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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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第十四話

 レリムさんが飛び掛るように黒い竜機兵に近づいてきた。

 俺は危ないので、抜き身だったビャクダンを鞘に収める。

 遺跡内は空気が澱んでいたが、呼吸は特に苦しくない。


「……凄い!凄いわ?!」


 レリムさんが大興奮で黒い竜機兵を見回している。


「東方の竜機兵か……」


「新品みたいねぇ」


 ヴォルトさんとリーアさんも、俺の側に来て黒い竜機兵を見上げる。


「レリムよ、コレは動くのか?」


「ちょっと待ってください。リーアさんもう一つ灯りをください」


 ヴォルトさんがそう言うと、レリムさんが答えた。


「はいはい」


 レリムさんの注文でリーアさんがもう一つ光の精霊を召喚する。


「刻止めの結界が効いてれば、動くはずじゃ」


 今さっきの竜機兵全体を覆っていた布が結界だったらしく、コクヨウさんが言う。

 レリムさんを見ると竜機兵の背中によじ登っていた。竜の鱗を確認するみたいだ。


「凄い鱗だわ、上位竜の物?……それに黒い鱗なんて初めて見た……」


 背中の竜の鱗には問題無さそうで、レリムさんが降りてくる。


「旦那様、この竜機兵は動きます……信じられませんが、ほぼ新品ですね」


 そう、レリムさんがヴォルトさんに報告すると、ヴォルトさんはコクヨウさんに振り返った。


「ヴォルト、リーア、すまんが一度外に出してくれんか?」


 コクヨウさんがそう言うと、ヴォルトさんとリーアさんは遺跡の外に出て、腰に吊っていた剣とリーアさんが持っていた鞄を置いてくる。

 その間にレリムさんが、操縦席の装甲を開いていた。


「東方の竜機兵に乗るのは始めてだ……」


「そうねぇ……操作が同じだと良いんだけど」


 二人はそう言うと、戦術機関士のリーアさんから慎重に操縦席に乗り込む。


「……どうだ?」


「大体は分かるわ、ただこの竜機兵はクセがありすぎるから慎重にね」


 ヴォルトさんも竜機兵に乗り込むと、一応皆に外に出るように言い、操縦席を閉めた。

 皆が外に出るのを確認すると、竜機兵がゆっくり立ち上がる。


「……音がほとんどしないわ」


「それは凄いんですか?」


 レリムさんが呟くと、俺の横に居たサクラがレリムさんに聞いた。


「音がしないって事は、部品同士の合いの設計と精度がしっかりしているって事なのよ。内部骨格の耐久性が高いって事ね」


 レリムさんの説明を聞いていると、多少ギクシャクしながら黒い竜機兵が広場の中央まで歩いてきて、降着姿勢を取った。

 操縦席が開くと、二人が降りてくる。


「中々のじゃじゃ馬だな」


「状況表示が読み難いわ」


 レリムさんは、二人に駆け寄ると色々話しを聞いている。

 俺達は黒い竜機兵の側まで行く、太陽光で照らされた黒い竜機兵は漆のような深い色合いの光沢の装甲を纏っていた。


「……綺麗」


 サクラがつぶやく。

 よく見ると右足の装甲に漢字が書いてある。


「漢字?……黒狼」


 なんで漢字が?。

 この世界の言葉と文字は、1000年ほど前に甲蟲類と協力して戦うために、ほぼすべての民族の言葉と文字を共通化するために作られた物らしい。

 その共通語以前のコクヨウさんに見せてもらった東方の古い文字とは違う。


「カンジですか?」


「えっと、俺の居た国の文字だ……「黒狼」って言うのは、黒いオオカミって意味」


「おう、小僧は読めるか……そうじゃ、この竜機兵の名は「黒狼」儂の古い友人から貰った物じゃ」


 相変わらずコクヨウさんは謎な人だなぁ。新品だと金貨1000枚とか言われているのを貰えるって……。


「で、サクラよ、この黒狼はウチの家から小僧への結納品じゃ」


「へ?」


 結納品ってなんだっけ?


「サクラちゃんおめでとう」


「凄いわねぇ、トール君」


「お、お母様ありがとうございます……」


 周りの女性陣が、祝いの言葉を言ってくれる。

 よっぽど嬉しいのかサクラが涙ぐんでいる。


「サクラはこれで第一婦人だな」


「すいません結納品って?」


 俺がそう聞くと、リーアさんが説明してくれた。

 この辺りは婚約すると、口約束の結婚の約束を公にするために行う結納品か結納金を嫁の家から婿の家に渡す風習があるらしい。金額と物は何でもいいらしいが、婿側から離縁をする場合は結納品と同価値の金額を嫁に返さないといけないらしい。

 まぁ、金貨1000枚とか無理だけど離婚とか無いんで関係無いか。







「よし、とりあえず飯にするか、サクラ弁当じゃ」


 そう言うと、皆で広場の外縁部に敷物を敷いてお弁当を出す。

 サクラは昨日の夜、俺が精米を手伝った米で、海苔無しの塩おにぎりと、おかずを作ってきてくれた。

 リーアさんも結構な量の黒パンで出来たサンドイッチみたいなのを作ってきてくれたので、結構量がある。

 皆食事をしながらリーアさんとサクラは黒狼の事で話をしていて、ヴォルトさんとレリムさんは違う話をしているようだ。

 コクヨウさんはイイ笑顔でおにぎりを頬張っている。

 暫くおにぎりを食べていると、ヴォルトさんとレリムさんが俺の方に来た。


「トール君ちょっといいか?」


「はい?」


「トール君とサクラは黒狼に乗って竜機士になるのかね?」


「はい、その予定ですが」


 乗りこなせるかはまだ不安だけど、せっかく手に入った竜機兵だし、練習してみようと思う。


「オレ達は明後日に商隊と一緒に次の街に移動する。で、レリムを置いていこうと思う」


「レリムさんをですか?」


 レリムさんを見ると両腕を組んで頷いている。


「君達はこれから黒狼に乗る訳だが、練習しないといけない」


 俺は頷いた。


「練習する時の教官役と整備役にな」


「えぇと、それは凄く助かりますが、良いんですか?」


「あぁ、オレ達は一ヶ月でドール村に戻ってくるし、レリムが言い出した事でな」


「東方の竜機兵は興味がありますし、初心者のお二人だとドール村には機兵鍛冶は居ませんし、整備は無理かと」


 俺はコクヨウさんの方を向くと、おにぎりを食べながら話を聞いていたのか。


「かまわんよ。部屋もあるしな」


 まぁ、お世話になるんだから村の宿屋じゃまずいか……あれ?部屋って余ってたっけ?


「では、トール君よろしくお願いします」


「あ、はい。よろしくお願いします」







 全員が弁当を食べ終わると、コクヨウさんが「黒狼の装備がまだ遺跡内にあるぞ」と言ったので、遺跡の中を見に行く。

 あまり遺跡の奥まで行くと危ないらしいので、黒狼の装備だけ広場に出す。

 黒狼があった場所の近くには、竜機兵用の大小二振りのカタナと槍、そしてコンテナみたいな3メートル×3メートルほどの取っ手の付いた箱が置いてあった。

 全部、黒狼と同じように布のような物で包まれて封印されている。

 俺はビャクダンを抜くと、順番に封印を解いて行った。

 ヴォルトさんをリーアさんは、もう一度黒狼に乗って装備の搬出を手伝ってくれる。


「トール君、下がって~」


 黒狼の拡声器からリーアさんの声が聞こえたので、遺跡の奥の方に下がる。


 ……あれ?。


 遺跡の奥から視線を感じる。

 目を凝らしても真っ暗な闇が見えるだけだ。ただ、敵意とか殺気とかは感じられない。

 そんな事を思っていると、黒狼が洞窟内に入ってきた。

 一瞬、黒狼の方に意識を向けると、遺跡の奥からの気配が消えた。


「どうかしました?」


「いや、何でもないよ」


 サクラが俺が遺跡内を見ていたので、気になって声をかける。

 武装と箱が遺跡から運び出されると、さっそくレリムさんがチェックしている。

 大小のカタナは、日本の侍とは違って、長い方が左腰で短い方が右腰に鞘ごと装着出来る。両方とも素材がビャクダンと同じ素材で、金属では無いらしい。

 槍も同じ素材で、長さが黒狼よりもやや長い。

 箱の中には一番上に共通語の説明書みたいなのが入っていた。

 レリムさんがその本をざっと読む。


「なるほど、このマントは良いわね。よく考えてる」


 その説明書の下には黒狼用の黒っぽいマントが入っていた。生地は薄手だが丈夫な素材らしく、黒狼の肩にマントを装備して降着姿勢を取り、地面に何箇所か杭で固定すると簡易テントになる。

 それと、黒狼の腰に付けるいくつかのバッグも入っていた。

 あとは整備用の工具とか、補修用の部品とかが入っている。


「長距離行軍用の装備みたいね、黒狼自体は集団戦仕様のようだけど……」


 レリムさんが本を読みながらブツブツ言っていた。


「よし、こんなもんじゃろ」


 俺とレリムさんが確認していると、コクヨウさんが遺跡の再封印を終わらせていた。

 見た目は最初のように崖にしか見えなくなっていて、近づいて触ってみても土の感触がある。


「感覚阻害の結界ですね」


「まぁ、色々危ないモノがあるからのう……」


 コクヨウさんとサクラが遺跡の再封印を終わらすと、ヴォルトさん達が黒狼で装備と箱を家の方に運び出した。

 コクヨウさんに「黒狼はココに置いていた方が良いんじゃ?」と聞くと「ココまでの道も再封印するし、いちいち黒狼に乗るのにココまで歩いてくるのも面倒くさいじゃろ?」と言われた。


「ま、ウチは村からも離れているし、見られても別に困らんよ」


 家までの帰り道でコクヨウさんはそう言った。

 四人で歩いて家に着くと、家の横の広場に箱が置いてあり、その横に黒狼が降着姿勢になっていた。

 皆が道から出ると、コクヨウさんが道の方も再び封印をして、元と同じような森になる。

 封印が終わると、黒狼の側に行っていたレリムさんが俺とサクラを呼ぶので、向かう。


「鍵を設定しますね」


 そう言うと、サクラに使用者の設定の魔法をレリムさんが教える。

 この魔法を使うと、サクラが設定した人意外は黒狼を操縦も出来ないし、設定した人が黒狼から離れると、盗難防止の結界を自動的に張るらしい。

 サクラは教えてもらった魔法でココに居るメンバーを全員設定する。


「魔法って便利だなぁ」


「トール君の居た世界はどんな魔法があったのです?」


 そうレリムさんに聞かれたので、俺の居た世界には魔法は無くて、代わりに科学が発達していた話をすると、レリムさんは「今度くわしく話てください!」と大興奮だった。

 機械好きなのか。

 その後、ヴォルトさん夫婦を家に招き、今日の礼とお茶を振舞った。


「ピクニックにお礼はいらんぞ」


 と、ヴォルトさんが苦笑していた。

 レリムさんは商隊が帰る日に、この家に来てくれるらしい。


「お母様、お部屋はどうしましょう?」


「あぁ、小僧はサクラの部屋に行ってもらう。で、レリムは客間じゃな。明日掃除を頼むぞ」


「はい」


 いや、ちょっと待って!


「ちょっと……」


「あら、あらあらあらあら♪」


 俺がコクヨウさんがさらっと言った事に突っ込みを入れようとするとリーアさんに防がれた。

 サクラを見ると耳がピコピコして嬉しそうにしている。


「……はぁ」







 その日見た夢は、俺はウサギで飢えた狼のサクラに、追い詰められる夢だった……。



 サクラさんは実は肉食系


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