43 調理場で
調理場に入って先ずカボチャとサツマイモの説明をする。
「これは他国のカボチャですが皮が固いので切る時に注意してください。中は…空洞になっています。煮たり蒸したりすると軟らかくなり甘味があります」
異世界で栽培したカボチャは以前使った時に何故か種が無かった。多分これも空洞になっているんだろう。
「例えば軟らかくしたものをつぶしてスープにするのもお勧めですけど
よりコクを出す為に一緒に入れる食材で何か動物の乳ってありますか?」
「クラインブルの乳を使う事はあるが日持ちしないから今は手持ちが無いな。
必要に応じて農家に仕入れに行くが生憎今日の天気では買い出しは無理だな」
「じゃあ後で俺がストックしてあるのを持ってきます」
この世界で牛乳っぽいものが有るか分からなかったので聞いてみたが
食材で何かの乳が有るみたいだから使っても大丈夫だろう。
「それは助かる。この野菜も一度火を通して味見してから調理方法を考えよう」
「はい。こちらの方々に合った料理が出来るのでその様にした方が良いと思います」
家ではよくカボチャのポタージュを飲むけれどあちらの世界でも好き嫌いが分かれる一品だからな。あとは調理人のセンスに任せるしかない。
「この芋も甘味が有るから俺はこれを使ってデザートっぽい物を作ります。
パン窯をお借りして良いですか?」
「パン窯は常に種火が残っているから空いている時に自由に使ってくれ」
ここでは三食殆んどパンが出て来る。パン窯は日中は保温程度に火が入ったままの様だ。
早速サツマイモを洗って丸ごと窯にほり込んだ。焼きあがるまで20~30分はかかるだろう。その間にチャリまで牛乳を取りに行く。
大人数だからカボチャスープに入れるなら三本位あった方が良いのかな。もし余ってもホットミルクとかで飲めるしロイヤルミルクティーなんて淹れたらエリザベートさんが喜びそうだ。
勿論チャリで行って買った牛乳は紙パック入り。ジャックさんが不思議そうな顔をするので「異国で纏めて手に入れた物です」と誤魔化し質問には白を切る。
焼き芋の匂いが立ち込めてきたのでそろそろ良いかなとフォークを刺してみて焼きあがった芋を取り出した。
縦半分に切って皮を破らない様に少し身を残す程度に中身をスプーンでこそげ取ってボウルに入れてヘラで潰す。
男の料理、おまけにここは異世界。なので裏ごしなんて面倒な手間は省きバター、砂糖、牛乳を適当に入れてしっかり混ぜる。大体サツマイモなんて焼いただけで美味しい。
出来上がった種を取っておいた皮にこんもり盛り付けた。
この世界、アルミのカップなんて便利な物は存在しないだろう。
最後に卵の卵黄を少量の水で溶いたものを刷毛…が無いのでスプーンで掬って塗りつけた。
鉄板の上にのせて窯に戻し焼き具合を見ていると何とも言えない匂いが広がっていく。
良い艶の焼き加減になったので調理台の上に取り出した。昼も近いという時間的な事も有ってか気付けば周りには今にも涎が垂れそうな顔をした使用人が集まって来ていた。
取りあえず味見という事で小さく切り分けて皆で摘まんだ。
やはり裏ごししてないから滑らかな食感とはいかないけれど甘味も十分あって香りもいい。試食した人達の反応は・・・かなり美味しかったみたいだ。皆残してあるお嬢様用のスイートポテトに目が釘付けだ。
「これはお嬢様にお出しする分です。よろしければ昼過ぎに皆さんの分をお作りしますよ」
「それなら昼からは作り方を教えてくれないか」
教えるのは良いけど材料は俺がいないと準備できないんだろうな。
でもそこはプロの調理人、調理方法を知れば材料も工夫次第でスイートポテトっぽい何かが作れるのかもしれない。




