第十三話
「金貨200枚以上かー」
「凄く高いですよね」
俺とサクラは、ヴォルトさん達にさざなみ亭で食事をおごってもらった後、お礼を言って、家に帰ってきた。
ヴォルトさん達から聞いた話だと、竜機兵の入手方法はいくらかあるが、普通は領主軍や国軍に入って、装備として貸与されるか、機兵工房で購入する。
で、購入する場合はほとんど中古になるが、動くだけの最低クラスの竜機兵でも、金貨で200枚以上らしい。
新品の竜機兵は、ほぼオーダーメイドになるし、金額も金貨1000枚とかは当たり前だ。
サクラから後で聞いた所だと、月の生活費が大体、銀貨2枚~3枚で、土地込みで家を建てると、金貨10枚ぐらいだと言う。
ちなみにこの大陸の通貨単位はエルで、銅貨1枚が1エル。銅貨10枚で大銅貨1枚。大銅貨10枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚だ。
年間の食費を金貨3枚と銀貨6枚と考えると、竜機兵は50年以上の生活費と同じぐらいとなる。
それに、維持費も結構かかる。ヴォルトさんは機兵鍛冶のレリムさんが奥さんだが、普通は専属で雇うか、定期的に機兵工房に整備を依頼しないといけない。
整備をすれば、消耗品もあるし、戦闘をすると部品代などもかかってくる。
ただ、個人所持の竜機兵を持つ竜機士は基本的に傭兵になるが、どこも人手不足で、ヴォルトさん達みたいな護衛や甲蟲類の討伐などの仕事は多い。
収入も、駆け出しでも年間だと金貨15枚程度はは稼げる。
「お?帰っておったか、ただいまじゃ」
俺とサクラが居間のテーブルに座ってお茶を飲みながら話をしていると、コクヨウさんが外から帰ってきた。
「お母様、お帰りなさい。ヘルナさんと赤ちゃんはどうでした?」
「おー、ヘルナも産後の肥立ちも良いし、赤子も元気じゃ」
そう言うとコクヨウさんは椅子に座って、「サクラよ、儂にも茶を淹れてくれ」と言った。
「で、おぬし等は難しい顔をして、何を話ししてたんじゃ?」
コクヨウさんはサクラの淹れたお茶を一口飲むと、聞いてきた。
俺は今日、ヴォルトさん達に会いに行って、話を聞いた事をコクヨウさんに話した。
「……なるほどのう。小僧は竜機士になりたいのか?」
「仕事は欲しいですし、自分に出来るなら、サクラとやってみたいです」
「サクラはどうじゃ?戦術機関士になるのか?」
「私は、トール様と一緒に居たいと思います」
コクヨウさんは、俺達の話を聞くと、ちょっと考えると。俺にビャクダンを持ってくるように言った。
「持って来ました」
「小僧、ビャクダンは抜けるようになったか?」
「抜けるんですか?コレ」
「おう、気を通して抜いてみ」
俺は言われたままビャクダンの鞘と柄を持つと、ゆっくり気を込める。
気を込めて行くが、どんどん入って行く。
どんどん入って行くので、面白がって自分の限界まで気を込めようとすると、急にビャクダンが軽くなった気がした。
「お?……抜けました」
コクヨウさんに言われた通り気を込めると、あっけなくビャクダンの鞘が抜けた。
刀身は想像していたような銀色の刃では無く、金属とは違う艶消しの黒い刃だった。
「あ、あれ?」
鞘から抜いたビャクダンは、いつもの素振りに使っていたよりも軽くなっている。
もう一度鞘にしまうと、今度は気を込めなくてもスムーズに抜ける。
「……ふむ、小僧。今からヴォルトの所まで行ってくれんか?」
「はい。いいですよ」
気を込めすぎて、ちょっとだるいけど、ヴォルトさんの所まで行くのには問題ない。
「明日、見て欲しいモノがあるので、三人で来いと言ってくれ。サクラは明日、皆で出かけるので、弁当の用意じゃ」
「?……はいわかりました。何処に行くのですか?」
「ピクニックじゃ」
ピクニックねぇ……まぁ、コクヨウさんだし、何かたくらんでそうだなぁ……。
俺は軽く、ランニングでドール村のバザーの所に行くと、ヴォルトさん達に伝言を伝えた。
どうもレリムさんはコクヨウさんと会った事が無かったらしく、何故か凄く緊張していた。
「ピクニックらしいですよ」
「ピクニックねぇ」
と、ヴォルトさんも俺と同じような感想だった。
「この度は、黒の賢者コクヨウ殿にご拝謁させていただき……」
次の日、朝食を食べた後、しばらくすると、ヴォルトさん夫妻が家に訪れた。
レリムさんはコクヨウさんの前に跪くと、挨拶をする。
「……黒の賢者ってナニ?」
「……さぁ?まぁ、お母様は物知りですし」
俺はこっそりサクラに聞くと、サクラも聞いたこと無いみたいだ。
「愛いのう……ヴォルトにはもったいないわ」
コクヨウさんはレリムさんの挨拶が終わると、見た目が女の子のレリムさん(28歳らしい)を膝上に乗せて、可愛がっていた。
レリムさんは困った顔をしていたけど逃げられない。
その様子を見て、ヴォルトさんは苦笑し、リーアさんは笑っている。
「さて、行こうかの」
コクヨウさんは暫くの間レリムさんを可愛がると、皆に出発の声をかけた。
ヴェルデンの足音が聞こえなかったので、ヴォルト夫妻は歩いて来たらしい。
コクヨウさんは「こっちじゃ」と言うと、家の裏側に回る。
家の裏側は鬱蒼とした針葉樹林の森が広がっていて、その奥に崖がそそり立っている。サクラに「奥には狼や魔獣も出るので入らないように」と言われていた。
ちょうど井戸の裏側まで来ると、コクヨウさんは小声でゴニョゴニョ言うと「ッパァン!」と手を打った。
すると、今まで鬱蒼と木が生えていた森の雰囲気が変わる。
「……結界ね。見て」
リーアさんが言うと、井戸の裏側に森の奥に続く道がある事に気が付いた。
道幅が5メートルほどの広さで、舗装はされていないが、地面は踏み固められてしっかりとした道になっている。
サクラも知らなかったらしく驚いている。
コクヨウさんはそのまま道に入っていくので皆も驚きながら続いた。
15分ほど道を歩くと、目の前に高さが100メートルほどの崖の前に着く。
そこだけ、木が茂ってなくて、ちょっとした広場になっている。
「ねぇアナタ気が付いた?」
「あぁ」
リーアさんが言うには、道からこの広場までは、かなり強い獣よけの結界石が等間隔で設置してあり、普通の街道よりも安全になっているらしい。
広場を見ても、一メートルぐらいの苔むした石柱が森との境に何本か見える。
「さぁて、行くぞ~。皆、見とれよ」
コクヨウさんはそう言うと、壁に向かって、もう一度森に入った時のように呪文?を唱えると大きく手を広げる。
「……ッパァン!」
「なっ!」
コクヨウさんが手を叩いた一瞬で、目の前に石造りの巨大な入り口が現れた。
入り口は高さが30メートル、幅は20メートルほどで、精密に組まれた石材で作られている。
「遺跡か?こんな所に……」
「精霊達にも気が付かせない結界って……」
「……すげぇ」
「家の近くにこんな物が……」
コクヨウさん以外の皆が驚いている。
「……ちょっと見て!あれ?!」
レリムさんが叫んで身構える。
よく見ると奥の方の暗闇に、何か巨大なモノが蹲っているのが見える。
「何かが居る? 遺跡の守護者か?!」
ヴォルトさんが腰に吊っていた剣に手を掛ける。
「サクラ、灯りを頼む!」
俺は腰のビャクダンをいつでも抜けるように柄に手を添えて、サクラにいつもの光の精霊を頼んだ。
「はい!」
サクラがすかさず光の精霊を召喚すると、遺跡の奥に飛ばす。
「何だ?」
光の精霊が遺跡内を照らすと、30メートルほど奥に白い布みたいな物に包まれたモノが蹲っていた。
巨大なエジプトのミイラみたいに見える。
「ま、まさか……」
「ちょっと待て、ソレに素手で触ると呪われるからの」
レリムさんがソレに近づこうとすると、コクヨウさんが止める。
「さて、小僧。ビャクダンであの布をちょっと切れ」
「あ、はい」
俺は、呪いとか遺跡の暗さとかでかなり怖かったけど、ソレに近づいた。
サクラが俺が見やすいように光の精霊を誘導してくれる。よく見ると、模様が細かく入った布で、言われた通りにビャクダンを抜く。
遺跡の入り口の方を振り返ると、腕を組んだコクヨウさんが頷く。
俺はソレに近づいてゆっくり斬りつけた。
ビャクダンがその布に触れると「リンッ」と鈴が鳴るような音がして、ハラハラと布が解けだした。
布は地面に落ちる前に消えてなくなる。
「……おぉ」
「……凄い」
布の解けたそこには、漆黒の竜機兵が膝を立てていた。
その黒い竜機兵はヴェルデンのような西洋風の鎧みたいな外見ではなく、日本の戦国武将が着ていた鎧のような作りをしている。
「……東方の竜機兵?!」
レリムさんが、びっくりして大きな声を上げると、その声が遺跡内に響いた……。
まだ引っ張ってすいません><
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