↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
17/28

第十五話

 一応、一章のラストです。

 次の日、俺とサクラの二人は、俺が今まで世話になっていた客間を掃除し、レリムさんを迎えるために寝具を変えたりの準備をした。

 俺は、私物をまとめて、サクラの部屋に持って行く。

 元々私物はこの世界に来たときに着ていた学校の制服と通学につかっていたバッグとこっちで揃えた何枚かの服とビャクダンぐらいだ。


「どうそ」


「……おじゃまします」


 サクラの部屋には入るのは初めてだった。

 サクラの部屋はハーブの香りがして、客間より広くベットも一回り大きい。

 本箱や机もあり、箪笥の上に木彫りの小物とかが飾られている。


「……へぇ」


「どうかしましたか?な、何か変なところでも?」


「い、いやぁ、考えたら女の子の部屋に入るのは妹以外だと初めてだ」


「荷物はこちらに置いてくださいね」


 サクラに言われて、ベットの近くにある籠に荷物を入れた。


「で、では私はちょっと村の方に行って来ます」


「買い物?荷物持ちなら手伝うぞ」


 俺がそう言うと。


「い、いえ、今日は用事があるので私一人で大丈夫です」


「じゃあ俺は釣りに行ってみようかな……釣れるかわからないけど」


 そう言うとサクラは出かける準備を始めた。

 俺は家の畑の堆肥を掘り返してミミズとか小さな虫を餌として用意した。

 そして前に買っておいた釣り針と倉庫から竿を持って、家の近くの砂浜に出かけた。







「ただいまぁ……」


「あら?お帰りなさい。釣れました?」


 夕方まで釣りをして、家に帰ると先に帰っていたのかサクラが居た。


「いやまぁ、釣れたのは釣れたけど……」


 実際、魚は無茶苦茶釣れた。でも、持って帰れなかった。

 一つは、持って帰る準備を忘れてた事。

 二つは海竜だ。家の近くの砂浜には海竜が居たのを忘れてた。

 俺は砂浜からは釣れないので、砂浜を歩いて近くの岩場で釣りをした。で、持ち帰る準備をしていなかったので、釣り上げた魚をリリースしてると、じっと俺を見ている気配に気が付いた。


「うぉ!」


 いつの間にか俺の横には2メートルぐらいの海竜の首があった。太さが電柱ぐらいあって、体は海の中にある。

 たしか、人は襲わないんだっけ? 前に見た大きさからするとまだ子供か?

 俺が釣った魚を「ジー……」っと見ている。


「……欲しいのか?」


 とりあえず今釣った50センチぐらいの大物の魚を岩場に置いて見ると、海竜は一口で魚を食べた。

 それからは、俺が魚を釣れば、どんどん海竜に食べさせた。

 で、餌が無くなったので帰ってきた。帰る時に海竜が悲しそうに鳴いていた。


「って事があって……」


 サクラに説明すると、サクラは「クスクス」笑い出すと「今度は用意して一緒に行きましょうね」と言った。







 えーと、どうしよう……。

 目の前にはベットの上で可愛らしい寝巻きを着て、寝転がって胸の前で指を組み、ギューっと目を閉じているサクラが居る。

 事の起こりはこうだった……。


「サクラよ、すまんが儂は今日、晩飯いらんからの」


 釣りから帰ってきて、サクラが晩飯の用意をする直前に、コクヨウさんが自室から出てきて言った。


「あ、今日はバザーの打ち上げですね」


 今日で一週間のバザーが終わって、その後に村主催の打ち上げがあるらしい。

 後で聞いた話だと、村にまた来てもらうように、商隊をちゃんと接待しないといけないらしい。


「今日は久々に朝まで飲めるわっ!」


 コクヨウさんはかなり酒好きだけど、家ではサクラの目が光ってるので、外での飲み会は嬉しそうだ。

 コクヨウさんは嬉しそうに鼻歌を歌いながら家から出て行った。

 サクラと二人で夕食を食べて、コクヨウさんから借りていた薬草の本をなんとなく読んでると、食事の後片付けをし終えたサクラが「あ、あの、行水をしてきます」と、言った。

 この家には風呂が無いし、季節も今は夏らしいので、皆は結構井戸で行水をする。

 


「気をつけてね」


 この辺りは、村から離れてるけど野盗も危険な動物も少ないらしいが、一応声をかける。

 暫く本を読んでいたけど、テレビもネットも無いこの世界では早寝早起きが基本なので、そろそろ寝ようと思い、客間の方に行った。


「あー、しまった……今日からサクラの部屋だっけ……」


 今日、からサクラの部屋に泊めてもらうが、ベットはサクラに使ってもらうので、毛布一枚貸してもらってベットの下で寝るつもりだ。

 サクラは行水後、自室に行ってたのでノックをする。


「……はい」


「入っても大丈夫?」


 一応、着替え中だとまずいので、声を掛ける。


「ど、どうぞ……」


 ……で、今の状況だ。


「……えーと、サクラさん?」


「ひゃい!」


 俺が声をかけると、ビクッとサクラが答えた。

 これは……アレだよなぁ……いくら鈍い俺でも分かる。

 俺も女の子には人並みには興味があるし、まだ知り会って一ヶ月も経ってないサクラは魅力的で、いつかはこうなると良いなと思ってた。

 で、経験の無い俺でも、焦っているサクラを見るとちょっと冷静になった。


「サクラちょっと話をしていい?」


 俺はベットに座ると、サクラに声をかけた。

 サクラは緊張を解くと、俺の横に座る。

 サクラは香水でもつけているのかいつもと違う香りがする。


「何でしょう?」


「えーと、今更なんだけど、本当に俺でいいの? 俺って、まれびとで、サクラとまだ知り合ってそんなに経ってないし、まだ何も出来ないし、何も知らないし、まだ稼ぎも無いし、サクラやコクヨウさんや皆に世話になりっぱなしだし、サクラの事は好きだけど、サクラに何もしてあげれてない……し、この先、サクラを守っていけるかもわからない……」


 俺はサクラへ不安を言う。

 サクラの事は好きだけど、本当に俺は何も出来てない。そんな俺に付き合ってくれるサクラには申し訳ない気持ちがあった。


「正直に言うと……サクラを貰っても幸せに出来る自信がまだ無い」


 俺がそこまで言うとサクラはそっと、俺に抱き付いてきた。

 サクラは俺抱きついたまま俺を見て。


「私は、口下手なので、上手く言えませんが……。トール様は何も出来ていない事はありません。少しずつでも前に進んでます。それに、何も私にしてくれてない事はありません。トール様は私に「変化と特別」をくれました。この先、トール様が不安になるのでしたら、私がお手伝いします……」


 サクラはそこまで一息で言うと、スゥと息を吸って。


「……貴方と一緒に歩かせてください。貴方の事が好きです」


 そう言うとサクラは、俺を見ていたすみれ色の目を閉じた。

 サクラの覚悟に臆病な俺は完敗した。

 俺はサクラの背中に腕を回して抱きしめると、サクラとキスをした……。







「……フフ」


 ……サクラの笑い声が聞こえて目が覚めると、目の前に落ち着いたサクラの笑顔がある。


「……あー。おはよう」


「……おはようございます。すいません、起こしてしまいましたか?」


「いや、いいよ」


 やばいなぁ、サクラは可愛すぎる。

 昨日の夜はお互い初めてだったれけど、初めてなりに頑張れたと思う。最初は緊張したけれど、後半は二人共積極的に相手にあれこれ出来た。

 昨夜は二人で抱き合って寝たけど、途中で暑かったのか掛け布団はベットの下に落ちていて、サクラの小ぶりな胸が見える。

 あー……ダメだなぁ溺れそう。

 俺は照れ隠しにサクラの顔にかかっていた髪の毛を指で整えてあげる。

 サクラは気持ちが良いのかすみれ色の目を細める。

 しばらくお互いにイチャイチャする。


「起きましょうか……」


「だな、体洗いたいし……サクラは体の方大丈夫?」


 ちょっと頑張りすぎて、日ごろ使わない筋肉が痛い……。


「大丈夫です。では、背中流します」


 サクラは恥ずかしくないのか、そのまま体を起こすと、目の前で下着を着替え始めた。

 スレンダーなサクラの着替えを見ながら、俺も下着を着替えた。

 そのまま下着のままで井戸に行くと、水を掛け合った。







 サクラが朝食の用意をしていると、ヴェルデンの足音が聞こえてきた。


「サクラ、ヴォルトさん達が来たよ」


「はい、今行きます」


 二人揃って玄関に出ると、ヴェルデンが歩いてくる。

 片手にはコクヨウさんとレリムさんが乗っている。

 二人の乗っている手のひらを揺らさないように坂道を登ってくる、ヴォルトさんはやっぱり凄い。

 ヴェルデンは家の前まで来ると、手のひらから二人を降ろして、黒狼の横で降着する。


「ただいまじゃ!」


「おはようございます。今日からお願いしますね」


 コクヨウさんとレリムさんに挨拶を返していると、ヴォルトさんとリーアさんが歩いてくる。


「おはよう」


「おはよう~♪ さくらちゃんどうだった?」


「おはようございます。えぇと……」


 リーアさんに聞かれて、サクラは俺の方を見ると、俺の腕を抱きかかえた。


「……フフフ♪」


「ククク……」


「マジか……」


「くぅ」


 照れているサクラを見てリーアさんとコクヨウさんは喜んでいる。逆にヴォルトさんとレリムさんは悔しそうにしていた。


「ま、まさか……」


 そう言えば、昨日サクラは一人で村の方に行っていた。


「私達の勝ちね♪」


「うむ♪」


 そう言うとリーアさんとコクヨウさんが、それぞれヴォルトさんとレリムさんに手を出す。


「トール君やるなぁ」


「予想外でした……」


 ヴォルトさんとレリムさんは財布を取り出すと、大銅貨を一枚づつリーアさんとコクヨウさんの手のひらに乗せる。

 このオープンさは日本とは全然違う……。

 後でサクラに聞くと、リーアさんとレリムさんに夜の作法の事を聞きに行ってたらしい……。


「孫はまだかのう?」


「あら?その前に結婚式でしょ♪」


「結婚は……俺まだ無職なんで……」


「ですねぇ、まぁ今日から特訓です。サクラちゃんの為にも頑張って竜機士になってもらいます!」


 レリムさんが、フンッと鼻息荒く言う。


「頑張ります……」


 俺はそう言うと、俺の腕を抱え込んでいるサクラを見た。

 サクラは俺と目が合うとにっこり笑ってくれた……。







『はい!いいですよ。ゆっくり上半身を起こして立ち上がってみて』


 サクラがレリムさんに教えてもらって、かけてくれた「部隊魔法」で操縦席の外に居るレリムさんの声がはっきり聞こえる。


 黒狼にサクラと初めて乗る。


 レリムさんが調整してくれた操縦席はちょっときつい。


 ヴォルトさんからもらった、竜機士用の皮鎧と薄手の皮手袋の皮とワックスの匂いは、俺が地球に置いて来た愛用のグラブの匂いと一緒だった。


 そして、斜め後ろの戦術機関士の席の緊張しているサクラの息遣いと自分の心臓の音が聞こえる。


 外の景色の映る映像板を見ると、青空と青い海と草原。


 レリムさんはまぶしいのか、右手を額にあてている。


 コクヨウさんは腕を組んでいつものように笑っている。


 俺は深呼吸をすると……。


「……サクラ行くよ」


「はいっ!」







 俺達は、二人で最初の一歩を踏み出すために立ち上がる……。



 サクラさんは肉食系策士


 よろしければ感想、評価、お気に入り登録をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。