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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第二章――第二次典痘災害『下』

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第264話 最善の選択

(駄目だな……こんなんじゃ)


 足元に転がった三人の死体を横目に、レイがため息をく。

 どうも最近、物事を穏便に済ますことができない。すぐに事を荒立てたり、危険な方へと舵を切ってしまう。つまらない言葉に意味もなく歯向かったりと、血の気が多すぎる。

 今回だってもう少し穏便に話し合っていれば――結果こそ変わらなかったかもしれないが――もう少し相手の情報を引き出せたかもしれない。なのにいちいち煽って歯向かって、さすがに行動が馬鹿すぎる。

 事を無駄に荒立ててしまった。


(もうこれでこの家住めねぇか)


 レイが後ろにある家を見る。

 先に相手が仕掛けてこようとビルの傍で人殺しをしたテイカーなど、他の住民が怖くて管理人が許しても住民が許さないだろう。やはりテイカー専用の家を買うか建てるしかない。

 だが今は家のことなど調べている暇はない。


(鋼海重工か……何の繋がりだ)


 レイは追い出される前に必要なものだけでも運び出そうと家へと向かいながら、考える。

 レイが知る限りで鋼海重工とレイとの繋がりはなかったはずだ。仕事上でも私生活でも関わったことが無い。もしかしたらレイが忘れているだけ、気がつかなかっただけという線も考えられる。しかしレイが物事を忘れることはありえないし、事が荒立つような事案に気がつかないわけがない。

 ということは相手が一方的にレイのことを知って今回の行動を起こしたか、レイでも気がつかないような火の芽がどこかに埋め込まれていたかの二択だ。


(経済連……じゃないか)


 カイレン経済都市で声をかけてきた二人組の女たち。彼女たち恐らく機動部隊であろうが、ここまで追ってくるわけがない。そしてもし追いかけるのならばわざわざ尾行して家の前で待ち伏せするという回りくどいことはしないはずだ。

 だとしたら別の繋がり。


(テイカーフロントは無い……『稼働する工場』の……いや、もう解決してるはずだ)


 それに『稼働する工場』に関してはテイカーフロントが関わっている。レイに辿り着くのは至難だと言える。それに今更接触したところで『稼働する工場』はスカーフェイスが破壊している。


「中継都市……いや丸山組合か?」


 そしてタイタンか、とも思ったが鋼海重工が出て来る意味が分からない。きっとまた別の要因によるものだ。

 何が起きたのか、最近の出来事を思い出していく。

 『稼働する工場』の一件。アンテラからの依頼。その後は、地下都市の探索だ。


(…………)


 引っかかりを覚えた。ここに何かがある。というより意味不明で分からないことだらけであった地下都市の事案以外に鋼海重工と繋がる線は無いと言ってもよいだろう。


(リー・リエンか?)


 思えば、リー・リエンが地下都市にいた理由が不明だ。単に、リーが地下都市の存在を認知していて、探索をしているというのならば簡単に終わる話だが、そう簡単な話じゃないだろう。

 リーが常習的に地下都市の探索をしていたのならば、地下都市の特性についても知っていておかしくはない。リーはある程度を理解しているようではあったが、日常的に探索しているならば不明な動きが幾つかあった。もし一回目の探索を終えて二回目の探索をしようとしていたのならば、地下都市の特性について知らなくてもおかしくはなかった。だが、地下都市に一回でも言っているのならばリーの装備では足りないことも自覚していたはずだ。

 リーの戦闘方法を鑑みれば当然なのかもしれないが、それでもあの装備で地下都市の探索を試みるはずがない。場所の異常性を考えればもっと高価且つ性能の良い装備をしてくるのが普通だ。

 リーの徒手空拳のみを使って戦う戦闘方法は所謂いわゆるロマンだと誤解されやすいが、リーにとってはあれで一番合理的だったのだ。そしてリー自体、意味のない勝負を仕掛けたり無謀に挑むような人間には――少なくともレイには――見えなかった。

 

 だからリーが地下にいたのは全くの偶然だと考えられる。あれが一回目の探索だろう。

 だがレイと同じく全くの偶然で入って来たとも考えにくい。誰かからの手引きがあったと考えても良いだろう。その相手が鋼海重工であるという線。


「いや違うだろ」


 鋼海重工ほどの企業が気がついていたのならばわざわざリーに依頼して無駄な金を使うはずがない。私設傭兵で十分だ。

 だとしたらリーは鋼海重工の者ではない。レイと同じく偶然に入って来たか、今回の件とは全く関係のない第三者に雇われたかの二択だ。


「……じゃあなんだ。どこだ」


 家へと戻ったレイが準備を進めながらに呟く。

 あの男達がなぜレイの元まで来たのか、その要件が分からない。


「……いや」


 そしてもう一度、地下都市から遡ろうとしたレイがすぐにもう一つの疑問点を見つけ出す。

 レイが地下拠点から脱出した後、ハカマダと共に車両を待っている時のことだ。レイは荒野に置いてきたままの車両の状態を確認しようとカメラを起動して車両の周りを確認した。

 その時に確認できたのが数人の武装した者達。恐らくテイカーでは無く企業傭兵だ。

 レイは車両を爆破させることで身元の特定を防ごうとしたが、もしそこから辿られているとしたら上手くいかなかったらしい。だが仕方ない、車両の爆破程度では半分程度の確率でレイへと至る証拠が残ってしまうことがある。

 もし、その企業傭兵が鋼海重工のものであったとしたら。レイにまでたどり着いてもおかしくはない。そして地下都市という『稼働する工場』をも凌駕するほどに希少性の高い情報。隠しておくのが普通だ。

 たとえ実力行使に出たとしても。

 

「じゃあどっちにしろ変わんなかったってことか……」


 もし地下都市に関してのことであれば、あの後にレイが男達についていったところで結果はあまり変わらなかっただろう。ならばあそこで殺しておいてもよかった。どうせ敵対することは目に見えていた。


(鋼海重工か、面倒だな)


 企業傭兵をレイの元まで向かわせてくるのならば良いが、もしかしたら懸賞金をかけられるかもしれない。そうしたら面倒だ。企業と個人では分が悪すぎる。そして時間が経てばたつほどレイの状況は悪化していくだろう。

 まだ鋼海重工側が対応に手間を取っている間にレイは何かしらの対策を取る必要がある。というより、ここでレイが有効的な対策を講じなければ鋼海重工という大企業にも迫る企業との全面対決は避けられない。

 レイが全力で相手をすれば良い勝負になるだろうが、どちらかが完全に死ぬ。そしてレイは生き残れたとしてもその後に抱える問題というのが数多く残ってしまう。確実に、都市から目をつけられるだろう。

 

 故に早めの対策が必須。

 考えられる策として実力行使だ。鋼海重工の体勢が整う前に本社を攻撃する。だがそれでは無関係の人を巻き込む。拘束されるだろう。しかしそうしなければレイが殺されてしまう。ただどう考えてもこの案は危険だ。もうどうしようも無くなればこれでも良いかもしれない。それこそ後先考えないような事態に陥ればこの選択を選び取るのもやむ負えない。

 しかしまだレイには別の対策を講じれる時間がある。


 レイはおもむろに通信端末を取り出してある人物へと電話をかける。かなり忙しい相手であるので出てくれるかはほぼ賭け。だが幸い、三回目のコールでその人物は出てくれた。

 

「お久しぶりです、レイさん。どうしましたか」

「久しぶり、《《イナバ》》さん」


 テイカーフロント、クルガオカ都市本部の顔役であるイナバ。企業と水面下で敵対関係にあるテイカーフロントにレイは助けを求めた。


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