46 魔物に遭遇
ザックさん達護衛の騎士と魔物の情報を共有してから数分後、魔物達の潜んでいるすぐ手前まで馬車が近付いた。
「あの木立を曲がった先に魔物が集まっています。
ゴブリンらしき魔物三体とキラーウルフが五体、藪の中に潜んでいるみたいです」
お嬢様には既に この先で魔物と戦闘になるであろう事、どの程度の魔物なのかという事を判ったうえで対処出来るので何も心配は要ら無い という事は伝えてある。
今は御者を務めているリーダーのザックさんだが、馬車を操りながら魔物と戦う事は出来ない。騎士二人だけで八体の魔物の相手をするのでは いくら下級の魔物相手とはいえ此方にとっては不利だろう。
ザックさんも参戦して馬車を気にせず魔物に集中する事によってかなり優位に戦うことが出来る。魔物と遭遇したら速やかに馬車をより安全な場所に停めなければならない。
「和真の気配察知スキルは凄いな。馬車を停めたら和真は打ち合わせ通り
結界を張ってお嬢様と馬車を守ってくれ」
「はい、任せて下さい」
チャリには念のために森に入った時から結界を張って貰ってある。
予測していた通り 前方の木立の陰から五頭のキラーウルフが一斉に飛び出して来た・・・
不意打ちを食らったら戦い慣れた騎士達でも慌てるのだろうが 俺が前もってどの場所でどの方向から何頭飛び出すか伝えてある。既に抜剣して構えていた騎士の元に飛び込んだウルフ二頭は最初の一撃で深手を負った。
直後、横の茂みからゴブリンが飛び出して来た。予想していた襲撃に馬車を停めて既に準備していたザックさんが御者台から飛び降りて交戦中の二人に加勢する。
俺はチャリに 騎士達にバレない様に魔物達の動きを止める程度の雷魔法を発動して貰った。
チャリの手助けが無くても問題無かった様で戦闘になってから僅か数分でケリがついた。この世界に来て初めて目にした魔物相手の騎士の戦闘力に圧倒された。
そういえば騎士も戦闘に魔法を使ったりするんだろうか。
今度余裕のある時にでも聞いてみよう。
戦闘を終えたばかりのザックさんに近寄り気になっている事を耳打ちする。
「お嬢様には余計な心配をさせないように内緒にして頂きたいのですが、最初に魔物の気配を感じた時に不自然にこの場所に集まって来ている感じがしたんです。何かこの辺に魔物が集まって来る原因になるような物って無いですか?」
「そうなのか? 一応周りを探索しておいた方が良いかもしれないな。万が一人為的に魔物が集められたのなら これからも色々な面で警戒しなければならなくなるからな…… 探索の結果、何事も無ければ多少は安心出来るというものだ」
「人為的な原因があった場合、何か心当たりが有るのですか?」
「中級貴族による ”聖女選定の儀” の妨害工作が考えられるが今はそれ以上の事は言えない」
「分かりました。それだけ分かれば十分です。俺も一応対人の為の警戒をしておきます」
馬車の中で震えているであろうエリザベートさんと侍女達にザックさんが無事に戦闘が終わったと声を掛けた。
侍女は手を取り合って震えていたようだったけれど エリザベートさんは流石辺境伯御令嬢だけあって肝が据わっているようだ。
「魔物相手の激闘、お疲れさまでした。皆様、お怪我は有りませんか?」
気丈にも騎士達を気遣う事を忘れていない。
出会った頃は我儘な令嬢に見えたけどやはり選定の儀に思うところ有っての態度だったのだろう。自分ではどうしようもないと諦めてしまったら無気力になり苛立ったり我儘を言ったりする事も出来ないのかもしれない。
選定の儀に少しでも希望を持って立ち向かおうとしている様でとても芯の強いご令嬢なのかもしれない、と彼女に対する認識を改める出来事となった。




