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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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第十話

 ちょっと長くなったので分けました。

 朝食の後、今日は来客の予定があってサクラが張り切っているので、俺は薪割りをする。

 最近は「気功術」の鍛錬もかねて、手斧で薪を割っていた。

 斧に通す気力を毎回「通す速さ」「量」などを調整して斧を振るう。

 最初はすぐ疲れてたが、ここ2、3日はほとんど疲れないようになってきた。コクヨウさん曰く「気力の総量が上がり、出力の調整が出来る様になってきた」らしい。

 それと、気を通す量を上げると、斧がうっすらと白く光りだした。これもコクヨウさんに曰く「まぶしくて直視出来ない様になったら一人前」と、良く分からないアドバイスを貰った。

 こういった地道な反復練習は、野球の練習でも好きなので、慣れてくると結構楽しい。







 ……ズシン、ズシン。

 ……ズシン、ズシン。

 薪を割っていると、重量のある振動と音が近づいてきた。

 音の方を見ると、昨日の赤っぽい竜機兵が歩いてくる。

 俺に気が付いたのか手を振ってくるので、俺は竜機兵に向かって一礼した。

 赤い竜機兵は家の側まで来ると、片膝をついた。

 俺が竜機兵の近くまで行くと、家の中からコクヨウさんが出くる。

 竜機兵に乗ってきた、ヴォルトさんとリーアさんのハルデー夫妻も降りてきた。


「よう、ヴォルト元気だったか?」


「本日はお招きありがとうございます。コクヨウ殿も御壮健なようですね」


 コクヨウさんはヴォルトさんに挨拶をすると、リーアさんにハグをした。


「リーアも元気そうじゃな、お?少し痩せたか?」


「あら?うれしい♪ コクヨウ様お久しぶりです」


 二人はにこやかに抱き合う。


「トール殿も今日はよろしく」


「こんにちは」


「トール君、今日はお招きありがとう」


「サクラが気合入れてますよ」


「あら、楽しみね。ちょっとトール君手伝ってもらえる?」


 俺も二人と挨拶を交わすと、リーアさんが俺を呼んだ。

 リーアさんは竜機兵の背中側に回ると、竜機兵の腰の部分に付けてあった荷物を外す。


「荷物を降ろすから、持って行ってくれる?」


「はい」


 リーアさんが、大きめの袋に入った荷物を二個降ろすと、一個は俺に渡す。

 持ち上げると、思ったより重い。


「コクヨウ様、昨日頼まれてたモノです」


「おぉ、無理言ってすまぬな、ありがとうよ」


 コクヨウさんはそう言うと二人を家の中に招いた。

 中ではサクラが、食事の準備中なので、俺はサクラの手伝いに台所に行き、ヴォルトさんとリーアさんは、コクヨウさんと居間で歓談中だ。

 昨日の夕食後にコクヨウさんに聞いた話だと、ヴォルトさんは元騎士で、今は商隊の護衛などをしているらしい。

 コクヨウさんとの付き合いは夫婦とも長いらしい。

 サクラも小さい時から知り合いで、昔はリーアさんに精霊魔法を教えてもらった事もあるらしい。


「サクラどう?手伝おうか?」


「ありがとうございます、じゃあ、こちらの鍋を見ていてもらえますか?」


「了解」


 俺はシチューの鍋を焦がさないようにかき混ぜる。

 サクラは出来た料理を皿に盛り付けて行く。

 しばらく二人で料理を用意して完成した分を居間の方に運んだ。


「お待たせしました」


「おお、これは美味そうだな」


 料理が出揃い、皆で舌鼓をうつ。

 食事をしながら、コクヨウさんとヴォルトさんは近隣の情勢の話をしていた。

 サクラとリーアさんは料理の話をしている。

 俺は皆の話を色々聞きながら料理を楽しんだ。







「で、トール君は何者なのかしら?」


 食事が終わって、リーアさんが聞いてきた。まぁ、サクラとも仲が良いし気になるだろうなぁ。


「こやつはな、まれびとじゃよ」


 コクヨウさんがさらっとバラす。

 コクヨウさんが言うって事は信用出来るのか。


「……です」


 俺はこの世界とは違う所から飛ばされて来たと説明した。

 来た時の状況などは、コクヨウさんとサクラがフォローを入れてくれた。

 サクラは俺の事よく見てるなぁ……。







「……なるほど、な。俺もまれびとと会うのは初めてだ」


 話を聞き終わると、ヴォルトさんが髭をなでながら言う。


「私は50年ぐらい前に会った事あるわよ。ただ、トール君と違って女性だったけどね……たしかフェリナン領だったかしら」


 リーアさんて年いくつなんだ?


「ま、そう言う訳で、おぬしらにちょいと協力を頼もうか、とな」


「……事情は分かりました。サクラもですか?」


「うむ」


 何の話だろ?サクラを見ても分かってないみたいだ。


「コクヨウさん何をするんですか?」


 俺が聞くと。


「リーアよろしく」


 と、リーアさんに言った。リーアさんはコクヨウさんにうなずくと。


「じゃあコレを着てもらおうかな。トール君はその服の上からで良いから」


 リーアさんが今日持ってきた袋から皮の胸当てを出す。


「サクラちゃんはスカートだから、下はズボン穿いて来てね」


「リーアさんこれは……」


 俺とサクラはお揃いの赤い皮の胸当てを受け取った。思ったより柔らかい。

 昨日、コクヨウさんが二人に頼んでたのはコレか。


「着終えたら外ね、二人は今からウチのヴェルデンに乗ってもらうわ♪」


「ヴェルデン?って竜機兵ですか?!」


「そうよ、この胸当ては竜機兵用の物だもの」


 ……マジすか。

 サクラは自分の部屋でズボンに穿き替えて来た、顔を見るとちょっと嬉しそうな感じだ。

 胸当てはサイズはぴったりで、頭からかぶって、横腹辺りにある左右の紐で締め付けると固定出来る。

 竜機兵が転倒したり、激しく動いた時に体を守るように、この胸当てを着るらしい。

 俺とサクラは胸当てを付けると、皆で家の外に出た。


「トール君、ちょっと真っ直ぐ立ってみてくれ」


「はい」


 ヴォルトさんに言われたとおり真っ直ぐ立つ。


「今から俺が手で押すので、倒れないようしてくれ」


「あ。はい」


 ヴォルトさんは、前後左右から俺の上半身を結構な力で押してくる。俺は倒れないように抵抗する。


「……ふむ、では片足で立ってみてくれ」


「はい」


 俺は左足を上げて片足立ちをする。

 そのまま一分ぐらい片足立ちをすると。


「では、逆の足で」


「はい」


 今度は右足を上げて同じように片足立ちをする。


「……もういいぞ、降ろして」


 バランスでも見てたみたいだ。

 サクラの方を見ると、リーアさんから何かレクチャーを受けている。


「リーア、こっちは良いぞ。サクラの方は?」


「こっちもいいわ、後はアナタがフォローしてあげて」


「おう、サクラから行くか」


 そう言うと、サクラとヴォルトさんがヴェルデンに乗り込む。

 竜機兵は二人乗りで、操縦者の「竜機士」と「戦術機関士」が乗り込む。

 俺が竜機士でサクラが戦術機関士か……。

 俺が聞くと、リーアさんが色々説明してくれる。

 竜機士は竜機兵の操縦する。操縦に集中しないと、転倒したりするらしい。

 戦術機関士は「竜機士が竜機兵を集中して動かせるように、様々なサポートをする」らしい。

 たとえば、竜機兵が動いてる間の調子を常にチェックする。竜機兵は格闘をするが、竜機士が痛みを感じる事が出来ない。だから竜機兵にダメージがあると竜機士に報告しないと命にかかわる。あとは魔法で周りを索敵したりもする。

 基本的には理術や精霊魔法が使える人しか戦術機関士にはなれないらしい。

 まぁこの世界はコンピューターとか無いみたいだし、戦術機関士がコンピューターの代わりをするのかもしれない。

 そんな話を聞いているうちに、ヴェルデンが立ち上がって歩き出した。


「ま、普通に歩くぐらいなら、二人ともすぐ乗れるわよ」


 リーアさんが言う。

 ヴェルデンは暫く家の近くの草原を歩くと、元の場所に戻ってきた。

 元のように片膝を着く姿勢になると、胸辺りが開き、ヴォルトさんとサクラが降りてくる。

 戦術機関士の席はは降り難いのか、サクラをヴォルトさんが介助していた。


「おかえりなさい、どうだった?」


「……どうでしょう?立ち上がると、視界が高くてびっくりしました」


 サクラは高揚した感じで、ヴォルトさんに聞く。


「いや、サクラは飲み込みが早いな。落ち着いてたし、最初としたら上出来だ」


「次はトール君ね」


「……はい」


「トール様がんばってください」


「……やってみるよ」


 俺はリーアさんと二人でヴェルデンに向かった……。



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