃力等、細身の見た目に反して様々な力を発揮できるはず……

まあ元々は異世界の道具、この世界には存在しない物だから此処の誰にも本来の使い道さえ見当もつかないだろう。


リリィも相手を視界に捉えさえすれば鑑定魔法でその能力を把握する事が可能だから敵の持つ力に合わせた攻撃が出来る筈。それでも不利な状況に追い込まれた時は最終手段としてチャリが雷魔法を発動して相手を失神させる、という奥の手が有る。後でザックさん達に謎の魔法について説明が必要になる事を考えるとなるべく使いたくない手段ではあるが 守るべき人達の安全には代えられない・・・ 


チャリに自動走行して貰いながら アイテムボックスから取り出したルアーケースの中から キャストする距離に見合った重さのルアーを探し 腕輪から釣り竿に変化したロディに取り付ける。ルアーの大きさや重さに関係なく敵が何処に居ようともロディが確実に敵に命中させてくれるのだろうけど そこは釣り好きとしての気分の問題だ。


『ルアーのフックって外しておいた方が良い? 万が一カバーが外れて木の枝なんかに引っ掛かちゃうとシャレにならないし…… 』


『そんな心配は要らないわ。飛ばしたルアーの先まで 動きはカズマの思うがままよ。何かにフックを引っ掛けたい場合はそう念じればいいわ。だからカバーは敢えて外しておいた方が都合が良いのかも… 』

『そうなの⁈ じゃあ、カバーは外しておくよ』


さて、相手はどんな手を使って来るだろうか。

草木が生い茂った場所に差し掛かった時、木立の陰からいきなり四つの人影が飛び出して来たのと同時に数本の矢が飛んできた。

気配をいち早く察知したチャリが風魔法で矢を吹き飛ばした。

敵が襲い掛かって来る事を予測して既に臨戦態勢に入っていたこちらの騎士とは違い 不意を突いて放った矢で戦力を削ぐ予定でいたであろう敵達は一瞬呆気にとられたように立ち止まった。


陰に隠れていた射手が吹き飛ばされた矢を目にして一目散に逃げ出すのが見えた。ザックさんが馬車を停め反撃体勢に入ったので 俺も馬車のすぐ横にチャリを停めて今回は参戦する…… と言ってもチャリを降りてロッドを振り回し 逃げようとする射手めがけてルアーをヒットさせるだけだ。

飛び出して来たのは剣士が四人、残る一人が木陰に潜んでいるがどんな相手なのかまでは分らない。


取りあえず背を向けて走り出した射手目掛けてキャストした。ものすごい勢いで飛んで行ったルアーが逃げる相手の後頭部に見事にヒット── 相手は前のめりに倒れてそのまま動かなくなった。


『まさか即死じゃないよね⁉』

『心配ないわ。気絶しただけよ』

『もう一人は隠れて見えないけど… 』

『呪文を詠唱してるみたい… 何かの補助魔法でしょうね。そんなに強い魔力は感じないわ』

『取りあえずそいつもやっちゃっときますか!』


ラインを巻き取り終えたので再びロッドを振るう。

『ロディ、コントロール任せた!』


リリィが教えてくれた方向にサイドキャストでルアーを飛ばす。太い木の幹の後ろに回り込んだルアーに手ごたえを感じた。

「よっしゃぁ~~っ、 ヒット!!」


遠距離の敵二人を倒しノルマを達成したので 残りの敵と交戦中の騎士達の状況を確認する。

三対四の戦いだが相手はあまり実戦経験が無いのか 素人の俺から見てもこちらの騎士がかなり優位に戦っている様だ。


『リリィ、他に警戒するべき事は無い?』

『今のところ何も問題無いわ』


一応馬車に結界を張っているのは俺という事になっているので馬車から離れることは出来ない。離れた場所で倒れている敵の状態確認は後回しにして 移動すること無く騎士たちの支援をしようと思ったけれど 既に三人の敵が倒れていて残りの一人が逃走を図ろうとして駆けだした。


ちょっと気分的に余裕が出てきたので悪戯心が刺激される…

逃走者目掛けてキャストしたルアーは敵を直撃することなく狙い通り(ロディに願った通り)に襟元にフックが掛かる。

「ふふん、 大物がヒットしたぜ!」

ロッドを後ろに引き上げる・・・最後の一人が後ろにのけ反り倒れ込んだ。

すかさずザックさん達騎士が駆け寄って取り押さえた。


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