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44 雨の日の暇つぶし?


ちょっと散策するつもりだったのが 厨房で慌ただしく動き回っているうちに昼食の時間になってしまった。

俺が提供した食材の内、ギルドで太鼓判を貰った岩マスは お嬢様をはじめ市長のご家族方の昼食のメインディッシュとしてムニエル風に調理された。その他の野菜等も付け合わせやスープの具材としてランチに彩りを添えている。


魔物肉はジムさんによって見事に解体され 希少部位はディナーのメイン料理として供される予定だ。大半を占める硬くて癖のある部位は香味野菜等と共に下茹でした後、シチューなどの材料になるのだけれど 劣化する前に食べ切るには量が多過ぎるという事も有り 使用人達にも振舞われるらしい。下処理さえすれば美味しく食べられる希少な肉なので皆楽しみにしている。


伯爵令嬢御一行の急遽の滞在延長に於いて一番の問題となっていた食材が手に入った事で 何とか来客用ランチとしての体裁が整った。厨房を預かる調理人達も肩の荷を下ろす事が出来ただろう。

出来上がった料理の品々と共に デザートにはちょっと重い気もしたけど俺様お手製のスイートポテトも添えて貰った。


厨房の一角を拝借しての作業を終えて昼食を摂りに使用人の食堂へ行くと 昨日感じた部外者扱いの疎外感は無くなって 気軽に周りの人が話しかけてくる。 持ち込んだ珍しい食材や調理方法の事などをネタに会話が弾み思いのほか楽しい昼食の時を過ごした。


何気なく窓に目をやると雨はまだまだ土砂降りで益々空が暗くなってきた気がする。昼からは雷雨になる事間違いなさそうだ。

昨夜心配したシャンプーの使い心地もお気に召して頂けたようで雨の中、町中を探し回る必要は無さそうでほっとした。


昼食後、調理人と約束したデザート作りの実演前に 一息つこうと部屋に戻って寛いでいると昨日と同様、いきなりドアが開き顔を上気させたお嬢様が立っていた。

二度目という事もありちょっとしたツッコミを入れてみる。今までのやり取りからみて本気で怒ることは無いだろう。


「本当に伯爵令嬢なんですか?」


「当たり前じゃない! どこから見ても伯爵令嬢にしか見えないでしょ」


「冗談が言えるほど元気になられて良かったです」


「・・・」


なんとなく俺に対する態度が姉ちゃんのそれに近いんだ、と思うようになってきた。姉ちゃんとは比べるのも憚れる程美人だけど・・・


「で、今度はどうしました?」


「ま、まあいいわ… ランチに出ていたデザートをカズマが作ったって聞いたんだけど本当なの?」


目が合わない様になのか照れ隠しなのか ツンと澄ました顔を横に向けて小さな声で尋ねられた。初めて会った時のあの仕草だ。


「ええ。スイートポテトですね。お味は如何でしたか?」


「そ、そうね、、 まあまあ… だったかしら。食べた事がないお味だったから 何を使ったのかちょっと気になったのよ」

幾分目が泳いでいる様にも見える…


「気に入って頂けたなら良かったです。材料は ”サツマイモ” という芋の一種ですね。私の故郷では一般的でよく食べられている芋ですよ」


「お芋なの? 香りも独特ですごく食欲をそそられたから

 ランチでお腹一杯だったのについつい食べ過ぎてしまったわ」


驚いた様に目を丸くしてこちらを振り返った顔が素直でちょっと可愛い。出た来た言葉は素直じゃない気もするけれど…


「それなら夕食のデザートは無い方が良いですね?」

表情がころころ変わって面白いのでちょっと意地悪な事を言ってみたくなった。


「えっ、カズマってまだ他に何か作れるの?」

素直に驚いた、と言った感じだが目がキラキラとしている。期待されている?


「俺が作れるのは簡単な物ばかりですけどね。

 今日は雨で家の中で過ごすしかないから退屈凌ぎに作っただけですよ」


サツマイモはバリエーション豊かな食材だ。焼いても蒸しても揚げても煮ても茹でても─── 美味しい。

その上芋のままなら日持ちする。婆ちゃんは ”代用食” なんて言ってたっけ。


「サツマイモは油で揚げただけでも十分美味しんですけど…… 

 食べ過ぎはご令嬢にとってはちょっとお勧めできません。

 次は何か他の物考えますよ」


「じゃ…… それならディナーも楽しみにしているから。

 ありがとう。カズマ」


そう言うとエリザベートさんは部屋に引き上げて行った。

昨日といい今日といい初めて顔を合わせた頃とは別人のようだ。本当に素直で明るく感じる。

これでまた明日も雨なんていう事にならなければ良いんだけど。


暫くして厨房に行って作業していると遠くで雷が鳴っているのが聞こえて来た。

おやつ作りも楽しいけれど明日も足止めなんて事にならない様に心の中で

『明日は天気になぁ~れ!』

と祈っておいた。


因みにディナー用のデザートは卵を使って固めた俺流簡単カボチャプリン。

冷蔵庫なんて無いから冷やすのに多少の苦労は有ったけれど

お嬢様をはじめ試食した人達には好評だった。


雨が降って憂鬱な一日だったけれど、人間てお腹が満たされれば心も満たされるって言うから? また明日からの旅に備えて良い休息になったと思っておこう。


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