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放課後の竜機士  作者: 榊出
第二章:それぞれの初陣
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第十九話

 総合評価ポイントが100ポイント超えました。

 皆様ありがとうございます。

『では、赤鬼が見届けするわよ』


 リーアさんが、サクラとアリアンロッドの戦術機関士と簡単な打ち合わせをする。

 基本的に竜機兵の外部音声は戦術機関士が魔力を使って操作するので、竜機士は外部に声を出せない。そもそも戦闘中に喋る余裕も無い。で、サクラとリーアさんとアリアンロッドの戦術機関士が相談する事になる。

 アリアンロッドの戦術機関士の声は女性で、ハキハキした可愛い声だ。

 どちらかの竜機兵が戦闘不能になるか、負けを認めるかヴェルデンが止めるまでが今回の一騎打ちのルールらしい。


「サクラ、槍とマント、バッグをパージ」


「はい」


 サクラは俺の指示で黒狼の背負っていた槍とマント、そして腰につけていたバッグのロックを外す。

 アリアンロッドを見ると、あわててバッグを外そうとしている。

 バッグを外したアリアンロッドからバッグを預かると、ヴェルデンの近くに黒狼の装備と一緒に固めて置いた。


「向こうも慣れてないのかな?」


「かも知れませんが、私達は初めての一騎打ちですし、胸を借りましょう」


 俺達はそう言うと、ヴェルデンから離れるように黒狼を歩かせた。







 黒狼とアリアンロッドは、街道から少し離れた所にある荒地で正対していた。

 見回すと、足元に大きな石や岩は無さそうで足場は良い。サクラも特に何も言わないので、周囲に危険な感じはしない。

 街道側に、他の商隊か馬車が何台か見える。


「……ふぅ」


 俺は一度、息を整えて合図を待つ。


『では双方構えて』


 黒狼の大刀を鞘から抜き、両手で正眼に構える。

 アリアンロッドは両手に細身の剣を持って構える。


「サクラ、初手から飛ばすぞ」


「了解しました」


 俺は薄手の皮手袋をはめた両手で、操縦桿を握りなおす……。


『では……始め!』


 黒狼を合図と同時に大刀を下段に下げつつ踏み込ます!

 アリアンロッドとの距離を一気に詰める。


「ッシ!」


 ギンッ!


 アリアンロッドはこちらの初手を見ようとしたのか、黒狼のダッシュに反応はしたが、防御に持ってきた細剣を強引に下段から左手の細剣を跳ね上げる。

 左手の細剣を跳ね上げて体勢を崩そうを思っていたが、アリアンロッドは細剣を手放してしまっていた。


「ラッキー……」


 左手にあった細剣は、20メートルほど回転しながら飛ぶと、地面に突き刺さる。

 俺は、そのまま強引に反動で肩より持ち上がっていたアリアンロッドの左腕の下に黒狼の右肩をぶち当てた。


 ガツンッ!


『キャァ!』


 アリアンロッドの戦術機関士が一瞬悲鳴を上げると、体勢を大きく崩す。

 そのまま追撃をしようとすると、アリアンロッドは体勢を崩しながら右手側の細剣を鋭く突き出してきた。

 思ったより、速くて正確な突きをあわてて大刀ではじく。


 ジャリンッ!


「今のはやばかった!」


 俺はアリアンロッドの攻撃の速さを警戒して、間合いを取った。

 黒狼とアリアンロッドは再び正対する。

 アリアンロッドが右足を前に出し、半身に近い姿勢を取ると、俺は黒狼を再び正眼に構えさせる。

 俺は剣道を高校の体育の授業でしかやった事は無かったが、剣道部の友人の酒井が「正眼の構えは基本中の基本やで。どんな攻撃に繋げるのも、カウンターを仕掛けるのも極めたら自由自在や」と、体育の授業で教えてくれた。

 ヴォルトさんも「その構えを崩すのは面倒くさい」と言っていた。


 ……ハァハァ


 実戦の緊張感で、自分の呼吸が荒くなる。

 俺が呼吸を整える前に、アリアンロッドは仕掛けてきた。

 鋭い突きを正眼の構えから大刀で捌く。


「さ、酒井、基本は大事だよな……」


 俺にはアリアンロッドの攻撃にカウンターを入れるほどの技術は無いが、何度かの突きを大刀で捌くと、元の世界の酒井に感謝する。

 アリアンロッドは攻めるの止めると、もう一度間合いを取った。

 初手で左の剣が封じれたのが助かった。

 両手で今の突きをされたら捌ききれなかったかも……。


「ッ!トール様!?」


 サクラがいきなり悲鳴を上げた。

 ソレはアリアンロッドの斜め後に「……ストン」と音も無く舞い降りた。

 アリアンロッドは一騎打ちのために索敵をしていないのか、こっちに集中しすぎているのか気が付いていない!

 ソレはその巨体にもかかわらず、音も無く、予備動作も無く、アリアンロッドを鎌状の腕だか足だかで襲うとしている。


「ッチ!」


 俺は全速力で黒狼を走らせると、アリアンロッドを突き飛ばし、ソレの間に割り込ませた……。


 ガキンっ!


「キャァ!」


 ……ギギ、ギギギギギ


 とりあえずソレの両前足を大刀で受ける。

 激しい衝撃とサクラの悲鳴。

 そして、受け止めた黒狼の関節からの音。


『街道の方々!皆、集まりなさい!!』


 リーアさんが外部音声で街道の方に叫ぶ!


『レリム!レリム!!まだ聞こえるか?』


『は、はい?どうしましたか?』


『今、一騎打ち中に奴等が、甲蟲が現れた!』


『大型、数1……いや、まだ来るわ。全部で大型4!』


『っ!?わかりました!』


『レリム、増援は要らん、街の方に報告を優先!トール君はそのまま耐えてくれ!リーア、街道の方の誘導が終わったらアリアンロッドに部隊魔法への参加要請をっ』


『はい!』


 部隊魔法でヴォルトさんの切羽詰った声が聞こえた。







 ……ギギギギギギ


「サクラ、アリアンロッドは?」


「転倒したようですが、無事です……」


 正面の映像板に表情の無い甲蟲の赤い複眼が見える。

 コレが甲蟲か……凄い力だ。

 アリアンロッドに襲い掛かるまでに一瞬、見えた甲蟲は蜘蛛と螳螂を足したような外見をしていた。大きさは竜機兵よりもでかい。

 毛の山盛り生えた鎌みたいな前足を、黒狼に振り下ろそうとしている。

 それを、黒い大刀で受けていた。


「他にも来てる?」


「はい、まだ時間はかかりそうですが、同程度の甲蟲が三匹接近中」


 コレが後3匹。

 ヴェルデンは街道の方で一騎打ちを見物してた人達を一箇所に集めている。


 ……ギ、ギギギギギ、ギー


「肘の筋肉筒が!」


 サクラが黒狼の肘がそろそろ限界だと教えてくれる。


「アリアンロッドは?!」


「今、立ち上がりました!」


『助かりました!』


 アリアンロッドがリーアさんの部隊魔法に参加出来たらしく、アリアンロッドから竜機士らしい声がすると、無防備な甲蟲の横っ腹に細剣が突き刺さった。

 その一撃を喰らって甲蟲の力が緩む。


「こっちこそ!」


 力が緩んだ隙に甲蟲の前足から離れる。

 甲蟲は一旦離れた黒狼よりも、執拗に攻撃しているアリアンロッドの方に意識をを向けた。

 俺は甲蟲の右側に回ると、大刀で関節を狙い、後ろ脚を切断する。

 関節部でも思ったりも抵抗があり、切断面から白っぽい体液が流れ出る。

 甲蟲に痛みがあるのか分からないが、今度は足を切り落とした黒狼の方に向いてきた。


「トール様急いで倒さないと、もう少しで敵の増援が来ます!」


 黒狼とアリアンロッドでも倒しきれていないのに、後3匹はきつい。

 俺は黒狼の方に向かってきた甲蟲の前足を避けると、がら空きになった甲蟲の顔面に大刀を突き入れた。

 大刀の半ばまで一気に差し込む。

 大刀を抜くと、滅茶苦茶に暴れだした甲蟲から離れて。


「アリアンロッド!ヴェルデンの方に戻るぞ!」


『は、はい』


 アリアンロッドはわからないが、多分俺は甲蟲を倒しきれないかもしれない。

 少なくとも敵の増援が来るまでに、短時間で効果的な倒し方がわからなかった。

 黒狼とアリアンロッドは、暴れている手負いの甲蟲を尻目にヴェルデンと合流する。







 街道まで戻ると、四台の馬車が集まっていて、徒歩の人居たらしく馬車に乗せていた。


『良い判断だ』


『足の差があって、逃げられないからココで守るわよ』


 そうヴォルトさん達は言うと、一騎打ち前に置いていた黒狼の槍を渡してくれた。

 俺は大刀を納めると、黒狼に槍を握らせる。アリアンロッドも黒狼で弾き飛ばした細剣をいつの間にか回収して、今は両手で細剣を持っていた。

 実は俺は太刀よりも、レリムさんから教えてもらった槍の方が慣れていた。


「サクラ、敵の増援は?」


「来ます!」


 サクラに聞くのと同時に敵の増援が来る。


『黒狼はここで死守、アリアンロッドは手伝ってくれ』


『はい』


「了解」


 ヴォルトさんの指示で俺は馬車の近くで待機する。

 街道から見ると、一騎打ちをしていた近くに3匹の甲蟲が着地する。

 今さっきは見る余裕は無かったが、元の世界のカブトムシのような外側が硬そうな羽の下に羽ばたく羽があった。

 着陸は重さを感じさせない。

 3匹は手負いの一匹に目もくれず、並んでこっちに向かって来た。


『行くぞ!俺達は中央、アリアンロッドは左手のヤツを牽制してくれ、一匹は黒狼に任せても構わない』


『わかりました!』


 ヴェルデンはそう言うと、並んでこっちに向かってきている甲蟲に、剣を抜いて盾を構えると走り出した。

 アリアンロッドもヴェルデンの左側にやや遅れて追随する。


「サクラ、他に敵の増援は来るかな?」


「……わかりません、索敵は小まめにします」


「特に背中側の索敵を頼む」


「はい」


 俺は馬車に被害が出ないように離れて迎撃しようと、黒狼を少し前に出す。

 黒狼を前に歩かせると、ヴェルデンアリアンロッドそれぞれが甲蟲と接敵した。


「すげぇ」


 初めて見るヴォルトさんの本気は凄かった。

 盾で甲蟲の前足を受けると、そのまま右手の剣を払い前足を切断する。

 そのまま盾で抑えながら正面から頭部を叩き切った。

 甲蟲の動きが止まるのを見ると、左側のアリアンロッドの援護き入る。


「トール様、こちらにも一匹向かって来ます」


 三匹のうち右側の一匹がこちらに向かってくる。


「サクラ、ちょっと試してみたい事があるんだけど……」


 俺は向かってくる甲蟲を見ながら槍を構えると、一つ思いついた事をしようと思った。


「はい、お任せします」


 この世界に来ていつも側にいてくれて、いつも信頼してくれるサクラを感謝する。

 俺は操縦桿を通して槍に気を通した……。



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