48 交戦
対人戦となると魔物相手の戦い以上に知恵を使った連携や戦略などが必要となる。戦闘に使用する魔法や武器の種類も様々な物となるのだろう。相手の手の内が分らない以上 本来ならば苦戦を覚悟しておく事がセオリーと言える。
しかし俺には頼りになる精霊が三人も付いている。ロディの宿った釣り竿で攻撃している間はロディの結界に守られるし 武器となるその釣り竿も攻撃力等、見た目に反した様々な力を発揮できるはず……
まあ元々異世界の道具、ここでは存在しない物だから本来の使い道さえ見当もつかないのだろうけど。
リリィも相手を視界に捉えさえすれば鑑定魔法でその能力を把握する事が可能だ。
それでも不利な状況に追い込まれる様な事になれば 最終手段としてチャリが雷魔法を発動して相手の意識を飛ばす、という奥の手が有る…… 後で騎士達に説明が必要になる事を考えるとなるべく使いたくない手ではあるが 守るべき人達の安全には代えられない・・・
チャリに自動走行して貰いながら アイテムボックスから取り出したルアーケースの中から キャストする距離に見合った重さのルアーを探し 腕輪から釣り竿に変化したロディに取り付ける。ルアーの大きさや重さに関係なく敵が何処に居ようともロディが確実に敵に命中させてくれるのだろうけど そこは気分の問題だ。
『ルアーのフックって外しておいた方が良い? 万が一カバーが外れて木の枝なんかに引っ掛かちゃうとシャレにならないし…… 』
『そんな心配は要らないわ。飛ばしたルアーの先まで 動きは和真の思うがままよ。何かにフックを引っ掛けたい場合はそう念じればいいわ。だからカバーは敢えて外しておいた方が都合が良いのかも… 』
『そうなの⁈ じゃあ、カバーは外しておくよ』
さて、相手はどんな手を使って来るだろうか。
草木が生い茂った場所に差し掛かった時、木立の陰からいきなり四つの人影が飛び出したのと同時に数本の矢が飛んできた。
気配をいち早く察知したチャリが風魔法で矢を吹き飛ばした。
敵が襲い掛かって来る事を予測していたこちら騎士とは違い 不意を突いて放った矢で戦力を削ぐ予定でいたであろう敵達は一瞬呆気にとられたように立ち止まった。
陰に隠れていた射手が吹き飛ばされた矢を目にして一目散に逃げ出すのが見えた。ザックさんが馬車を停め交戦体制に入ったので 俺も馬車のすぐ横にチャリを停めて今回は参戦する…… と言ってもチャリを降りてロッドを振り回し 逃げようとする射手めがけてルアーをヒットさせるだけだ。
飛び出して来たのは剣士が四人、残る一人が木陰に潜んでいるがどんな相手なのかまでは分らない。
取りあえず背を向けて走り出した射手目掛けてキャストした。ものすごい勢いで飛んで行ったルアーが逃げる相手の後頭部に見事にヒット…… 相手は前のめりに倒れてそのまま動かなくなった。
『まさか即死じゃないよね?』
『心配ないわ。気絶しただけよ』
『もう一人は隠れて見えないけど…』
『呪文を詠唱してるみたい… 何かの補助魔法でしょうね。そんなに強い魔力は感じられないわ』
『取りあえずそいつもやっちゃっときますか!』
ラインを巻き取り終えたので再びロッドを振るう。
『ロディ、コントロール任せた!』
リリィが教えてくれた方向にサイドキャストでルアーを飛ばす。太い木の幹の後ろに回り込んだルアーに手ごたえを感じた。
「よっしゃぁ~~っ、 ヒット!!」
遠距離の敵二人を倒しノルマを達成したので 残りの敵と対戦中の騎士たちの状況を確認する。
三対四の戦いだが相手はあまり実戦経験が無いのか 素人の俺から見てもこちらの騎士がかなり優位に戦っている様だ。
『リリィ、他に警戒するべき事は無い?』
『今のところ他には問題無いわ』
一応馬車に結界を張っているのは俺という事になっているので馬車から離れることは出来ない。離れた場所で倒れている二人を確認しに行くことは出来ないので ここから騎士たちの支援をする事にしたが 既に三人の敵が倒れており残りの一人が逃走を試みようとして駆けだした。
ちょっと気分的に余裕が出てきたので悪戯心が刺激される…
キャストしたルアーは敵を直撃することなく襟元にフックが掛かる。
「ふふん、 大物がヒットしたぜ!」
ロッドを後ろに引き上げる・・・最後の一人が後ろにのけ反り倒れ込んだ。
すかさずザックさん達騎士が駆け寄って取り押さえた。




