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天女の笑顔  作者: 時宮のシロ


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3/5

第3話

 「天女の笑顔……。前にも聞いたことがあるけど、よくわからなかったよ。」

 もどかしそうに、首を傾げる少女。

 「お母さんが天女に会ったのは、スーパーのケーキ売り場の前なんでしょう?」

 「そうだよ。」

 「スーパーでどうして会うの?」

 「私だってわからないよ。私が高校生の時、こーんな顔して、いつものスーパーにいたら……。」


 母親がすっと表情を殺してみせる。

 板についた、能面のような表情。


 「この顔でいつもいたよ。それで、その日スーパーにいた時も、この顔を崩さないようにしていた。」

 少女は話に引き込まれ、自然と母親の表情を真似ている。

 「そうしたら、売り場の前に年配の女性が立っていた。普通の服だけど、上品な感じで、私をじっと見てきたの。」

 母親の目は、その女性を今まさに見ているように、遠くを見つめている。

 「なんか見てくるなって思って、そのマダムと目を合わせたら、こう──こうしてきたの。」

 母親は少女と目を合わせた。


 少女には、母親の柔らかな表情が光るように、何かが顔に宿るように見える。

 母親は両目に真っ直ぐな光を宿し、優しさを湛える。

 そしてゆっくりと、花がほころぶように、少女に笑顔を向けた──。


 少女はその、小さな頃から見慣れた母親の笑顔に息を呑む。


 とても美しいと思った。


 「雷に打たれたような気持ち。バーンって何かが降ってきたような心地だった。その時から……。」

 恥じらうように少女を見つめる母親。

 「私は、それまでの顔をやめることにしたの。」

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