第十一話
やっと主人公がロボります
うわ、緊張してきた……。
ヴェルデンの側まで行くと、かなり大きく感じる。
リーアさんは慣れているのか、するするとヴェルデンの操縦席に上がった。
俺はリーアさんに続いてヴェルデンの操縦席によじ登る。
ヴェルデンは片膝を着いた状態でも、操縦席までは結構な高さがあった。
中を見ると思ったより狭い。操縦席が手前で、操縦席の上の奥に戦術機関士の席がある。
「先に座ってみて」
俺は手前の操縦席に座る。結構簡単な作りの座席で、左右にレバーが何本もある。
戦術機関士の席にはレバーが少なくて、丸い玉が両手の所にあった。
足の方は車のアクセルみたいに、踏み込めるようになっていた。足のペダル?は踏むのと足の甲で引き上げられるようにベルトが付いている。
「椅子についてる両肩の部分のベルトに腕を通して……次は腰の所のベルトを……」
言われた通りにシートベルト?をする。ヴェルデンがやや前のめりなので座席から落ちないように注意する。
とりあえずベルトを締めて座ると、レバーやペダルの細かい調整をリーアさんがしてくれる。
「どう?きつくない?」
「大丈夫です」
結構がっちり固定される。
「手と足の位置も調整するわね」
レバーとペダルの位置も調整する。
「……はい、じゃあ1回出てくれる?」
リーアさんに言われて座席から出る。俺が出るとリーアさんが潜り込むように戦術機関士の席に座る。
「座ってベルトを締めて」
「……締めました」
緊張するなぁ。
「じゃあ、搭乗扉を閉めるわね。開け閉めは両方の席で出来るけど、今日は私が閉めるわ……」
そう言うと、搭乗扉がスーと閉まる。
扉が閉まると同時に扉の裏側のガラス面に外の景色が映る。
「……へぇ」
思ったより綺麗に映っているが、想像してたみたいにメーターみたいな色々な情報は無く、外の景色しか映っていない。
あぁ、情報を映すモニター?は戦術機関士の方にあるのか。
外の音も普通に聞こえる。
「次は今の降着姿勢を解除するんだけど、今は固定してる関節がフリーになるから注意してね」
「あ、あの……まだ操縦方法聞いてないんですが?」
「大丈夫、こっちで調整するから。では左側の一番外側のレバーを倒して」
「っと、コレか」
起きているレバーを倒すと、ヴェルデンが力が抜けるようにちょっと動いた。
それと同時に、感覚で今のヴェルデンの姿勢が分かるようになった。
「あ、あれ?」
「……繋がった?」
多分、これが繋がる感覚かな?
「……た、多分」
「肘掛にあるレバーを握って、そのままの姿勢でヴェルデンの首を回してみて」
「は、はい」
自分の頭は前を向いたままで、意識をヴェルデンの首を左右に回すようにする。
すると、前方に映ってた景色が左右に回った。
次は上下に振ってみると、同じように景色が上下に動く。
「あら、凄いわねぇ……じゃあ立ちましょうか、ゆっくりね」
「はい」
俺は自分が座ったままで、意識でヴェルデンを立ち上がらせる。
……ギッ!ギギギ
ヴェルデンはどこがが擦れる音がしながら、ゆっくり立ち上がった。
「……おぉー、高い」
映像板に映る景色が高い。
「へぇ……」
「歩いてみていいですか?」
「……あ、うん。どうぞ」
俺はリーアさんの許可が出たので、ヴェルデンをゆっくり歩かせる。
自分の足で歩かなくても進む感覚が楽しい。
そういや、従兄のにーちゃんが、バイクを乗り出した時に、同じ事を言ってたなぁ。
……ズシン、ズシン。
お?結構揺れるなぁ……背筋を伸ばしてっと。
……ズシン、ズシン。
ヴェルデンの背筋を伸ばすと揺れが大分マシになった。
「……ス、ストップ!」
リーアさんの声でヴェルデンを止めた。
「……右手を上げてみて」
「はい」
言われたように右手を上げる
「いいわ、降ろして」
「はい」
「元の場所まで戻れる?」
「あ、はい」
俺はヴェルデンを右回りに旋回させると、元の位置まで歩いた。
途中でサクラがこっちを見ているのに気が付いて、歩きながら手を振る。
サクラに手を振ると、小さく手を振り替えしてくれる。何故かサクラの横に居たヴォルトさんが驚いた顔をした。
「……降着姿勢に出来るかしら?」
指示通りに片膝をついた。
「……ふーん。関節を固定してた左側のレバーを起こして」
レバーを起こすと、ヴェルデンの感覚が離れた。
「おつかれさま、搭乗扉を開けるわよ」
リーアさんがそう言うと、搭乗扉が開いて、外の空気が入ってくる。
「……ふー」
「……降りましょうか」
「はい」
俺は体を固定してたベルトを外すと、操縦席から離れた。
「……よっと」
狭い所から出てくるリーアさんに手を貸す。
「ありがとう。じゃあ、降りましょうか」
俺が先に降りて、リーアさんが降りてくるのを待ち、皆の所に戻った。
俺とリーアさんが皆の所に戻ると。
「……トール君は凄いな」
「……ええ、びっくりしたわ」
「……だのう」
何故か三人にびっくりされてる。
「……トール君は元の世界で何か鍛錬していたのかしら?」
特に鍛錬とかはしていない。あ、野球の事か。
「えぇと、野球って言う競技を10年ほどやってました」
俺は大まかに野球を説明する。
「なるほどねぇ……そういった競技ならトール君は多分「自分の体の動かし方」が分かってるのよ……」
「バランス感覚も良かった。重心を意識していたな」
「ふぅむ。……ヴォルト、もう一つ面白いものを見せるかの。小僧!ちょっとこっちに来るのじゃ」
「あー、はい」
コクヨウさんは俺を呼ぶと、二人に聞こえないように小声で言った。
「コレであの木を切ってみるのじゃ、気を今小僧が通せる最大量まで通せ」
俺は頷くと、コクヨウさんから70センチぐらいの小剣を受け取る。
両刃の西洋風の剣は持った事が無いので、ちょっと振ってみると、ビャクダンより軽いがバランスは良さそうだ。
「……よし」
俺はコクヨウさんに指さされた木に向かう。直径が80センチぐらいの太い木だ。高さも20メートルほどで、竜機兵の倍近くある。
周りを見て、木が倒れても問題の無い方向を確かめると。
木が倒れる反対側に回り込むと、小剣に気を通す。
おー、なんだこりゃ、斧と違って凄く通りやすい。
調子に乗って気を通すと、思ったより白く光りだした小剣にちょっとビビる。
「……な?!」
「……ちょっと?!」
ヴォルトさん夫婦が向こうで何か言いたそうにしている。
とりあえず木を切ってしまおう。
俺は初めての小剣の切れ味が分からないので、手首を傷めないように注意しながら、肩の力を抜いて小剣を振った。
「……シッ!」
小剣は何の抵抗も無く木に潜り込むと、そのままの剣速で抜ける。
「よっと」
俺は少しだけ切り残した木を足で蹴りつけた。
バキッ!……ザザザー……ズシーン!
木は思った方向に倒れてくれた。びっくりしたのか森の方で鳥が何匹も飛ぶ。
後で輪切りにして、玉木つくらないとなぁ。
とりあえず皆の所に戻る。
コクヨウさんはちょっとムッとした顔で、ヴォルトさん夫妻は唖然として、サクラはニコニコしている。
「小僧……儂が指定したのは手前の木じゃ!」
あれ?振り向くと直径30センチぐらいの木が生えていた。
「……あー、すいません」
とりあえず謝っとく。
「あれほどの太さのイスノキを一閃って……」
「……ざ、斬岩剣?!」
「いや、今のは技では無いぞ、剣に気を込めただけ、言うなれば小僧の力技じゃ」
「し、しかし……うぅむ」
「とりあえず家に戻ってお茶にしましょう」
サクラがそう言って皆で家に戻った。
居間に戻って、サクラの淹れてくれたお茶を飲むとヴォルトさん夫婦も落ち着いたようだ。
「で?この二人はどうじゃ?」
「……予想以上です。サクラもですが、トール君はオレの古巣に推挙してもいいぐらいですな」
「……よねぇ、この若さで、アレはちょっと凄いわね」
「ただ、竜機兵持ちじゃないと、二人一緒には無理だな。国軍だと、トール君とサクラは二年間の軍学校に入学して、仕官となるんだが、二人一緒で竜機兵に搭乗となると難しいな」
「トール様とご一緒は無理ですか……」
サクラが不安げに聞く。
国の軍隊に竜機士として仕えるって事か? 竜機士として仕事が出来るのかは分からないけど、サクラやお世話になっているコクヨウさんのためにも、この世界での生活基盤は欲しい。
「最初から竜機兵に乗っていると、よっぽどの事が無い限り、そのまま仕官となるが……軍学校だと卒業後の配置は軍任せだからな」
ただ、竜機兵が無いとサクラと一緒には無理らしい。
「俺は竜機士になれそうですか?」
「……なれるだろうな。少なくとも才能はある」
「トール様?!」
「まぁ、待て二人共。そう、早急に決める事もあるまいよ」
「そうねぇ……二人が離れ離れになるのはちょっとね」
「ふむ、とりあえずオレとしては推挙する事も出来る、と覚えておいてくれ」
そこまで話をすると「そろそろお暇しましょうか?」とリーアさんが言う。
帰り際にヴォルト夫妻に、「今日は竜機士に乗せてもらって、ありがとうございました」と礼を言うと「あと4日ほどドール村に滞在するので、また遊びにきてね♪」と言って二人は帰って行った。
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