44 雨の日の暇つぶし?
なんやかんやと厨房で慌ただしく過ごしているうちに昼食の時間になってしまった。提供した魔物肉は見事に解体され希少部位はディナーに供されるそうだ。
大半を占める硬い部位は今から煮込んでシチューなどの材料になり使用人達にも振舞われるらしい。
岩マスは数が足らず使用人の口には入らないが昼食のメインとしてお嬢様方に召し上がって頂く予定だ。
デザートにはちょっと重い気もするけど俺様お手製のスイートポテトを添えて貰った。
食べきれなければティータイム迄そのまま取っておいても良い。
雨はまだまだ土砂降りで益々空が暗くなってきた気がする。
昼からは雷雨になる事間違いなさそうだ。
シャンプーも気に入って貰えたようで雨の中、町中を探し回らなくて済みそうでほっとする。
昼食を摂りに使用人の食堂へ行くと周りの反応が昨日と打って変わって友好的 持ち込んだ珍しい食材の事など聞かれて会話が弾んだ。
思いのほか楽しい昼食を済ませた。
昼食後、約束している午後の作業前に一息就こうと部屋に戻って寛いでいると
昨日と同様、いきなりドアが開き顔を上気させたお嬢様が立っていた。
「本当に伯爵令嬢なんですか?」
「当たり前じゃない! どこから見ても伯爵令嬢にしか見えないでしょ」
「冗談が言えるほど元気になられて良かったです」
「・・・」
「で、今度はどうしました?」
「ま、まあいいわ。
ランチに出ていたデザートを和真が作ったって聞いたんだけど本当なの?」
「ええ。スイートポテトですね。お味は如何でしたか?」
「そ、そうね…… まあまあ…だったかしら。食べた事がないお味だったから
何を使ったのかちょっと気になったものだから・・・」
「気に入って頂けたなら良かったです。材料は ”サツマイモ”
という芋の一種ですね。私の故郷では一般的でよく食べられている芋ですよ」
「お芋なの? 香りも独特ですごく食欲をそそられたから
ランチでお腹一杯だったのについつい食べ過ぎてしまったわ」
「それなら夕食はデザートは無い方が良いですね?」
「えっ、和真ってまだ他に何か作れるの?」
「俺が作れるのは簡単な物ばかりですけどね。
今日は雨で家の中で過ごすしかないから退屈凌ぎに作っただけですよ」
サツマイモはバリエーション豊かな食材だ。焼いても蒸しても揚げても煮ても茹でても・・・美味しい。
その上芋のままなら日持ちする。婆ちゃんは ”代用食” なんて言ってたっけ。
「サツマイモは油で揚げただけでも十分美味しんですけど……
食べ過ぎはご令嬢にとってはちょっとお勧めできません。
次は何か他の物考えますよ」
「じゃ…… それならディナーも楽しみにしているから。
ありがとう。和真」
そう言うとエリザベートさんは部屋に引き上げて行った。
昨日といい今日といいちょっと前とは別人のように素直で明るく感じる。
これでまた明日も雨なんていう事にならなければ良いんだけど。
暫くして厨房に行って作業していると遠くで雷が鳴っているのが聞こえて来た。
おやつ作りも楽しいけれど明日も足止めなんて事にならない様に心の中で
『明日は天気になぁ~れ!』
と祈っておいた。
因みにディナー用のデザートは卵と牛乳を使った俺流簡単カスタードプリン。
冷蔵庫なんて無いから冷やすのに多少の苦労は有ったけれど
お嬢様をはじめ試食した人達には好評だった。
雨が降って憂鬱な一日だったけれど、人間てお腹が満たされれば
心も満たされるって言うから? また明日からの旅に備えて良い休息になったと思っておこう。




