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放課後の竜機士  作者: 榊出
第二章:それぞれの初陣
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第二十一話

 ついに無職でヒモ生活と他の人にばれてしまった主人公w

「サクラッ!」


 泣いている立花さんを落ち着けようと、とりあえずサクラを呼ぶ。


「はいっ」


「彼女は立花さん……まれびとだ。俺と同じ日本人で、安心したんだと思う」


 急いで側に来てくれたサクラに小声で説明する。


「え?!」


「出来れば、日本語で安心させてあげて」


「わかりました」


 サクラは立花さんの側に行き、泣いている立花さんの頭を抱くと、何か声をかけている。


「レリムさんー!」


「はい、どうしました?」


 いきなり泣き出した立花さんを遠巻きに皆が見ている。

 サクラとレリムさんは例のコクヨウさんのアイアンクローで日本語が分かる。

 多分、近藤さんはここの共通語が分からないと思って、フォローを頼む。


「……彼女は俺と同じ日本人です。落ち着ける場所はありますか?」


「あらあら」


 レリムさんと一緒に来たリーアさんにも一緒に説明した。


「すぐテントを張りましょう」


「トール君、手伝って」


「はい、サクラ!テントを貼るまで側にいてあげて」


「わかりました」


「テントを張るのですか?お手伝いしますわ」


「お手伝いしまス」


 いつの間にかアリスさんとルーリさんも手伝ってくれる。

 まれびとの事があるから、あまり手伝って欲しく無いんだけど、もう断れない。


「……ありがとうございます」







 俺達はテントを張ると、近藤さんとサクラに入ってもらい、外にリーアさんとルーリさんに見張りを頼んだ。

 一応、通学で使っていたバッグを黒狼から降ろしてテントに持ち込む。


「落ち着きましたか?」


 立花さんはサクラに肩を抱かれていた。

 レリムさんはお茶を入れるために今は商隊の方に向かってもらっていた。

 泣くのを止めて、しゃっくりをあげていた立花さんに聞く。


「……うん」


「俺のは名前は水無瀬徹。あなたと同じ日本人です」


「やっぱり……。ア、アタシは立花忍」


「立花さんはいつ頃こちらに?」


「アタシは……」


 とりあえず先に立花さんの話を聞く。

 彼女は一週間ぐらい前に、チューレの街の外壁の池の近くで気が付いたらしい。

 街に入ろうとして、竜機兵に気が付いて、地球とは違う事がわかった。

 言葉も聴いたことが無く、文字も分からなかったので、警戒してなるべく街中に入らないようにしていた。

 食事はチューレの街の外縁部の畑で夜にこっそり野菜などを盗んで食べた。

 で、今日、急に街が慌しい雰囲気になり、商人や農家の人達が街中に避難するので、自分も一緒に紛れ込んだ。

 街中の工房近くで竜機兵を観察していたら、黒い竜機兵が歩いてきて、よく見ると漢字が書いてあったので付いてきた……。

 との事らしい。


「一週間ですか……」


「……うん」


 俺とは結構誤差があるなぁ。


「み、水無瀬君だっけ?そっちはどうしてココに?」


「俺は、二ヶ月ぐらい前に……」


 俺はレオリースに来てからの話をした。

 ドール村の浜辺に倒れていた事、コクヨウさんとサクラに拾われた事。


「……えぇ!こんやくしゃぁ?!」


 サクラの話をすると、立花さんが驚く。

 まぁ、普通の日本人だと驚くわな……。

 サクラはは「エッヘン」って感じだ。

 黒狼をコクヨウさんから貰った事。

 で、例の「私立晴蘭女子学校」の制服の件で今、旅をしている事を話した。


「すげぇなぁ……まだ二ヶ月で……」


「俺は運が良かったんだよ……で、やっぱり立花さんもあのバスに?」


「あぁ、雨降ってたからあの日は、チャリじゃなくてバスに乗ってたんだ」


 俺も病院帰りで、乗ってた事を言うと、立花さんも「あの光を見て、気が付いたらココだ」と言っていた。

 晴香もこの世界に来てる可能性が高い……


「バスか……俺は前の方に乗っていたからあまり覚えて無いけど、何人ぐらい乗ってたか覚えてる?」


「多分、20人ぐらいは乗ってたと思う。アタシの学校は工業だからさ、元々女生徒が少ないんだ。で、あの時のバスは知り合いも乗ってなかったし。晴蘭の子ばっかりだったんで、余り見てなかった」


 20人か、多いな。

 全部が見つけられるか分からないけれど、やるしかない。


「お茶をどうぞ」


 そこまで話をしていた時にレリムさんがお茶を持ってきてくれた。

 よっぽど空腹だったのか、ハーブの香りに反応して、立花さんの腹が「クゥ~」と鳴る。

 俺とサクラは腰に付けていたバッグから移動用の干しフルーツの入った固焼きしたクラッカー出した。


「とりあえずコレを食べてて」


「す、すまねぇ」


 腹の音が恥ずかしかったのか、立花さんは真っ赤な顔をしてクラッカーとお茶を受け取る。

 立花さんがクラッカーを食べ終わるまで、俺達のお茶を飲んだ。


「で、立花さん……」


「あー、忍で良い」


 立花さんは苦笑して言った。


「じゃあ、俺の徹で良いよ。で、俺達みたいなのがこの世界にはたまにあるらしい」


「へぇ」


「異世界からこの世界に来た人は「まれびと」って呼ばれるんだけど」


「まれびとねぇ……」


「あのバスの乗客は俺の妹を含めて、こっちに来てる可能性が高い」


「徹の妹も乗ってたのか……」


「ああ、それとまれびとは、かなり危険だと思う」


「危険?」


「ちょっとした知識でも権力者に利用されるかもしれないし、それこそこの世界には奴隷制度もある」


「ど、奴隷制度?!」


 奴隷と聞いて忍は青ざめる。


「日本とココじゃ言葉はもちろん、知識や価値観が全然違う。奴隷制度も話を聞くと多分無いと色々困るらしい」


 奴隷は契約の魔法で主人に絶対に逆らえない、犯罪者や借金などで奴隷になる事が多い。

 犯罪者の抑制や、破産者の受け皿だけではなく、開拓や農業、鉱山なにかにも奴隷が無いと困るらしい。


「たしかに……日本とは勝手が違うからな」


 自分もそれで苦労したと忍は言う。

 普通に向こうの世界で海外に行っても情報が無いと、どうしようも無いと思う。

 ネットや本があれば、ある程度の海外での文化の違いは分かるし、調べられるけど、ココには本すら手に入り難い。


「知識も過去のまれびとが色々伝えてる事もあるけど、たとえばこの世界にはトマトはあったけどケチャップは無かった」


 ドール村とレギスさんのケチャップの話をする。


「まぁ、俺も野球ばっかりでそんなに知識は無いと思うけど、ケチャップだけでも結構な大事だし……」


「なるほどねぇ」


 忍は「実技は得意だったけど勉強はねぇ……」と言う。


「で、俺はまれびとを出来るだけ保護したいと思うんだけど……出来れば忍にも手伝って欲しい」


「あぁ、アタシに何が出来るかわからないけどさ、それは手伝うよ。逆に放り出されても困るし……助けてもらった恩は返さないとな」


「よろしく」


 俺はそう言うと、忍に手を差し出した。忍ははにかむと、俺の手を握り返し握手した。







「とりあえずは服ですね」


 拾ったローブと制服じゃまずい。制服も日本じゃ普通でもこの世界ではありえないぐらいスカート短いし……。


「だな、あと言葉が何とかなればなぁ」


 俺とサクラ、レリムさんは例のアイアンクローで日本語とレオリースの共通語を覚えたが、コクヨウさんの居るドール村に戻るのはまだ先になる。


「サクラはアレ出来ないよね?」


「すいません、アレは精霊魔法じゃないので、私には無理です。それにかなり古い魔法なので、知っている人もほとんど居ません」


 まぁ、この世界は1000年前から、言葉を話せる人はほとんど同じ言葉を話してたんだからしかたがないか……。


「……あのう、よろしいですか?」


「あ、はい」


 アリスさんが声をかけてきた。

 考えてみればアリスさんは最初からテント内に居たなぁ。日本語で話しをしていたから内容までは分からないと思うけど、どうしよう……。


「言語共有の理術なら、わたくし使えますわよ?」


「へ?」


「と、言いますか……わたくしも使っておりますので、今のお話は全部分かりましたわ」


「全部ですか……?」


「ええ、全部です」


 アリスさんはそう言うとにっこり笑った。

 サクラの方を見ると、サクラも驚いた顔をしている。


「まれびとの件は黙っておいて欲しいんですが?」


 俺はちょっと声を低めに言う。


「もちろんですわ。事情聞いてしまいましたし、どうこうする事もありませんわ。ただ……」


「ただ?」


 何か要求されるのか?


「ヒュリオンまではとりあえず同行させてもらっても、よろしいでしょうか?」


 アリスさんの正体や目的がわからないし、見張るためにも一緒に居た方がいいか? 例のアイアンクローを使えるなら、忍にとっては楽になるし……。

 そこまで考えて、サクラとレリムさんを見ると、二人は頷いた。


「俺達はかまいませんが、一応、俺達もレーヴまで商隊護衛中なので、商隊の隊長のレギスさんに聞いたほうがいいと思いますが?」


「わかりました。では少々お待ちください」


 アリスさんはそう言うと、テントから出て、ルーリさんと何か話すと、リーアさんと一緒に商隊の方に向かった。


「で、アタシはどうなるんだ?」


「あぁ、ごめん。忍は……どうしよう?」


 サクラに相談する。


「そうですね、アリスさんに理術をしてもらってからになりますが、一緒にヒュリオンまで行ってもらうしか無いですね」


「だなぁ」


 その後はヒュリオンに居る、東雲さんに会って見ないと決められないか。

 よかったら、皆でドール村までいっしょに来てもらうのも良いかもしれないし。

 これからの事を四人で相談したり、雑談をしていると、ふいに忍が言い出した。


「ところで、徹さぁ」


「あ、何?」


 同郷なのもあるし、忍はさっぱりした性格なのか、話しかたなのか、慣れてくるとお互い部活の友達のような口調で話せる。


「徹の嫁のサクラさんだっけ?」


「うん」


「彼女はエルフ?」


 嫁と言われて嬉しそうなサクラが頷く。


「エルフって知ってるのか?」


「まぁ、ゲームとかに良く出てくるから知ってるけど」


 ゲームとかで出てくるのかぁ。


「俺は知らなかったわ、ゲームとか小学生ぐらいからしてないし」


「まぁ、でも凄い美人?美少女?嫁で、普通はうらやましいと思うんだけどさぁ」


 サクラは美人で俺自身も褒められると嬉しい。


「美人ですか……」


 サクラも真っ赤な顔をして照れている。


「徹、アンタ「ヒモ」だよね」


 忍はにやにやしながら言い切った。レリムさんは苦笑している。

 ……あー……収入があるまで考えないようにしてたのに……こいつは。


「だよなぁ……努力してるんだけど……俺、まだ収入が無いんだよ……」


 俺が大げさに落ち込むと、サクラが頭をなでてくれた……。



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